八日目の蝉 (中公文庫 か 61-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054257

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいる間中、自分も一緒に逃げている気分になってしまってとても辛かった。傍観者でいられなくて、逃げて逃げて、どこまでもどこまでも。
    読み終わった後に自分の感情を表す言葉が見つからなくて、暫く引きずってしまっていた。言葉にできたら、楽になれたわけではないけれども。
    愛情も、罪も深すぎて。

  • 物語が進むに連れて、希和子と薫の視点が頻繁に切り替わるようになって、それぞれの心理が重なり合う部分とすれ違う部分は、読者としても心が動かされました。
    それぞれの母と子としての物語、女であることも考えさせられる作品でした。

    個人的なエピソードなのですが、この作品を母に勧められて読んだので、その辺も少し感慨深いなぁなんて思ってます。

  • 希和子の目線と薫の目線の2部構成なのが読みやすく、すらすら読めた!
    話としては面白く読めましたが、じゃあ希和子の行動に同情出来るかと聞かれたら全くできません。
    大人の都合で、普通の人生を歩めなかった薫と千草にはこれからの人生幸せに暮らしてほしいです。
    最後の解説で、「過激なフェミニズムな小説」や「生理の犯罪」って表現があったのが残念。ちょっとこの考えには納得できなかった。

  • なぜ私なのかは、裏を返せば大人の勝手な都合に翻弄されるということで、その大人もまた、人間関係に傷つく。それでも、海や木や光や、きれいなものをたくさん子供に見せる義務があると、野々宮希和子も、恵理菜も、同じことを考えるのは、どんな母親も考えることだろう。いつか希和子と恵理菜が出会い話すときが来るのだろうか。

  •  表紙に惹かれなかったので(写真のじゃなくてピンク色のやつ)読むつもりはなかったけど、映画が良かったので原作を手にとってみた。ストーリーを知ってるけど夢中になって一気に読んでしまった。映画は薫が大人になってからの話が割と長かったけど、原作はあくまで希和子がメインという印象を受けた。映画は心理描写をより丁寧にしたがスリルはない印象だったのに対し、原作ではスリルも楽しめた。それぞれに良さがあるけど、自分は原作のほうが好きかもしれない。
     自分は斜め読みしてしまうタイプで特に、面白い本だと早く読みたいくてそうなってしまう。そうすると一つ一つのセリフを味わうことはできなくなってしまう。だから映画で「その子はまだ朝ごはんを食べていません。」というセリフを聞けたのは良かった。
     あと映画にはなかったが紀和子がそのくらいの年頃の女の子を見て薫…と呼びかけてしまう(実際、薫だった)というシーンが好きなのでこれは映画の中で見たかったな〜。
     本の中にセミのくだりはあったけど「八日目の蝉」という題名の意図がよくわからなかった。考察などあれば返信で教えてほしいです!

    最近入った本ではないのに、この本を借りたのは自分が一番最初だった!(地域の図書館)面白いし、映画の知名度あるのに…

  • 過去に数回映画は観ていた。
    とても感動してボロ泣きしたのだが
    小説は更に上回る。

    薫への愛情描写が痛いほど伝わり
    子供の居ない私は、何度かとても辛くなった。
    この愛しさをしらないまま死んでいくのかという辛さかな。

    個人的には産みの両親も最低。

    事件が起きなくても、やはり母親は朝は起きないだろうしご飯もまともに作らなず、夜遊びしながら浮気をしたと思う。
    父親はもう、見捨てたくなるほどダメ夫ダメ父。

    そう思わせる象徴的なシーンはやはり
    生まれて間もない赤ちゃんを置いて、ストーブつけっぱ、鍵は開けっ放で夫婦で平気で外出している所。

    希和子来なかったら死んでたかもじゃん。
    火事の危険性は希和子の過失限らずあったわけでしょうから。

    だからと言って誘拐はそりゃいけないことなんだけどね。

    けど…この両親なら…

    私が薫なら…やはり、希和子と居たいやw







  • 角田光代さんの作品はこれで2作目です。
    前回は、「対岸の彼女」を読みましたが、この「八日目の蝉」も2章の構成が似ているなぁと思いました。私はこのような二つの次元の話が交錯して交互に進められていくのが好きです。
    今作品は、とにかく1章の逃亡劇も目を見張るものがありますが、タイトルにある八日目が始まるのは2章からだと思っています。たとえ血が繋がっていなくても愛は変わらずそこにあることを示した貴和子、血が繋がっているが母親足り得なかった恵津子、そして恵里菜。一回で出てくる登場人物全員の気持ちに寄り添うことはできなかったが、物語の至る所に母親から子への愛情を感じ取ることができた。もう一度読み返したいと思う一冊。

