日本文学史 - 近代・現代篇一 (中公文庫 キ 3-18)

制作 : 徳岡 孝夫 
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122055162

作品紹介・あらすじ

日本文学への深い愛情をこめて単独執筆した魅力あふれる通史。文明開化、近代文学の幕開け。政治小説から幻想奇譚まで。

感想・レビュー・書評

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  • 読まなければ「ならない」と駆られて読み始める。
    分かりやすく網羅された説明と、何より作家の代表作の語り方が上手で、読みたくさせる。

    「一」では、文明開化から漢詩文・翻訳小説・明治政治小説の流れが同時多発的に起きた流れを説明する。
    作家個々の紹介としては、坪内逍遥・双葉亭四迷に始まり、硯友社、北村透谷、幸田露伴(尾崎紅葉)、樋口一葉、泉鏡花まで。

    「日本人がヨーロッパ文学をさらによく知るにつけ、そこからユーモアを学ぶのは可能だったはずだが、日本人は文学を評価するに当たってユーモアをあまり重視しなかった。……しかし、日本人がヨーロッパの大作家の中に求めたのは滑稽の才ではなく、リアリズムや社会的不正の剔抉、自我の発見その他の真面目な要素に限られる傾向があった。」

    「漢詩が明治初期ほどさかんに書かれたのは、平安朝いらいおそらく皆無だったはずである」

    「『経国美談』の愛読者の中には、自ら筆をとって小説を書こうと志す人が少なくなかった。それまでは卑しんだ小説が、単なる政治書なら内容を理解できないはずの庶民大衆に対し、絶大な啓蒙効果を発揮しうる可能性に、彼らも思い至ったからである」

    個人的に読みたくなった作品。
    山田美妙「蝴蝶」
    尾崎紅葉「二人比丘尼色懺悔」
    樋口一葉「たけくらべ」(少年の喪失)
    泉鏡花「夜行巡査」

    ただ、あらすじの面白さに反して読みにくい(文体や仮名遣いが)んだろうな、とちょっと引き気味。

  • 明治初中期の文学が、外国文学の翻訳、政治小説・文学論の台頭が同時発生的に、また1人の作家がそれらを同時に担うことさえあった、という指摘に肯首。

  • ドナルド・キーンさんの知識にただただ脱帽。きちんとした研究に基づき論を展開し、的を得た批評とわかりやすい文章で、きちんと論旨を追っていくことができる。名作と記憶される作品はきちんと読んでおかなくてはと改めて思わされる。作品を読んでから改めてキーンさんの批評を読み直せば、もう少しきちんと理解できそうな気がする。
    読んでいない作品の作家と著作については、あらすじや作品の評価がわかり、日本文学を知るにはとてもよいシリーズだと思う。

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著者プロフィール

1922年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学名誉教授。日本文学研究者、文芸評論家。2011年3月の東日本大震災後に日本永住・日本国籍取得を決意し、翌年3月に日本国籍を取得。主な著書に『百代の過客』『日本文学の歴史』(全十八巻)『明治天皇』『正岡子規』『ドナルド・キーン著作集』(全十五巻)など。また、古典の『徒然草』や『奥の細道』、近松門左衛門から現代作家の三島由紀夫や安部公房などの著作まで英訳書も多数。

「2014年 『日本の俳句はなぜ世界文学なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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