ステップ (中公文庫 し 39-2)

著者 :
  • 中央公論新社
4.15
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本棚登録 : 3759
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122056145

感想・レビュー・書評

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  • 出だしから心を鷲掴みにされて、涙腺ゆるみっぱなし。

  • 雑誌への連載中タイトルは『恋まで、あと三歩。』だと記されている。若くして妻(朋子)に逝かれて残された夫(健一)が幼い娘(美紀)の子育てに悪戦苦闘しながらも新しい自分自身への一歩、新しい恋への一歩、義父母とその家族の歩みと再出発の物語であった。娘の美紀ちゃんの保育園から小学校卒業式当日までを折々の季節・行事とともに綴り描いていく。

     「美紀ちゃん素直すぎ!」とか「周りの人間できすぎ!」とかの評を目にする。美紀ちゃんのように真っ直ぐに成長する子も、曲がる子もいるだろうし、周りもいい人ばかりいるわけではない。世の中,この物語のようにはいかないって云うのは百も承知。でも、このような境遇に立った時、この美紀ちゃんのように多少おませな子であっても、真っ直ぐに育って欲しいと願うだろうし、周りの協力もこのようであったらなぁと思うのは私の甘えでしょうか。

     「永遠の不在」をどのように受け容れ、一歩を踏み出すか、誰もが経験するテーマではないにせよ、我が身に起こらないとは云えない。今の立ち位置でけっして響かない言葉や情景かもしれないけれど、このテーマに触れ考えておいても害にはならないだろう。

     「一生懸命なひとがいる。不器用なひとがいる。のんびりしたほうがいいのはわかっていても、それができないタチのひとがいる。...」

     「数えきれないほどの今日を昨日に変えていって、いま、僕たちはここにいる。」

     「アリとキリギリスの話あるだろ。イソップだっけ。あれは半分間違ってるよ。...」
     
     「悲しみや寂しさは、消し去ったり乗り越えたりするものではなく、付き合っていくものだと...」

     前後の文脈なしに一文一文の意を推量するのは難しいだろうけれど、なにげないこれらの言葉がスーッと沁みてくる。久々に重松清氏の作品を手にしましたが、やっぱり今回も重松節にじわじわと温められ、目から汗のように滲んでくるものを手の甲で拭いながら読了しました。

  • 僕の胸の奥にはずっと、朋子を亡くした悲しみがあった。美紀はママのいない寂しさと一緒に大きくなった。
    悲しみや寂しさを早く消し去りたいと思っていたのは、いつ頃までだっただろう。いまは違う。悲しみや寂しさは、消し去ったり乗り越えたりするものではなく、付き合っていくものなのだとー誰かが、というのではなく、僕たちが生きてきた日々が、教えてくれた。(343p)

    最初は男手一つで息子を育てた「とんび」の娘版かと思っていた。しかし、テイストは全く違った。「とんび」は見事な浪花節、涙を最初から最後まで搾り取るものだったが、「ステップ」はむしろ恋愛小説、男やもめと娘との、或いは再婚相手との、或いは残された義父と孫娘との、静かに育てあげるラブストーリーだった。涙は出なかった。

    もちろん、著者は家族小説の第一人者なので、ほっこりさせてしんみりはさせてくれた。

    この単行本初版は09年だった。しかし、家族のうち1人が理不尽にもあっという間に居なくなってその後を生きて行くという設定は、3.11以降の東北で無数に起きていることに違いない。文庫版あとがきで著者はそのことに触れるかな、と思ったが一言も触れなかった。思うに、著者の見識だと思う。
    2013年3月15日読了

  • 最後、号泣でした。
    私にはこの美紀と同じ小6の娘がいます。
    違うのは、妻は健在だという事でしょうか。
    でも、初めからずっと、『もし、妻が病気とかで
    亡くなったら・・・』と考えながら読んでました。
    そして、『妻も娘も大事に、大切にしよう、今よりも』
    と思いました。
    しかし、ホント、泣かせてくれるなぁ、重松さんは・・・。

  • 今更、重松清でもないと思いながら、読む本を切らしてたので、前に皆さんのレビューで感じ良かったのを思い出して、この本買ってみた。
    若くして妻に逝かれて残された夫と1歳半の娘の物語。
    保育園から始まって小学校を卒業するまでの、折々の季節とともに描かれるエピソードの数々は流石に巧く、親が揃っていても子供を育てるのは並大抵ではなく、そんなことを思いながら読めば、もう話の最初のほうから思わずホロッというかキューンとする。
    後半、再婚の話に絡み、娘との間も微妙な距離になるとともに、義父母の存在が際立ってきて、多少違ったトーンの話になって、もう一度、家族とか夫婦とか老いとかについて、じんわりと考えさせられる。
    ただ、結構ウルウル来たのに、こう言うと悪いんだけど何となく素直に泣けないのは、登場人物の誰もがしっかりしてて、良くも悪くも話が出来過ぎてる感じがするからなんだろうかねぇ。

  • 時に心無い言葉が心に痛い。とても悲しく辛いけど、でもこの話はそこはかとなく強く暖かい。優しい子に育ったとはっきり言えるのはなんて幸せなことだろう。

  • うーむ。僕には合わなかった。何故か義父の目線になってしまうからかなぁ。

  • 娘から勧められて読んだ。
    娘は、どう感じたのだろう。
    妻としてこの世に心残りがありすぎて切なすぎた。
    私にしかわかってあげれない母と娘の関係があるのがわかるだけに父と娘とは辛い。
    もちろんお父さんがいないこともツライ。
    でも、それ以上にお母さんがいない切なさを娘もお父さんも出来る精一杯で生きていく。
    そう考えると、今置かれている立場に感謝せずにはいられない。
    家族たちよ。妻にしてくれて母にしてくれてありがとう。

  • リアルな日常が描かれているからこそ、心に突き刺さるものがあった。

  • 重松清さんやはり最高です。
    ケロ先生、サンタ・グランパ涙ウルウルそしてラストのジャンプで大泣きです。
    電車でしたが空いててよかったです。
    義父いい味出してます。

    重松清さん作品トップ3に入ります。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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