SROⅣ - 黒い羊 (中公文庫 と 26-12)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 826
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122055735

作品紹介・あらすじ

SROに届いた初の協力要請は、県警ではなく法務省からの人探し。自らの家族四人を殺害して医療少年院に収容されていた青年が退院後、行方不明になったという。一方、「警視庁のダーティハリー」こと針谷太一のもとにジャーナリストが現れ、過去の事件について取材に応じろと"脅し"をかけてきた。文庫書き下ろし・シリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 家族の中では孤独で連続殺人犯の気持ちが理解できてしまうがゆえに、殺人犯をまたもや射殺してしまうしかなかった針谷太一警視。針谷の苦しみを描き出したこの巻は、それのみでも優れていると思う。家族を求めて殺人を犯し、死体を繭に見立てた寝袋に入れてしまうこの殺人犯はシリアルキラーといえるのかどうかは分からないが、その心理も如実に表現していて、なかなか読みごたえがあった。しかし尾形の品のない毒舌には参ってしまうなあ。

  • SROシリーズ4作目。
    今作は1日で読めるくらい読みやすくて面白かった。
    しかも我が推し:針谷について深く触れられていたのも嬉しい。

    そして相変わらず室長:新九郎のプロファイリングというか推測が的を得ていてすごい。途中、今回のサブタイトルでもある「黒い羊」に関しての話もあり、興味深かったのと同時に針谷が抱える心の闇の深さを感じた。
    また、今回は今までと捜査ペアが変わりSROチーム内のやり取りにも多少の変化が見られたことも新鮮で、全員ではないが1人ひとりの人物像も詳細に描かれていてよりメンバーを知れるのもシリーズものとしては面白いと思う。

    今作の殺人犯は近藤房子とは異なる種類のシリアルキラーだろうが、生まれつきというより自分のコンプレックスや家族との関係が少なくとも犯人の人格形成に影響していると思うと複雑。幼少期に感じた孤独感という面では犯人と針谷の経験には似たような部分があり、針谷が犯人の気持ちがわかり行動が読めたのも頷ける。

    最後はまたまたデジャヴかのような展開。
    針谷が過去を含めて射殺してしまう行動にも心の闇が関係しているのかな…今回はじめて針谷は自分の想いを打ち明けてたけれど、尾形ではなく新九郎に打ち明けてほしかったな。そのうち新九郎も気づくかな。
    これからも奮闘する針谷を応援したい。

    今後SROメンバーにも変化ありそうだし、次巻以降にも期待!

  • 警視庁広域捜査専任特別調査室シリーズの第4弾

    派閥や地域など関係なく捜査ができるSRO
    メンバーは全員エリートなれどクセモノぞろい
    そんなSROに法務省から来た協力要請は…人探しだった…
    家族皆殺しをした少年太刀川遼一
    更生プログラムを終えたあと一般社会に復帰
    そこから失踪した理由とは?
    そして失踪のきっかけとなったのは…

    って…もう~ハリー!!
    今回はハリーの過去やら生い立ちやらやさしさやら、なんやかんやで泣く~

    でもって、だんだん尾形さんの毒舌のおもしろさにハマッてきた~。
    そして、まさかの…あのガンマンがメンバーに!?

    第5弾も楽しみ!

  • SROシリーズ本当ヤバイ。
    Ⅲが壮絶な感じで終わったからIVはどんなふうに始まるのかドキドキしながら読み始めたけど安定の面白さ!!
    房子は精神的に怖すぎてヒーヒーなるけど本作は比較的ライトな感じ。(そういえばⅡもライトだったなー)
    Ⅲの房子で全部持っていかれたので今回はよい小休止に。
    次あたりまた房子きそうだから覚悟して読まなきゃ。

  • ヒール役がこれまでと変わったが新鮮で面白かった。キャストがしっかりしていて個性が出ていればヒールは融通が効くものなのか。とはいえ、最後にチラッと出てきたアイツが次作あたり出てきそうで期待大

  • SROに届いた初の協力要請は、県警ではなく法務省からの人探し。自らの家族四人を殺害して医療少年院に収容されていた青年が退院後、行方不明になったという。一方、「警視庁のダーティハリー」こと針谷太一のもとにジャーナリストが現れ、過去の事件について取材に応じろと“脅し”をかけてきた。

  • クリサリス・マーダー。蛾になりたい。なれなくても蛹になりたい。そんな思いを持つ少年が家族を殺害し、出所後もその思いは消えず‥。このシリーズは入ってみちゃうんですよねー。映像が浮かぶというか。恐ろしいことではあるのですが、おもしろかったです!

