桃仙人 - 小説 深沢七郎 (中公文庫 あ 69-3)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122057470

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  • 著者の深沢七郎への心酔ぶりが胸をえぐる一冊。
    著者はいつか「オヤカタ」から切られるんじゃないかとビクビクしている。そしてじっさい、切られる時が来る。
    しかし著者は、切られた者が執拗に関係を繋げようとすることをオヤカタが嫌うということを骨の髄から知っている。オヤカタの前でしてはいけないことを知り尽くしている。だから著者は、決して自分からは会いに行かない。弁明に行かない。そのうちに、オヤカタが死んでしまう……
    まるで、「いきの哲学」に貫かれた、花魁との恋愛のようではないか!

  •  誰かに対して心酔して師事することがあまりなく、描かれていた関係性が楽しそうで、羨ましかった。深沢七郎が魅力的だった。作品も面白そうだ。

     解説がたっぷりあって、ますます深沢七郎が気になったし、僕の表現もその影響下にあることを強く感じた。先日読んだ、尾辻克彦『肌ざわり』もモロに影響されているようだ。

     また、僕も急に人に対して嫌気がさして一方的に絶交してしまうことがあった。若いころのことで、ある時反省して、自分から人を排除するようなことは絶対にしないことにした。なにしろ失礼だし、相手を傷つける。そんな苦いことを思い出した。

  •  深沢七郎とのつきあいを小説仕立てで回想。些細なことで懇意な間柄の人を斬り捨てる偏狭な作家への敬愛心と、いつ自分も斬られるかとビクビク過ごす恐怖感が、様々な興味深いエピソードとともに綴られる。
     まぁしかし、深沢七郎の破天荒な生き様に惹かれる気持ちも、斬られる不安がやがて現実となったときのフッと抜ける思いも共感できるが、それはまるで青臭い「恋」である。

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著者プロフィール

嵐山光三郎(あらしやま・こうざぶろう):1942年東京生まれ。『素人庖丁記』により講談社エッセイ賞受賞。『芭蕉の誘惑』によりJTB紀行文学大賞受賞。長年の薀蓄の末に到達した芭蕉像を描いた『悪党芭蕉』で、泉鏡花文学賞、読売文学賞をダブル受賞。他に『文人悪食』『追悼の達人』『「退歩的文化人」のススメ』『不良定年』『人妻魂』『年をとったら驚いた!』『枯れてたまるか!』など多数。

「2024年 『老人は荒野をめざす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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