ことば汁 (中公文庫 こ 55-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 159
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122055896

作品紹介・あらすじ

モノクロームの日常から、あやしく甘い翔溺の森へ。恋多き詩人に三十年以上仕えてきた女、孤独なカーテン職人が依頼をうけた屋敷の不気味なパーティー、魅入られた者たちがケモノになる瞬間…短篇の名手が誘う六つの幻想譚。

感想・レビュー・書評

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  • 「人間は、うんざりするほど他人を誤解し、自分も誤解され、死んでいく。誤解と思ってもそこにはひとかけらの真実があるのかもしれないし、やっぱりすべては誤解であるのかもしれない。」

    短篇の名手が誘う六つの幻想譚。と裏表紙にあります。この方はもともと詩人なので言葉の使い方がとても巧妙です。
    幻想というけど人の内面はそもそも幻想でできているように思うので心象風景としてはリアルかも。
    決してわかりやすくはない作風である意味ドロドロとしていますが、はまります。

  • 女の人がたくましく生きていく為には、妄想が必要なのだ。みじめな自分に、妄想というアートで、言い訳を与えてあげるのだ。

    そんな美しい言い訳が、6つも読めるなんて。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「言い訳を与えてあげるのだ」
      小池昌代 は、「通勤電車でよむ詩集」を読んで、良いセレクトだなぁ~と思ったのですが、やはり「言葉」の感覚が鋭い...
      「言い訳を与えてあげるのだ」
      小池昌代 は、「通勤電車でよむ詩集」を読んで、良いセレクトだなぁ~と思ったのですが、やはり「言葉」の感覚が鋭いですね。
      「ことば汁」かぁ~何となくネットリ感に絡め取られそうです。自分自身を納得させる、言い訳を読んでみたくなりました。。。
      2012/12/17
  • 文学

  •  普通の日常からいつの間にか別世界へと迷いこんでしまう短編集。妖しくて生々しくて、静かに怖い、大人の童話のようだった。嫉妬や欲望が人をけものにする過程が、爆発的ではなくじわりじわりとしていて、気がつけば後には戻れない場所まで辿り着いてしまっている状態がすごく怖かった。それと同時に、老いてもなお女は女であることもよーく分かった…しんどいような嬉しいような、でもしんどい。

  • なまめかしくねっとりした空気感に最後まで馴染めず読み終えてしまいました。ってこれタタドの時の感想とまるっきし同じ。詩は好きだけど、小説は表現が直截的に生々しすぎて苦手です。

  • タイトルからして何やら淫靡な響きを持つ幻想的な短編集。非日常的なシーンに意外な小道具や人間模様が交わって官能的でさえある情緒を醸し出す。

  • 妖しくて 静かで いい。

  • 文章が瑞々しく豊かでありながら、官能的な雰囲気を纏う小説。
    一つ一つが、昔話のような、どこか遠い異界の物語のように錯覚する。
    短篇のほとんどが共通するのは、人間の「嫉妬」を盛り込んだ作品。

    私は短篇の中で「つの」がお気に入りです。

    読み応えがあり、世界観にどっぷりと浸かることが出来ました。

  • 2013/05/02
    濃密で官能的な短編集。
    ことば汁というタイトルがとてもよく合っていると思う。
    ピース又吉がオススメなのも納得。

  • ”飾り気がないといえば、わたしほど、心に装飾がない女は少ないと思う。それなりに化粧はする。おしゃれもする。けれど心は、いつも裸だ。裸の心は、傷だらけだが強い。傷つけばさらに強くなっていく。
    だけどそれは、何度も言うように、どこかケモノめいた心なのだ。まだかすかに残っている人間の心が、わたしにサビシイという言葉をはかせる。わたしはさびしい。わたしはむなしい。”(P71)

    ”わたしが眠っているあいだに、深い鍋の中で、この世の現実は、とろとろと煮込まれていく。夢など見ない。わたしが夢そのものだから。”(P240)

    粟立つような女性の薄暗い部分から
    あっち側との境目をゆらゆらするようなお話ばかり6つの短編集。

    詩人であるということがよくわかる
    言葉の選び方や曖昧な空気感。
    不気味さがじわじわにじんでくる感じも
    たまらなく好き。

    生き物をモチーフにしている短編集らしく
    人間味より動物的。

    つのが特によかった。

    表紙もタイトルも良い。
    無駄がない。
    けど一つ一つの話は相当漠然としている。
    こういうものが読みたかった。

    久しぶりに良い作家さんに出会えた。

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著者プロフィール

小池 昌代(こいけ まさよ)
詩人、小説家。
1959年東京都江東区生まれ。
津田塾大学国際関係学科卒業。
詩集に『永遠に来ないバス』(現代詩花椿賞)、『もっとも官能的な部屋』(高見順賞)、『夜明け前十分』、『ババ、バサラ、サラバ』(小野十三郎賞)、『コルカタ』(萩原朔太郎賞)、『野笑 Noemi』、『赤牛と質量』など。
小説集に『感光生活』、『裁縫師』、『タタド』(表題作で川端康成文学賞)、『ことば汁』、『怪訝山』、『黒蜜』、『弦と響』、『自虐蒲団』、『悪事』、『厩橋』、『たまもの』(泉鏡花文学賞)、『幼年 水の町』、『影を歩く』、『かきがら』など。
エッセイ集に『屋上への誘惑』(講談社エッセイ賞)、『産屋』、『井戸の底に落ちた星』、『詩についての小さなスケッチ』、『黒雲の下で卵をあたためる』など。
絵本に『あの子 THAT BOY』など。
編者として詩のアンソロジー『通勤電車でよむ詩集』、『おめでとう』、『恋愛詩集』など。
『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集02』「百人一首」の現代語訳と解説、『ときめき百人一首』なども。

「2023年 『くたかけ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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