聖者の宇宙 (中公文庫)

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著者 : 竹下節子
  • 中央公論新社 (2010年11月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054035

聖者の宇宙 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • 巻末に50頁にも及ぶ「聖者カレンダー」を併載、短い解説が付された夥しい数の聖者の名が紹介されている。

    「聖者システム-聖者のコミュニオン」
    多民族多宗教のひしめくヨーロッパに、これほど完全な形でキリスト教という異教が浸透していったのは驚くべきことだが、その教会のテクニックの鍵となったのが聖者システムだ。

    光というものは、オブジェとの出会いがないと見えない。何かを照らすことで光が見えるのだ。つまりオブジェは光の存在証明というわけである。
    光は神であり、聖者たちがオブジェにあたる。聖者たちは、神と神の恩寵という光の存在証明として生産されるのである。聖者たちを礼拝することは、彼らを照らしている神を礼拝することになる。
    では、神の存在証明たる聖者は、無数に必要なのか。その根拠としては、「ヨハネ黙示録」の第7章にある、「あらゆる国民、種族、民族、言葉の違う民のうちから、数え切れないほど大勢の群衆が」白い衣をまとって神を称えるという部分が挙げられる。彼らは、イスラエルの子らのすべての部族のうち神に選ばれた14万4千人の後に続いてやってきたのである。
    言い換えると、ユダヤ人を超えて、あらゆる民族の者から聖者を送り出せるという大きな可能性を秘めたこの一句によって、キリスト教は世界宗教の道を歩き出すことができたのである。

    聖者システム-そのシンクロニシティは動的なメカニクス、ダイナミクスの創造である。
    その起源は迫害にあった初期キリスト教の殉教者を記念したことに始まる。名前が記録されている者だけでも1万人以上の殉教聖者がいる。墓が巡礼の対象になって、奇蹟譚が始まったのも殉教者からだ。
    5世紀からはローカルなレベルを超えてユニヴァーサル教会の聖者カレンダーが成立し始めた。
    聖者はカレンダーとともに毎年必ず巡ってくる。
    聖者はカレンダーになって人々の「時」を彩っているが、同時に、土地の名にもなって人々の生きる足許にもぴたりと貼りついてきた。

    列福や列聖のたびに要請される新しい奇蹟という因果関係を超えた出来事の導入は、失われた魔術を絶えず生成することにつながる。
    レヴィ=ブリュールが「未開人の心性」として定義した前論理的で魔術的なメンタリティを操作し続けることが可能なのだ。
    このメンタリティーに応えることのできない宗教はやがて硬化し脆弱化する。

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