  • モデルとされている事件の悲壮を記事を読んだだけだが朧げながら理解しているので、覚悟しながら読んだ

    あの事件も焼死なんて酷いことではなく誘拐であってくれたらどれだけ良かったかと思い読み進めるも
    徐々に追い詰められていく描写に、誘拐であっても酷いことには変わらないと思った

    赤ちゃんを少し見るだけという欲望から連れ去ってしまうのは子供を産みたいと思っていた人なら当然というかしょうがないのかなと思う

    しかしなぜ人間というか本能で生きている動物に近い屑男を慕ってしまうのか、その心境がどうしてもわからない
    別れたい気持ちを弄ぶ屑に対しての感情が憎悪と嫌悪感しか湧かない

    親が屑だと子供が不幸になる
    子供を作るのも免許制にすればいいのにと親になってはいけない親を色々見てきて思う

    希和子がしたことは許されないが、自己愛とは思えないのがまた辛い
    逃亡を続けていたのにも関わらず、薫ちゃん(あえて薫ちゃんと呼ぶ)の身長体重が4歳児の平均を上回っていたという文字に涙が止まらなかった
    誰よりも、自分よりも大切にしていた誘拐した子
    自分の子を産んでしまえばきっと愛情深く育てられただろうに
    いよいよ自分が捕まるという瞬間にも薫ちゃんが朝ごはんを食べていないことを心配していたとは、どうして普通の一般的な男と恋愛をしなかったのかと悔やまれる

    実母がおもらしをした時に突き放してしまったのは、4歳になるのにおもらしをしてしまっていることへの衝撃だと思っていたが、本当にそうなのか…

    夫が浮気をしていたから自暴自棄になり部屋の掃除を行わなかったのか、元々の性格なのかわからないが

    薫にとって、小豆島で何も知らずに暮らしていけた方が幸せだったのではないかと過去を振り返りすぎる性質の私は思ってしまった

    血が繋がっていないのに、屑と恋愛関係を結んでしまうのはなんという皮肉なのかと

    最後のフェリー待合室で、清掃の人と目があったとあったので、希和子も小豆島が忘れられずに清掃員の職を得たのだなと一人ごちていたのだが、清掃の仕事はしているが小豆島に行くことができず、小豆島行きのフェリーを待合室から見送っている女性とは思わなかった。
    最後に薫ちゃん(恵理菜さん)と光越しに再会できたことをお互いに知らないままでいた方がいいのだろうなと思いつつも寂しくなってしまった
    いつか希和子さんが小豆島に渡れるといいなぁとぼんやり思いつつ

    小説なのに、今後の人生が幸多からんことをと祈ってしまった

  • もともと、NHKドラマから入り、原作読み、
    映画を見て、かなりどハマり。

    そして再読。

    せつない。
    一言で言えば。

    ラストなんてわかっているのに、
    そのページが迫ってくると、あわあわしてしまう。

    そりゃ、犯罪だし。
    キワコに寄りすぎてはいけないとは、思うけど。
    それでも、親子の絆を改めて考えた。

  • 「なんかさ、毎日あって話をする人って、いそうでいないと思わない?大学でおんなじ顔ぶれに会うけど、そんなの通勤電車に乗ってるのとかわらないんだよね。そうじゃなくて、会って、話して、笑ったり、質問したり、そういう人ってめったにいないでしょ?昔っから、そんな感じなんだよね。だから、たとえば岸田さんと、あ、岸田さんって例の暗そうな人だけど、あの人と毎週会ってると、なんていうか安心するんだよ。先週の自分と今週の自分が同じだって、ちゃんとわかるっていうのかな」

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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