  • シリーズ4作。家族4人を殺害し医療少年院に収容されていた青年が退院後に失踪。自分の論理で次々に殺人を犯す異常者の心理がおぞましい。「黒い羊」はありそうで怖い。SROメンバーのそれぞれの事情も興味深い。房子の再登場を暗示するような結末も…。

  • 黒い羊とはなにか?
    いい人間を演じている・・・仮面「ペルソナ」をつけて生活をしているが、実は「シャドー」と呼ばれる悪い部分を隠しているだけに過ぎない。
    表面的には白と白の両親からは白しか生まれないはずが、黒の因子を隠しているだけなら黒の因子を持つ・・・黒い羊が生まれることもある。
    同じ両親から生まれたのに、一人は優等生、一人は劣等生という場合。
    優等生は白の因子を受け継ぎ、劣等生は黒の因子を引き継いでいるという考え方。
    シリアルキラーにもいろいろなパターンがあるのだと知った。
    房子のようにモンスター化し隠蔽工作をする型もあれば、今回の犯人のように淡々と自分の欲求のままに殺人を繰り返す型もある。
    アメリカなどではいわゆるシリアルキラーの事件として有名なものもあるが、なぜか日本ではあまり例がない。
    動機として明確なものが見えてしまう場合が多いからだろう。
    もっとも、本当の動機なんて一般人からしたらわからない。警察が「これが動機だ!」と発表すればそれが事実となるのだから。
    事件化していないシリアルキラーがいたとしても不思議ではない。
    自分たちがやってきた対処法が正しいと信じ、成功したいと思う気持ちはわかる。
    だが、冷静に考えれば積み重ねた事実が「失敗」だったと告げている。
    己に厳しい現実をなかなか受け入れられないのは、官僚でも精神学の専門家でもどうやら同じらしい。
    山根たちによって徐々に追い詰められる犯人。
    際立つ異常性が何よりも表れたのが「ちょっとだけ待ってもらえませんか。すぐに済みますから」というラストのセリフだろう。
    待つわけがない。待つと思うほうがおかしい。
    それでも犯人は笑顔でそう言い放つ。
    SROの行動はけっして派手ではない。
    針谷の射殺場面を除けばいたって地味な捜査ばかりだ。
    それでも、読んでいるうちに引き込まれてしまう。
    房子の幻影に脅えならが、犯人を殺してしまった過去に脅えながら、それでも警察官として事件に向かっていく。
    SROのメンバーのバランスもいい。
    次巻では再び房子との対決が描かれる。
    「キラークィーン」となった房子とどう対峙するのか。
    楽しみだ。

  • シリーズ第4段。

    今作の事件とその解決は、まあ、置いておくとして・・・。

    ※法務省役員と医療少年院医官の言動、フリージャーナリストの振る舞い・・・と、(作中の)現実とのギャップは、筆者から現代社会への痛烈な皮肉か?

    注:十分に楽しめるエンタテイメントだった。

    シリーズ全体の物語の行方に、心を奪われ始めてる。
    近藤房子の行方。
    坊屋刑事の決心。
    心に傷を受けたメンバーの未来。
    「黒い羊」を飼っていると自覚した針谷の行く末は?

    既刊の残りはたしか、「Ⅴ」と「〇(ゼロ)」だけだったような記憶が・・・。

    果たしてどこまで続くのやら。

    ★4つ、8ポイント。
    2016.11.21.古。

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著者プロフィール

1961年北海道生まれ。98年に『修羅の跫』で第4回歴史群像大賞を受賞しデビュー。以降、時代小説や警察小説を中心に活躍。本書はドラマ化もされた「生活安全課0係」シリーズの主人公・小早川冬彦が、警視庁本庁から日本各地へ活躍の場を広げていくシリーズ第2弾。著書に「SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室」「スカーフェイス」「警視庁SM班」などのシリーズ他多数。

「2023年 『スカイフライヤーズ 警視庁ゼロ係 小早川冬彦Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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