物語「京都学派」 - 知識人たちの友情と葛藤 (中公文庫)

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著者 : 竹田篤司
  • 中央公論新社 (2012年7月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122056732

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物語「京都学派」 - 知識人たちの友情と葛藤 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • 2012年(底本2001年)刊行。既に逝去された著者は元明治大学教授。

     15年戦争期、京都大学には西田幾多郎を頭に戴く哲学研究の花が咲いていた。本書は、西田とその後継たる田辺元を軸に、戦前昭和~戦後直後の京都大学哲学科に関わった研究者の合従と相克、そしてその生臭い人間的な裏面を解読しようと試みる人物評伝である。
     余り関心を持っていない領域であるが、少なくとも彼等の著作の字面からは見えてこない内なる声と、彼らの関係性を上手く拾い上げているので、評伝としては抜群に出来栄えの良い作と感じられる。
     ここで書かれるように、研究者間の蜜なる関係性が京都大学の学風を作り上げ、それは東大とは異質なもの、という観点からも、かの大学の独自性を感じ取れる一書とも言えそう。

  • 西田幾多郎を中心として戦前の京都帝大に集った知識人・学徒たちのドラマを描く。京都帝大の成り立ち、西田が京大に招かれるまでの経緯、西田とその周りに集う個性豊かな哲学徒たちの活躍、戦争とのかかわり、戦後の田辺元と野上弥生子の関係などに論及し、最後に京都学派を成立させた要因が考察される。

    いくつか確認しておこう。まず、本書は西田を中心とした哲学系の動向を論述の中心としている。京大東洋学に言及する箇所は一応あるが主題ではなく、その他の領域も対象としていない。戦後のいわゆる「新京都学派」についても同様である。次に、本書タイトルに「物語」とあるが、小説の類ではなく、事実にもとづいて構成される。とはいっても、登場人物たちの研究内容に踏み込んだ記述がなされるわけではなく、あくまでも彼らの人間関係・ドラマを扱うものなので、読み通すのに特別な知識は必要としないだろう。

    様々なエピソードで彩られた本書は、漫然と読んでいるだけでも十分面白い。ただ、本書は現代に対して重要な問いを発してもいる。それは、人文的な知を成立させる「場」とは何か、という問いである。著者・竹田は本書のエピローグ「『ネットワーク』としての『京都学派』」で、「京都学派」の成立・持続の動因として、1.西田ら中心メンバーの世代的特殊性、2.西田・朝永三十郎による「人事の妙」、に加え、3.当時の京都の空間的狭さおよび大学における学生数の僅少、そしてそこから生まれる濃密な人間関係、を挙げる。今日の人文知の困難を考える時、重要なのは3点目、一言に集約するなら「場」の問題であろう。今日、大学は大衆化して久しい。教授や講師は遠隔地から「通勤」するのが当たり前。濃密な人間関係は望むべくもないし、そもそも新自由主義の波にあらわれて、文学部の存立自体が危うい時代である。大学における人文知の存続・発展は困難に直面している。では、我々はどの「場」にそれを求めればいいのだろうか……。

    それにしても、91~92頁に引用される唐木順三の文章、「読者諸君、こころみにこういう情景を頭に浮べてみたまえ。」と始まる、西田が定年退官間近だった時期の京大哲学科の風景の活写は圧巻である。講義に臨むべく西田が錚々たる助教授陣を引き連れ教室に入っていく。それに合わせ京都の各大学で活躍する新進気鋭の学者たち、いずれ名を馳せるであろう学生たちが教室に詰めかける。逐一名前が挙げられていくその面々の豪華さと言ったら。

    すでに遠い過去の話である。だが、かつてこの国でこのような光景が繰り広げられていたことを、我々は記憶しておくべきだろう。

  • 14/10/24、ブックオフで購入。

  • 竹田篤司『物語「京都学派」 知識人たちの友情と葛藤』中公文庫、読了。京都学派の哲学者たち五〇余人人間模様を膨大な資料から描き出す労作。近代知性の師友や人間関係の葛藤と友誼の足跡を生き生きと伝えてくれる。期待せず読んだためか、その息吹は面白かった。叢書の文庫収録化。

    筆者は学派の成立しなかった東大と対比的に描きながら、京都学派の成立与件に言及するが、京都という学的空間の濃密さには驚いた。また以外にも本書の主人公は田辺元。本書で初めて知るエピソードも多い。

    近代国民国家は所与の関係を分断することで成立する。全国から集まった世界視野の英才が、しかしながら狭い人間関係の中で……つまり反都市的……生成されたことはアイロニカル。物語風一書ながら考えさせられる。

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物語「京都学派」 - 知識人たちの友情と葛藤 (中公文庫)の作品紹介

東京帝国大学とはちがう大学を目ざしてつくられた京都帝国大学。本書は、戦前の京都帝大を舞台に、西田幾多郎と田辺元という異質な個性の持ち主を中心に展開した近代知性たちの一大絵巻である。彼らの豊かな学問的達成から、師弟の友情や葛藤までを、日記や書簡などの貴重な新資料をも駆使して鮮やかに描き出した大労作。

物語「京都学派」 - 知識人たちの友情と葛藤 (中公文庫)はこんな本です

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