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人質の朗読会 (中公文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 中央公論新社 (2014年2月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122059122

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人質の朗読会 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • 目次
    ・第一夜 杖
    ・第二夜 やまびこビスケット
    ・第三夜 B談話室
    ・第四夜 冬眠中のヤマネ
    ・第五夜 コンソメスープ名人
    ・第六夜 槍投げの青年
    ・第七夜 死んだおばあさん
    ・第八夜 花束
    ・第九夜 ハキリアリ

    連作短編集ではなく長編小説なので、本来は章タイトルを書くことはないのだけど、一章ごとにひとりの人生の場面が描かれているので、イレギュラー的に記載してみました。

    地球の裏側にある国で、反政府ゲリラの人質とされてしまった8人と、ゲリラの様子を探るためにアジトを盗聴していた政府の作戦本部の男が語る物語は、自分が書いた自分自身の物語。

    世界的に有名なわけでも、世界をゆるがるような何かをなしたわけでもない、ごく普通の人びとにも、人生を振り返ってみればどこかに、人に語るべき何かがある。
    彼らはそれぞれ、インテリアコーディネーター、調理師専門学校製菓コース教授、作家、医科大学眼科学教室講師、精密機械工場経営者、貿易会社事務員、主婦、ツアーガイド、政府軍兵士と肩書はバラバラ。

    共通するのは、弱者に対する優しさ。
    通り一遍のものではなく、多くを語らない相手の気持ちを慮り、心を寄せることが自然にできる。
    しなやかな強さを持った人たちの物語は、甲乙をつけられないくらいどれも好き。
    本当は甲乙をつけてみようと思ったけど、できなかった。

    私が自分の人生を物語るとしたら、一体何を書くだろう。
    人前で読み上げられるような物語を書くことができるだろうか。

  • これはすごい。外国で誘拐され人質となった日本人8人が退屈しのぎか、
    恐怖をまぎらわすためにかそれぞれが自分の物語を順番に語り合う、という形式の小説です。
    それぞれの話が当然独立しているので普通に短編集として読めますね。
    あずきこさんがこの作品をチラリと書いてくれていたので
    早速Audibleにて第3話まで聴いてみたのですが、そうとう面白い作品ですね、これは。
    Kindle版もあるので皆さんも機会があればいかがでしょうか。
    3話まででしか聴いていないのでもしかして最後で作品全体に仕掛けがあるのかもしれないですけど、
    ここまでそれぞれのストーリーを読んでて、うまいなあ、そしてなんとも染みるなあ、と感動しきりです。
    それもたまたまなのか、1話、2話、3話と進んでいくにつれ段々と良い話になっていくんですよね。

    本当にそこいらにある日常を切り取ったストーリーなんですけど、
    えええ、そっちに展開するのか!という驚きもあるんですよね。
    あっ、驚きといってもあくまで日常で起こり得る展開ですよ。
    超常現象とかヒーロー・ヒロインが登場するわけじゃない。
    だけど、小川さんの絶妙な語り口と話の構成の巧さで忘れられないストーリーになるんですね。
    日常という素材だけですごい物語になっている。
    すごいわ、これ。

  • 人質たちのそれぞれの物語。
    彼らは、それを自ら書いて朗読する。
    その物語は、何気ないものなのだけれど、こっそりと心に留めておきたいような秘密のようなものでもある。

    それにしても、どうしてこのような話が思いつくのか不思議でしょうがない。
    「妊娠カレンダー」の様に、文章だけで唸らせることも出来るし、それでいて素晴らしいプロットを生み出すことも出来る。すごい作家だと思う。

  • もし私がこの小説の登場人物の一人で、彼らがしたように、何でもいいから一つ思い出を書いて、朗読しあうことになったとしたら。
    私は自分の人生の記憶から、何を選び、どのように書き起こし、朗読するのだろう。

    そう考えて、自分の過去に想いを巡らせてしまった作品です。

    地球の裏側の異国をツアー旅行中に、反政府ゲリラに拉致監禁された八人の日本人。
    彼らは退屈を紛らわすため、自分の思い出を一つ書いて、朗読しあうことに。
    救出作戦は失敗に終わり、彼らは全員死亡。
    その二年後、彼らが生前語った八つの物語と、ある一人の若者の物語の、計九つの物語が、「人質の朗読会」と題して、ラジオ番組として公開され…。

    小川さんの、静かで、どことなく、黒々とした光沢を持つぬばたまを連想させるような独特の文体のもと、八人の人質たちは、まるで、祈りのように、静かに過去の一点の記憶を語っていきます。

