闇夜 - 警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫 と 25-29 警視庁失踪課・高城賢吾)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122057661

作品紹介・あらすじ

娘・綾奈と悲劇の再会からふたたび酒浸りの生活に戻り、無断欠勤を続けていた高城。失踪した七歳の少女の捜索に引きずり出されるが、少女は絞殺体で見つかり、事件の担当は失踪課から捜査一課に移ってしまう。娘を失った両親に自身を重ねた高城は犯人を捜し出すことを誓い、わずかな証言を元に執念の捜査を続けるが…。

感想・レビュー・書評

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  • 前作の「牽制」で描かれた警察官の失踪事件。
    自殺の理由も謎のままで、遺書も謎めいた短い文のみだった。
    えらく中途半端な描き方で、「牽制」のストーリー展開に必要だったのか?という疑問さえあった。
    まさかこの「闇夜」にエピソードが繋がってくるとは!
    思いもよらない展開に驚き、堂場さんの伏線の巧妙さに感心した。
    綾奈と同じ年代の少女が犠牲者となったことで、高城の中にも犯人に対する強い気持ちが生まれる。
    先へ進むための原動力に悲劇的な事件がなってしまったのは哀しいけれど、高城にとってはまた一歩前に進むことが出来たのではないだろうか。
    それにしても、田口の持っている「運」は何だろう。
    ここぞというときに当りくじを引いてくるような、持ってうまれたものかもしれないけれど・・・。
    失踪課の戦力としては普段はあまり使えない田口だけれど、その分「運」を使って貢献している?と考えると何だか面白い。

    捜査本部で捜査員たちを前に話す高城の姿は、切なくて胸が熱くなった。
    犯人を捕まえたい!
    もう犠牲者は出したくない!
    その場にいた捜査官は、きっと全員が同じ思いをより強くしたことだろう。
    被害にあった我が子は守りたい。
    もうこれ以上傷つけたくはない。
    そんな親の気持ちと、犯人を捕まえたいという警察側の気持ち。
    どちらも正しくて、だからどちらも譲ることが出来ない。
    犯罪被害者家族の辛さは、その立場にならなければきっと誰にも理解できない。
    高城をや同じ被害者家族だからこそ通じる何かが、被害にあった少女たちの両親の心を動かせたのだと思う。

    綾奈の命を奪った犯人は誰なのか。
    いよいよ事件の核心に迫る次作の「献心」。
    楽しみにしている。

  • 読み進めるほどに、今後の展開が気になる失踪課シリーズ。
    失踪課の仕事に徐々にやりがいを見出していたが、娘綾奈と悲劇の再会をし、再び酒浸りの生活に戻った高城。
    そんな高城を、仕事に駆り出して立ち直らせようと画策する失踪課の面々。
    そして今度は、愛美に悲劇が襲いかかる。もう、彼女とは相棒を組めないのか、そんな危惧をいだきながらも、娘が遭遇したのと同じような事件の捜査に、高城はまい進する。
    この事件が解決したら、いよいよ綾奈の事件と向き合う覚悟を強いられる高城。
    このシリーズも、最終話へ・・・

  • 前回、骨が見つかったところで終わったのですが、その骨が娘の綾奈であることがわかり、失意の中でお酒に溺れていく主人公。

    そんな彼の元に、娘が亡くなった時と同じぐらいの年齢の子が家に帰ってこない。という通報が来て主人公も捜査に参加します。

    主人公の立ち直るきっかけになればと思い、読み進めました。

    前回のサラッと流した事件が、こう発展するとは!?

    それにしても、お母さん、立ち直り早っ!

  • 行方不明だった娘との悲劇の再会。そしてまたアルコール漬けの毎日を繰り返していた中、部下二人から事件に引っ張り出される主人公。少女をめぐる事件で否応なく被害者家族としての人格と刑事としての人格が交錯する姿が、今の主人公を説明しています。上司の真弓が「生きている限り、人間は何度でも立ち上がれる(略)P223」わたし自身もその言葉を信じたいです。

  •  最終巻へと突入!

