- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122059887
作品紹介・あらすじ
新選組でも一、二を争う剣客・斎藤一。激動の幕末維新を経て大正時代まで命をながらえながら、遺された史料はほとんどない。度重なる改名の理由、なぜ会津藩士として生きたのか…「自らの過去を封じた」ともいえる謎に満ちたその生涯を、新選組の組織や掟という視点から読み解く斬新な書き下ろし評伝。
感想・レビュー・書評
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いまだに何かと謎の多い斉藤一。こちらは通史としてすっきりまとまっていて、入門編としても、おさらい的な意味でもわかりやすい1冊でした。
目新しい考察としては、いままで斉藤一の変名のひとつとされていた「一瀬伝八」が、実は斉藤一馬という会津藩士と混同されているだけではないかというのは、ありえるかもと思いました。あと生き残り組の証言を鵜呑みにできないというのも確かにそうですね。谷三十郎と武田観柳斉の死に斉藤一が絡んでいると証言しているのは高台寺党の生き残りの篠原泰之進だけで、立場的に色々詐称している可能性は否めない。(ながらく定説になっていた斉藤一左利き説も出どころはこのひとだけでしたっけ)。
しかし著者自身が斉藤一に興味をもったきっかけは司馬遼太郎の『新選組血風録』の「鎗は宝蔵院流」と「鴨川銭取橋」だったそうで(私もまったく同じだった!)、その内容が史実として覆されたとしても小説の魅力が色褪せるわけではありません。同じく司馬さんの『燃えよ剣』でも斉藤一は函館戦争まで土方と行動を共にしますが、これもまた史実ではない。それでも「諾斉」のエピソードは涙なしには読めないし(私は)、それを信じても別にいいと思っている。
著者自身も最初に書いているように、斉藤一に関しては、わかっているのが「点」ばかりで、その点と点をつなぐ線が不明な部分が多い。そういう意味ではその「線」の部分は自由に考察、想像することも許されるわけで、要はこちらが史実としての「点」と、それをもとに作家や研究家の描いた「線」を区別できていれば良いだけのことでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
流石の情報収集能力。
でも推論も多いかな。 -
浪士組と呼ばれたころからの隊士であり、永倉新八と共に大大正時代まで生き延びた人物である斎藤。たくさんの記録を残した永倉とは違い、ほとんど記録を残さなかった彼の軌跡を追うものですね。
いわゆる試衛館の食客だけが生き延びたのだなと考えると感慨深いものがあります。
年表、史料もきちんと明記されており、参考文献としては良いものだと思います。 -
特別厚いわけではない文庫本なのですが、なかなかに内容がみっしり詰まっていました。
自身で過去を語らなかったため、永倉新八など生き残った他隊士に比べ謎の多い(むしろ謎だらけ)の斎藤ですが、複数の証言や史実を重ね合わせることで見えてくるものもあります。それでもミステリアスなのが斎藤一の魅力でもありますが。
文字ばかりで書かれているので、その生涯について通り一遍の知識がないといきなり読むのはつらいです。ムック本では足りない、もっと知りたいという人向け。