    八人は、年齢も属性も、それまでの環境も全く異なっており、当然、朗読される日常の記憶の一コマの物語には何の繋がりもないのですが、なぜだか、むせ返るような孤独と死の匂いだけが、ひどく共通している印象を受けました。
    彼らの「祈り」に耳を傾けていた、もう一人の物語にも。

    そして、朗読された物語と繋がるようで繋がらない、各々の物語の最後にたった一行で記される、彼らの死亡時の年齢や肩書き、ツアー参加動機などは、そのような些細な日常の一コマを何十年とかけて積み重ねてきた人生があっけなく崩れ去ってしまったことを読み手に痛感させます。

    孤独と死からは、誰も絶対に逃れられないということを、なんだか肌に染み付くように感じた気になった、小川ワールド全開の作品でした。

  • 衝撃的な設定。しかし、それぞれの語りは死の匂いが濃厚で静謐な小川節炸裂。

    B談話室:物語の産まれるところ。
    冬眠中のヤマネ:心の通い合い。おじいさんをおぶる。眼科医に自らなるところがよい。
    槍投げの青年:孤独な繰り返し動作と死者との交感。

  • 優しくて穏やかなのに、序章で頭に刷り込まれた事実がいつまでも頭をまわって、切なくてたまらなくなる

  • 観光ツアーの客8人を乗せたマイクロバスが、反政府ゲリラの襲撃を受けてバス丸ごと拉致されます。人質はそのまま行方不明になって100日以上が経過、やっと居場所が判明してするも、軍とゲリラの銃撃戦となって人質は全員死亡。その後、現地で発見されたテープに、人質たちが生還する希望を失わないためにか、1人1話ずつ物語をつくって朗読をしていた様子が録音されていました。遺族の許可を取って1話ずつをラジオで放送、それを紙に記した本、という体裁。誰にでも、物語として残しておきたい何かがひとつぐらいはあるはず、と著者の小川洋子さん。

  • 人質の人数と話の数が合わないのはどういうことなのだろうとか、最後はこの朗読会がどう締めくくられるのだろうとか、「人質の朗読会」という設定が与えられていることによって緊張感を持って読み進むことになりました。
    単なる短編集としても面白い作品になったと思うのですが、この最初の設定があることによってどの話も単なる回想話ではなく人生の中の特別な体験なのだと感じられ、そのように受け取り方が変わってくるのが面白いと思いました。

  • 2017.01.27読了。
    今年5冊目。

    岩田書店一万円選書の一冊。

    インパクトはあるけどなんとなく違和感のある設定がひっかかりあまり話が入ってこなかった。
    つかみどころのない現実感のないふわっとした話が多かったからか...
    コンソメスープ名人は面白かった。

  • 人質として僻地で捕らえられた8人の朗読会。そして、それを聞いていた、現地の特殊部隊の1人の朗読。
    過去に起こったささやかな、でも忘れられない一場面が、静かに祈るように語られる。
    小川洋子さんらしく、静かで緻密な情景描写。
    特殊部隊の人の、ハキリアリの行進する姿を思い浮かべるととても可愛らしい。
    そして、映像化において本書では名前がでないラジオ局報道記者役を演じた、佐藤隆太さんが解説を書いている。それがまたいい。

  • 人は誰しも物語を持っている。記憶をすくいあげ、丁寧に解きほぐし、物語へと昇華させるその行為を私もしてみたくなりました。辛いことも、そうすることで少し楽になれる気がします。

  • 地球の反対側にある山岳地で、拉致事件に巻き込まれた8人の日本人。拘束されていた小屋の中で、拉致後1カ月ほどして始まった朗読会、その録音テープがラジオ番組として放送された。
    それぞれの物語が、その風景も登場人物の感情も理解しやすくまとめられているので入り込みやすい。人生の一コマ、普段は忘れているかもしれないけど、ふとした時に思い出す、感情の高ぶりの記憶。物語は誰のなかにもある、という帯がぴったりだと思った。

  • 本屋大賞2012年5位。連作短編集。なんか、設定がいまいちしっくりこない。無理筋っぽい。床に文章書くか?、とか、死ぬ間際に出てくる思い出ってこんな話?、とか、だれでもこんな上手に小説作れるの?、とか。あと、この人の文章読んでていつでも感じるんだけど、もっと美しい文が書けるはずなのにわざと異物を混在させてるような違和感。なんとなく、心地よいのにちょっと残念な気持ちになってまうことが多々あるのです。

