モラトリアム人間の時代 (中公文庫 お 31-4)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053113

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  • 小此木啓吾の中公文庫の『モラトリアム人間の時代』は1981年、『モラトリアム人間を考える』と『日本人の阿闍世コンプレックス』は1982年。
    1983年前後のごろよく読んでいた。
    科学技術が発達し、スイッチを入れて蛍光灯がすぐにつかないだけでイライラするような人間、「全能の錯覚に生きる現代人」は、実際の社会関係では、挫折を経験するのでもなく、ただ腰掛け的な関係、木枯紋次郎の「あっしには関りのないことでござんす」という関係しか作れなくなったということだと思う。モラトリアムとは、一人前になるまでの猶予期間にある人間という意味。現代人は一生モラトリアムで生きるしかないという自覚が必要になる。(「少年の心を持つ」とか「万年青年」は必ずしも悪いことではない)
    1970年代から執筆されたものだと思うが、1980年代前半に広く受け入れられたとすれば、科学技術云々だけでなく、伝統的な地域社会の崩壊や、自民党単独過半数割れなどの「ポスト戦後社会」の大きな時代の転換点だったのではないかと思う。
    バブル経済へ向かう過程での警鐘というのでなく、既に時代は転換したということ。バブル経済は崩壊したことが問題なのではなく、バブル経済自体が戦後的なもの(特に良かったもの)を最終的に崩壊させたにすぎない。
    アイデンティティという言葉を、この本で知ったのか、それとももっと後のような気もするが、記憶がはっきりしない。

  • 現代人は多かれ少なかれモラトリアム人間。

  • 読んだのは改版2010年の本ですが、初版は1981年の本。30年近くも前の本ですが、現代人の社会的な心理、性格を見事にとらえているなと感心した。青年期から大人になるまでのモラトリアム(猶予期間)についての洞察がすばらしいと思う。

著者プロフィール

1930年東京府生まれ。日本の医学者・精神科医、精神分析家。学位は、医学博士。1954年慶應義塾大学医学部卒業。1960年「自由連想法の研究」で医学博士の学位を取得。慶應義塾大学環境情報学部教授、東京国際大学教授を歴任。フロイト研究や阿闍世コンプレックス研究、家族精神医学の分野では日本の第一人者である。著書はいずれも平易な記述であり、難解な精神分析理論を専門家のみならず広く一般に紹介した功績は大きい。2003年没。主な著書は『精神分析ノート』(日本教文社,1964年)、『モラトリアム人間の時代』(中央公論社、1978年)、『フロイトとの出会い―自己確認への道―』(人文書院、1978年)など。

「2024年 『フロイト著作集第7巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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