コーヒーの鬼がゆく - 吉祥寺「もか」遺聞 (中公文庫 し 40-2)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122055803

作品紹介・あらすじ

自家焙煎の草分け、吉祥寺「もか」店主・標交紀。"感動を誘う"コーヒーを創り出した男-。我を忘れて焙煎にのめり込み、生豆を選び抜き、抽出温度一℃の違いを見きわめて、ダイヤモンドのような一杯を追い求めた熱血漢。独自の文化を育んできた日本のコーヒー自家焙煎。その奥深い世界に身も心も捧げ尽くした、稀代の求道者ともいうべき無骨な生涯を、豊富な逸話をまじえてたどる。

感想・レビュー・書評

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  • 国立民族学博物館で標さんのコレクションの展示を観に行って、ショップで購入した。

    鬼といわれるほど珈琲を極めた人とその師弟を丹念に取材したものである。
    イエメンをはじめとする珈琲文化の源流ともいえる町や産地を訪ね歩き、道具の収集や写真記録、歴史の調査記録を残すなど、一杯を淹れる為にここまで努力するのかという緊迫感がある。

    珈琲を飲む人ならぜひ好みの産地の風味とともに一読を。

  • 地元の伝説のコーヒー店「もか」店主標交紀氏のお話。

    今も、地元の喫茶店を巡ると、氏にまつわる本を置いている店もあり、そこのオーナーから当時の「噂話」をあれこれ聞く機会もある。
    曰く、「飲み越した客を追いかけて、その理由を問いただした」 とか。
    本書でも「鬼」に例えられる一途な人物像が余すことなく描写されている。

    カウンターの中ではいつでも白衣とネクタイ姿で、「自分なりの行動美学を明確に持っていた」とか、ネルドリップへのこだわり、新婚旅行でさえコーヒー豆の原産地で、海外旅行も観光名所は巡らずその都市の珈琲店を朝から晩まで訪ね歩くと言った執念の行動が多く描かれている。

    また、標の師匠筋や、周囲の自家焙煎家の言動にも多くの紙幅が割かれている。そちらも、標に負けず劣らず、誰もが頑固なほどに珈琲道に一家言も二家言も持つ御仁ばかりが登場する。
    近所の喫茶店オーナーの「客を追っかけて・・・」の話も、むしろ、そういった別の店の店主の話が標伝説として伝わってる感もある。

    著者の筆致も、博覧強記を惜しげもなく披露する勢いで、ある意味「鬼」の様相。そんな文面からも標像も、やや強調されて伝わってきそうな印象を受けたが、実は、本当の標交紀は、もっと違った人物だったのでは?と少し思わんでもない。

    既に「もか」は店を閉め、標氏もお亡くなりになっているのが惜しい。残念。

  • 山伏修行の際に訪れた山形県鶴岡市にある珈琲店コフィアにて購入。
    趣味で生豆を焙煎してるけど、本書で紹介されてるような人たちは次元が違うな。昨今流行りのスペシャリティコーヒーやら、フルーティーな浅煎りコーヒーやら、やれフレンチプレスだ、サイフォンだ、とかこの人たちの前では一蹴されてしまう。
    やっぱりネルドリップかなぁ。
    とはいえ、コーヒーは美味しく楽しく、自分の好きなように飲めればそれでいいじゃないか、というのも事実。
    お客はお店を選ぶことはできるけど、お店は来る客を選べないから、店主の悩みや苦しみもよく分かる。

  • 鶴岡コフィアで豆を求めた勢いで。
    面白かった。
    ぜひコーヒーと一緒に。
    ネルドリップやりたくなるなぁ。

  • 最近になって、自分で生豆を買って珈琲を(自家消費用ですが)焙煎しています。
    今回、その焙煎を教えていただいた師匠がお勧めしていた本だったので、書店で取り寄せて読んでみました。
    私のやっている珈琲焙煎の更なる向上につながるヒントのようなものを求めて、ページをめくってみたのです。

    結果的に、よく分からなくなってしまいました。

    自分には読むのがちょっと早過ぎたかなぁ、とも思いました。
    飲んでみたい珈琲・行ってみたい店は増えたものの、肝心の珈琲一杯の味につながるヒントは(いくつかはあったように思いますが)、結局見出せず。

    ざっと読んでみて分かったことといえば、

    「コーヒー屋のおやじってやっぱ、偏屈だよなぁ」

    ということと、

    「どうあがこうが結局その『もか』のコーヒーを飲むことはもう出来ないんだよなぁ」

    ということ。

    「わかる者にはわかるし、わからん者にはわからん」
    と魯山人を引き合いに申されましてもですね、そもそも飲んでみて味わうことさえ出来ないとなると、判断できないことばかりですよ、と。

    自家焙煎珈琲店めぐりが好きな往年のマニアなら「うんうん、そうだよね」とうなづけることもあるかもしれませんが、私にはまるで未知の世界。
    「日本自家焙煎珈琲史」なるものを編んでいる人にとっては一級の価値のある証言がたっぷりと詰まってるとも思いますが、生憎そういうのを編みたいわけでもなし。

    うーん、旅してみようかな。私も。
    自家焙煎珈琲店めぐりの旅。

    それこそ、標さんも珈琲求道の世界旅行に旅立って、自らの珈琲道を極めていったことですし。
    そういう経験も必要なのかな。
    本で読んだだけじゃ、やっぱり味は分からないですからね。

  • コーヒーはほとんど飲まないのだけれど、読後はなぜか無性に飲みたくなる。おいしいコーヒーってなんだろうなぁ。

  • 自家焙煎珈琲店の違いはどこにあるのか。
    素人からはわかりづらいが、ここまでやる店があったのか。
    豆の選び方、淹れ方も参考になる話があり、いくつか取り入れさせてもらいました。
    一度鬼のコーヒーを飲んでみたかった。

    しかし、コーヒーの話より、コーヒー屋の店主の話。という視点で書かれています。

  • 日本の喫茶店のコーヒーが、どんな職人芸の賜物であったかがよくわかった。鬼気迫る様子が文章を通して伝わってくる。喫茶店を巡ってコーヒーの味が分かるようになりたいと思った。

  • 珈琲の焙煎、ネルグリップ…珈琲馬鹿の数々のお話。表参道の大坊珈琲店はまだあったよな。一度行ってみよう。鶴岡駅前のコフィア、福岡の美美、お弟子さん達のお店、鳥目散帰山人のブログ、確認してみよう。

  • 吉祥寺にあった喫茶店のマスターが、自家焙煎に凝っていたという話。さすがにストーリーを増して書かれているが、途中、台割に余りがあったようで、よく雑誌に載っているデータが載せられている。非常に退屈な本だった。

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