  • 土屋 仁応さんの美しい白い鹿 装丁がきれい……
    大好きな小川洋子さんの。
    人質の、ひとり一人の語る体験談が
    アンデルセンの絵のない絵本思い出すような 短編集のようなのだけど
    語る人たちはみんな たまたま、そこで捕われの身になり
    なくなったんだ と分かってて
    それぞれのエピソード 味わう…
    悲しいや
    俳優の佐藤隆太さんの、あとがきも良かった。

  • 私だったら、何を話すだろう。

  • 不思議な世界だった。
    何人かの少し不思議なエピソードなんだけど、それが語られた後に、皆が死んでしまっていることがあらかじめ分かっていて、だから、そのエピソードの底にずっと生き死にみたいな感覚がただよっていた。
    印象に残ったのは、おばあさんに似ている、と言われてる女性の話。ありそうでなさそうで、微妙に不思議でちょっと怖い感じだった。この話に限らず、すべての話の中に、そんな感じが漂っていた。

  • 小川洋子らしい
    どれも日常の些細なことだけど,こうしてその一つ一つを取り出してみると,不思議な話のように思える
    そのことが不思議

  • 濃密とは言えないささやかな心のふれあいを通して、明日へと繋がる大事な一歩を踏み出したエピソードを語る人質たち。淡々と語られるなかにも、確かな力強さを感じました。

    死を意識しながら行なわれる朗読会であったからこそ生まれた神々しさなのだろうかと思いました。不思議な世界観のある1冊でした。

  • 反政府ゲリラに拉致された人質が,拘束された中で語り合った8つの話をまとめたものだ.緊迫した状況下で,様々な年代の人が語り合うことは想像できないが,どの話もオチがあって面白かった.隣の娘さんがスープを作る「コンソメスープ名人」が少し不気味だが,詳細なレシピの記述が楽しめた.「B談話室」は幻のような女性に勧められて,危機言語で語り合うグループに突然参加することになった男が出てくるが,何故かほっとする感じだ.

  • 全てのお話が心の中に染み入るようでした。特に第一夜の「杖」と第五夜の「コンソメスープの名人」がよかった。

  • 【旅をすることば】

    小川洋子の世界は、ということを私はここで何回か書いてきた。時には長ったらしく使える言葉を全部使って、最近ではなんでもない読み逃してしまうような言葉を使って、私は小川洋子と向き合ってきた。

    小さな石に宿る物語がある。反対にどんなにエキセントリックに思える事件でも、物語が宿るとは限らないとこの物語は教えてくれる。

    改めて人は語りの生き物だ。

    この物語が人をおしゃべりにするのは明白だ。あなたもきっと、あなたの物語を語りたくなる。

    そして、その語られた物語はあなたの世界を離れて、誰かの世界へと旅をする。

  • 人が人と出会うという事。それは当たり前の事であり、同時にその人の人生の中での物語の1片にも成り得る。日本人8人が反政府ゲリラの人質となりそして全員爆死する。というショッキングな出だしから始まるこの作品は、生前長い人質生活の間に各々が語り合った朗読会のテープが後日特殊部隊により公開され、盗聴された死者の『人生の物語』が淡々と静かに描かれている。ただただありふれた生活の中で出会った人々との思い出がまるで鎮魂歌の様に思わせ、読み手の哀しみを一層に誘う。日本人の気質というのもこの物語を成り立たせる要因の一つではないかと思う次第である。

  • 誰もが、自分が主人公の、自分の物語を紡ぐ。

    最初から、人質が全員死んでしまったことが語られる。そのあとで、八人が自分の物語を書き、朗読会をおこなっていたこと、その物語が続く。人質の生の声はない。物語の形にされた、彼らの人生の一こまがあるだけ。どんな人だったのだろう、どんな人生を送ったのだろう。新聞で亡くなった人の写真を見たり、その人のことを語る誰かのことばを聞くより、彼らが生きていた感じがした。「生きた証」というのか、そんな仰々しいことばにはならないが、彼らに自分だけの人生があったことがわかる。こんな小説を読めるのは、幸せだ。

    人質にとられている立場でなくても、生きているうえで、考えること、耳をすませることは大事。しかも、損なわれることのない過去、自分を作った過去を考えるのである。わたしを作ったものについて、思いめぐらすこと。それが、生きていく力になる。

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人質の朗読会 (中公文庫)の作品紹介

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた-慎み深い拍手で始まる朗読会。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして…。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日を生きるための物語。しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。

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