若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)

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  • 中央公論新社 (2011年4月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054400

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若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • 佐藤忠良氏と安野光雅氏の対談を書籍化。
    本音満載で非常に楽しく、興味深く読ませていただきましたが、
    正直に言えば、もっともっと佐藤さんのお話が聞きたかったかな…と。

  • 収録された対談は1992年から2001年にかけてのものですから、佐藤
    氏79~88歳、安野氏66~75歳の頃です。しかし、文章を読む限りで
    は、ご両名がそんな高齢であるとは思えません。瑞々しい感性と飽
    くなき挑戦心。尽きることのない表現欲。「ただ描きたいから描い
    ているんだ、描かずにはおられないのだ」と安野氏は述べています
    が、そういう衝動に突き動かされて生きてきたお二人だからこそ、
    幾つになっても歳を感じさせないのでしょう。ちなみに、安野氏は
    85歳になる今も健在。佐藤氏は今年3月に98歳で亡くなっています。

    対談ですから話はつれづれに流れていきますが、読んで思ったのは、
    いかに普段の自分がものをきちんと見ていないのか、ということで
    した。佐藤氏の言葉で言えば「知識はあるけれど、目が止まってい
    る」状態。自分は一体、自分の目でどれだけ本当に見ているのか、
    と恥じ入りました。

    それくらいこの二人は「見る」ことに一生懸命なのです。それぞれ
    見方は違います。佐藤氏にとっての「見る」は、モデルとなる相手
    の過去と現在と未来に思いを馳せ、その人の本当の顔をえぐり出す
    こと。それは静止したものに過去・現在・未来の時間を表現すると
    いう彼の彫刻の方法論に通じます。

    一方の安野氏にとっての「見る」は、遠くの木々のざわめきが聞こ
    えてくるほどに見つめ続けること。安野さんにとって、スケッチを
    することは「風景という楽譜」を演奏する感覚に近いのだそうです。

    佐藤氏のシベリアの抑留体験の話も印象的でした。後年、佐藤氏は、
    自身のシベリア抑留体験について「さぞ大変だったでしょう」と聞
    かれ、「彫刻家になる苦労を思えば、あんなことはなんでもないで
    すよ」と答えたのだそうです。安野氏はそのことを知った時のこと
    を、「起き上がって襟を正しました」と振り返っています。

    佐藤氏は別に彫刻家として食べていくことの苦労を言ったのではな
    いと思います(勿論、それも幾分かはあったと思いますが)。彫刻
    家という職業を成立させること以上に、彫刻そのものの持つ難しさ、
    静止したものに過去・現在・未来の時間を表現しなければいけない
    彫刻という行為の持つ根源的な不可能性を言っていたように思えま
    す。その不可能にも思える困難に一生をかけて挑戦してきた真摯な
    姿勢が垣間見えるからこそ「あんなことはなんでもない」と言う一
    言に胸が衝かれるのです。

    佐藤氏の一言一言は本当に味わい深く、思わず襟を正してしまうよ
    うな言葉ばかりです。言葉から匂い立つ人間としての「気品」とし
    か呼びようのないものに触れることのできる稀有な一冊です。
    是非、読んでみて下さい。

    =====================================================

    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    人間の顔はその人の表札です。そしてやはり、地位や名誉の有る無
    しにかかわらず、中身のある心のいい人が、いい顔をしています。
    身近な人や行きずりの人の中にも本物がいるということを、あらた
    めて思います(佐藤)

    シベリアに抑留されていた三年間、男ばかりで過ごしていると、お
    互いにすべてを見せ合ってしまう。そのとき、我々日本人は、教養
    と肉体がバラバラになっていると思いました。
    土木工事とか、野良仕事をしてきた人のほうが、人間的にすばらし
    いという発見をしたんです(佐藤)

    わたしたち彫刻家のやっているのは、粘土こねて、恥かいて、汗か
    いて、失敗して、やり直す... 続きを読む

  • 世界に誇る日本の至宝とも呼べる、
    『職人』の2人が、
    芸術を通して語る人間性について。
    2人だから語らえること、
    2人でしか語らえないことがある。

    「中身のある心のいい人が、いい顔をしています」

  • [ 内容 ]
    自然をしっかり見ること、それを自分の中の印画紙にしつかりと焼きつけること、デッサンをくり返すこと。
    そうしてできた作品はきっと胸に迫るものだ。
    世界的な彫刻家と画家による、気の置けない、しかし確かなものに裏付けられた「普通」の対談。
    カラー図版多数収載。

    [ 目次 ]
    バイカル湖―シベリアの湖を行く船の上で
    仙台―彫刻の代表作が収まる美術館で
    津和野―開館間もない故郷の美術館で
    永福町―幾体もの彫像がたたずむ彫刻家のアトリエで

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 私の持っているのは、「願いは普通」だけのタイトルでした。

  • 2002年に刊行された親本「ねがいは「普通」」に、2010年時点での安野さんの付記やあとがきを加えている。芸術はもとより何についても、奇をてらう必要はない、気負わず、ごく普通に、営々と一歩ずつ歩いていくうちに山に登るのが大事なんじゃないか、という気持ちが、題にこめられた思い。
    シベリア抑留思い出の地バイカル湖(1992年)、それぞれの出身にして記念館のたつ仙台(2001年6月)、津和野(2001年11月)、それに佐藤忠良の仕事場(2001年12月)でかわされた対談4本。
    若い頃の苦労話、「おおきなかぶ」制作のエピソード、「旅の絵本」の話、素描、個性、芸術、教育、気品とは、含蓄に富んだ話がくりひろげられる。長幼の関係もあり、どちらかというと安野さんが聞き役に回って、佐藤忠良の言葉をたくさん引き出している。

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若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)の作品紹介

自然をしっかり見ること、それを自分の中の印画紙にしつかりと焼きつけること、デッサンをくり返すこと。そうしてできた作品はきっと胸に迫るものだ。世界的な彫刻家と画家による、気の置けない、しかし確かなものに裏付けられた「普通」の対談。カラー図版多数収載。

若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)はこんな本です

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