聊斎志異考 - 中国の妖怪談義 (中公文庫 ち 3-55)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054974

作品紹介・あらすじ

艶冶な容姿とこの世の人間以上に優しい心根で、男をとりこにしてしまう冥界や異類の女たち-。男と女の、はかなく不思議な交情が織りなす中国的妖美の世界を、端正な筆致でよみがえらせる十二篇。

感想・レビュー・書評

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  • 中国清代の古典「聊斎志異」のうちから12編を選んで、中国に詳しい作家の陳舜臣が翻訳して解説を付した。鬼や幽霊、神仙、狐や虎が跋扈する物語を通して戦乱の世を悲憤慷慨した「聊斎志異」の作者の蒲松齢に対する共感に満ちた書である。

  • 陳舜臣の書く聊斎志異考なら、読み応えがあって楽しいだろうと手に取ったが、記憶にあるより性描写が多くて戸惑った。
    そういえば、前に読んだ聊斎志異は岩波少年文庫だった。うまいことカットしていたんだな。
    それに、古典文学と思えば通常の範囲内だ。

  • 明時代にの妖怪話を著した「聊斎志異」から、陳舜臣が12話を解説したもの。読みやすく、中国の文化の一端がわかって面白い。各々の話は主人公と異世界の美女と関係を持つという設定が多く月並みな感があるが、陳舜臣の解説そのものが優れて興味深い。

  • 聊斎志異といえば、太宰治の清貧譚。
    中国の怪異を集めたおそろおもしろい本…というイメージはあるものの、原著はもちろん、訳本も抄訳も読んだことがなかった。
    解説で初めて知ったのだけれど、原著には500に及ぶ話が収められているのだとか。
    本書では十二話を収めている。選りすぐりの話なのだろう。

    清初の対清反乱「于七の乱」を背景にする「公孫九娘」などは、やはり凄惨なものを感じる。
    損壊した遺体がごろごろしている場面がある「琴瑟と春燕」なども、おどろおどろしい。
    しかし、全体としては美女(もちろん、大概は仙女や何か動物の精のようなもの)が出てくる話ばかりで、何かあでやか。
    ハッピーエンドの話もある。
    それほど強烈に刺激的なものもなくて、安心して読み終えることができた。

  •  前回読んだ「聊斎志異の怪」に続き、中国文学の「聊斎志異」の邦訳本の二冊目として陳舜臣氏の著作を読んだ。
     「聊斎志異」そのものは清代初期蒲松齢により書かれた短編小説集でほぼ五百話あるが、筆者の陳氏は十二巻本の「鋳雪斎抄本」から各巻一編ずつ選んだという。
     怪異譚といっても背筋の凍りつくような恐ろしい話は少なく、現実の人間とあの世から舞い戻った亡霊が情を交わすといった話が多いようだ。特にこの世の男と女の幽霊がセックスをするといった話も多く、当時の中国庶民の間ではその手の著作が好まれたのではないか。日本の怪談話とはかなり趣が異なるのにはちょっと驚く。

     現在BS JAPANで放送中の「画皮 千年の恋」のベースになったと思われる作品は取り上げられてはいないようで、本当はそれを期待して購入した面もあったので、ちょっと残念ではあった。

     なお、「聊斎志異の怪」で太宰治の「清貧譚」が紹介されていたが、本書では「黄英とその弟」という太宰ベースにしたという短編が掲載されており、あわせて読み比べるのも面白いと思う。

     とにかく中国の怪談は冥界からやってきた妖しい女たちが俗世の男たちを籠絡したりあるいは援助したりする。そこにはお色気が絡んでくるという独特なパターンが存在するようだ。
     だから怪談と言えどもただ怖いだけではなく、面白く読み進められるものも多いようだ。

  • 2012/04/13:聊斎志異より12編の物語を取り上げて、注釈や解説を行ったもの。

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著者プロフィール

1924年-2015年。神戸市生まれ。大阪外国語大学印度語部を卒業し、終戦まで同校西南亜細亜語研究所助手を務める。61年、『枯草の根』によって江戸川乱歩賞を受賞し、作家活動に入る。その後、93年、朝日賞、95年には日本芸術院賞を受賞する。主な著書に『青玉獅子香炉』(直木賞)、『玉嶺よふたたび』『孔雀の道』(日本推理作家協会賞)、『実録アヘン戦争』(毎日出版文化賞)、『敦煌の旅』(大佛次郎賞)、『茶事遍路』(読売文学賞)、『諸葛孔明』(吉川英治文学賞)、『中国の歴史』(全15巻)などがある。

「2018年 『方壺園 ミステリ短篇傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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