  • 警視庁失踪課・高城賢吾シリーズのラストに向けて、酒浸りで底まで沈んでしまった高城賢吾が、遂に浮上する事となるシリーズでもキーとなる本作。
    しかし小説とは言え、少女誘拐事件は胸糞が悪くなる。
    やはり辛いけれども現実に向き合い、そして立ち向かわなければ、本当の意味で乗り越えることはできない。
    そのための過程として、被害者家族が憎しみを向けるためにも、その矛先となる犯人を一刻も早く捕まえなければならない。
    そしてクリスチャンであったとしても、犯人を殺してやりたいと思う事は必要なんだと。
    悲しみの次に憎しみの時を迎え、そしてようやく大切な家族を失った現実を受け止めるフェーズに辿り着く。
    果たして自分の身に置き換えたらどうだろうか?
    考えるだけで辛いけど、きっと想像の域を超えているだろう。

  • このシリーズは被害者を含めて捜査の中で死人が出ない作品もあったんだけど、今作は果たしてこの人が死ぬ必要はあったんだろうかと思う人が死んでしまい、やや戸惑った。今作はシリーズ9作目で、完結のひとつ前。主人公をシリーズを通しての大きな問題との決着に向かわせるために必要なことだったんだろう。重い役目を担った作中の親子に敬礼したい。
    二子玉川駅周辺の描写で分かりにくいところがあり、どうしても気になって地図を見ながら確認したので、高島屋周辺の道にやけに詳しくなってしまった。

  • あれだけ引っ張った行方不明の娘の死体が見つかったって状態で始まるキツい一冊、シリーズ9作目。内容は失踪課らしくなく普通の刑事物ぽく捜査が進んでいく。まあテンポ良く面白い。ここで前作で自殺した警官が出てくるとはね。もはや愛着で読み続けてるだけのようなもんなんだけど、次で最後みたいなので続けて読む。

  • 娘をもつ身には、辛い事件が題材となった。
    このシリーズは、メインテーマからして“そう”ではあるけれど(笑)。

    無慈悲なまでに唐突に訪れた、ヒロインの悲劇には心が痛むところだが……

    “高城の事情”が、さらに一歩踏み込まれた点、次作(次が最終?)への期待値が急上昇。

    堂場瞬一に外れなし、無事更新♪

    ★4つ、8ポイント。
    2015.03.29.古。

  • 高城賢吾シリーズも第9弾まで来たか(しみじみ)。
    そういえばタイトルを『やみよ』と読んでたよ。『あんや』だったのね。

    綾奈ちゃんの件はいきなり結果が出ていて驚いた。
    『牽制』のラスト1行を正確に読み取れなかったのが今となっては悔しい。
    シリーズ開始の頃のやさぐれ状態に戻っちゃった高城さんの尻を叩いて檄を飛ばす
    明神さんにもまた岐路が訪れるという辺り
    終わりが見えてきた感じがして何となく寂しくなる。

    今回の犯人はこれまでの失踪課シリーズには類を見ない残虐さ。
    しかも無自覚というか暖簾に腕押しというか、見ててイライラするような奴だった。
    この犯人が『牽制』で投げっ放しだった伏線のひとつに繋がってくる。
    前作の尻尾を引き摺る展開なのは、失踪課シリーズにしては珍しいかも。

    最後にして最大の仕事を残して今回の話は終わる。
    高城さんや明神さん、失踪課の未来はどうなるのか。
    果たして犯人は捕まるのか。
    気になる。
    今回の事件の捜査過程で寺井が絡んでたことが浮かんできたことで
    綾奈ちゃんをあんな目に遭わせたのは寺井なんじゃ、
    とちらっと思ったりもしたけど、まぁそんなわけないわな。

    話の途中で大友鉄が(電話でだけど)登場して若干小躍り(笑)。
    たまにこういうクロスオーバーがあるから堂場作品はやめられない。

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著者プロフィール

堂場瞬一(どうば しゅんいち)
1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書に「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」「警視庁犯罪被害者支援課」などのシリーズ作品のほか、『八月からの手紙』『傷』『誤断』『黄金の時』『Killers』『社長室の冬』『バビロンの秘文字』(上・下)『犬の報酬』『絶望の歌を唄え』『砂の家』『ネタ元』『動乱の刑事』『宴の前』『帰還』『凍結捜査』『決断の刻』『チーム3』『空の声』『ダブル・トライ』など多数。

「2023年 『ラットトラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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