静かな爆弾 (中公文庫 よ 43-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 645
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054516

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな作家さんだけど、この本については共感できる部分が少なく残念だった。

    テレビマンの俊平と耳が聞こえない響子が唐突に付き合いはじめたところから、描写不足でなんだか2人に寄り添えなくなったのかも。

    俊平の仕事の緊迫感等は感じるところがあるが、恋愛の自己中感が拭えず好きになれなかった。
    こんな人はよくいそうだけど。
    響子も女性として魅力的に思えるエピソードも特になく…ラストの行動にはやや嫌悪感すら抱きモヤっとしてしまった。

    ストーリーや人物の描写がもっと細やかだったら、もう少し理解できたのかもしれないなぁ。

  • 読み終わってからも、ふたりが頭から離れない。
    わたしの好きな一冊。

  • 静謐な時間と、騒がしい時間との対比が鮮やか。
    途中までは、耳の不自由な女性との恋愛話ととらえていたが、最後まで読むと、少し違ってきた。
    なんとなく知っていることと、本当に知っていることとの違い。
    きちんと知ろうとすること。
    伝えようとすること。
    そういったことを考えさせられる。

  • 相手のことを思いやる、とは想像力を最大限に発揮して相手のことを思うことである。その相手が、自分とは違う感覚を持っていたなら、なおさらそう。
    そういう状況では、得てして傲慢に映ったり、独りよがりだったりするけど、そばにいてほしいと思う心に偽りはない。しっとりした恋しさが味わえる傑作。

  • 耳が聞こえない女性とテレビ局で報道の仕事をしてる男性の話
    読みながらたまになんか耳が聞こえないのはかなり生きにくいと思うし大変だけど響子が無職で実家暮らしなのになんか偉そうだなとなんとなく思ってしまった

    連絡が取れなくなった1週間、ごちゃごちゃと複雑に考えたりモヤモヤしたけど結局最後メールで伝えたのは「会いたい」っていうシンプルな言葉なのが良かった

  •  耳の聞こえない「神様」(*)と出会ったテレビディレクター(?)が以降トントン拍子に仕事がうまくいきだし絶好調に、っていう現代のおとぎ話。
    (*「この世ならざるもの」は目や足等々体のどこかが欠損している、ということを「虚構推理」で学んだ)
     かつまた「聲の形」や「ビューティフルライフ」みたいな健常者と障害者の恋物語でもあり、さらにまた(何か肝要な物事の欠落した)(ディスコミュニケーション)不安定な世界観を描く不条理ドラマでもあり。
     多様な読み方のできる作品。
     吉田修一作の中では筋立ても隠喩も非常にわかりやすい部類に入る小説のはずなのに、その本質や主題はなかなか掴みづらいという不思議な作品でもある。ほんと中世の寓話みたい。
     いちばん理解しづらいのが終盤描かれる響子の失踪(?)。その理由もその間なにをしていたのかも結局わからないまま。そのまま霧の彼方に消える「あの女は幻だったのか」オチかと思いきや、特段なにもなしに最後ふつうに帰ってきちゃうし。

     喧騒と静寂とか、危険と隣り合わせの平和とか(すぐ後ろで喧嘩沙汰が生じているのに、それに気づかずにこやかに花を眺めているだけの響子/命がけの戦場スクープとそれをテレビ越しの娯楽としてしか捉えていない日本人、の対比)(これは、「もともと」耳が聞こえない人と/「あえて」聞こうとしない人、の対比でもあるんだろうか?)、吉田修一作品でおなじみの隠喩も盛りだくさん。
     やろうと思えばいくらでも深読みができるんだけど、結局やっぱり本作で吉修が描こうとしたのは「現代のおとぎ話」に過ぎないのかな? 表面的な浅読みで雰囲気だけ味わえばそれで十分なのかも?
     そもそも「バーミヤン大仏爆破の真相」ドキュメントを民放(*)のゴールデン枠でシリーズ化して放送するだなんて、いまどき(てか昭和平成時代だって)どう考えてもありえねー「夢物語」だしな(>_<)
    (*それともまさか俊平ってNHK職員なんだろうか(゚д゚)!?)

     とかなんとか、多様な読み方のできるところが吉田修一作品のいいところ。さほど特異でも衝撃的でもない小さめな作品ながら、ある意味安心して読める好編だった( ´ ▽ ` )ノ
    2022/04/22
    #3000
    (私事ながら、これにてブクログレビュー3000本目(@_@)
     我ながらよくまあこんなに、って感(@_@)
    「キリ番は吉田修一」というのが以前からの個人的な決め事で、最初は100レビューごとだったんだけど、マンガレビューを始めてからは異常にペースアップしちゃったんで、1000番目以降は1000レビューごとに変更(>_<)
     4000レビュー目は「ランドマーク」を予定。まあ今のペースだと大体また1年後くらいになるんだろうなあ)

  • う…そこで終わりね…

    耳が不自由というところもだが、どこか捉え所のない響子。彼女といることで今まで気づかなかったことに気づく俊平。

    いろいろ読者が考え想像することが必要な作品。 

  • テレビ局で今はバラエティ部門に所属しているが元々は報道部門にいた早川俊平はある日公園で一人本を読んでいて閉園の合図を警備員に送られる。近く見ると一人の女性がそれに気づかずにまだ公園内にいたので、閉園ですよと知らせに行くと彼女は反応をしないので耳が聞こえないことに気が付く。それが響子との出会いだった。

    二度目の出会いの時に一緒にファーストフードの店でハンバーガーを食べ、そこでまた会う約束をして、徐々に二人の距離は縮まっていった。

    俊平はあるニュースを追いかけていた。海外の古跡爆破のテロ事件がなぜ起こったかという事を。その性でバラエティ部門から一時的に外させてもらい、その関係者を追っていた。

    そんな中自分の家に来るようになった響子と二人の付き合いが始まる。音の聞こえない響子のせいで、その世界の事に俊平は気が付いていく。
    そして、今までは女性とあまり深く付き合わないし一緒に自分の部屋で過ごすことも短期間だったのだが、響子との終末にあって2~3日を過ごすという生活が始まる。

    ただ響子は音が聞こえないからそれなりに俊平は新しい世界を知り、気遣うことを知らず知らずの間に当たりまえにこなす生活を過ごしてく。

    追いかけている番組は海外の様々な要人や証言者を捉えるために何度も出張して家を空けることも増えていく。

    俊平は響子の世界を知っているから対処しながら生活をしているが、アパートの住人や管理人、そして自分の良心に合わせたりした時に音のある世界と音の無い響子の世界とのギャップを感じつつ、自分の気持ちを伝えることにも戸惑いながら過ごしていく。

    なぜ静かな爆弾というタイトルなのか?音のない響子の世界を知ってその世界から受ける影響力は俊平にとってとてつもない爆弾なのか?それとも俊平が追いかける古跡の爆破も含めて世界を見る事が爆弾なのか?さて私は読み終わって理解出来たのか?

    本は文庫本になっていますが読んだのは単行本です。

  • 耳が聴こえないこと女性との物語。
    喧騒と静寂が対比された世界観。

  • 誰かのためにやってあげる、
    何かをしてあげる。
    自分が犠牲になっている。
    知っているから助けたいと思う。
    その全ては無意識に常にある傲慢さから来ている。
    だけどそんな傲慢ささえも小さいことと思えるような「会いたい」という祈りがある。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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