宿敵 (中公文庫 あ 61-9)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 72
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122060098

作品紹介・あらすじ

尽くし続ける女が鬼になる瞬間。誰にもかえりみられぬ女がほくそ笑む理由。美貌と富に恵まれた貞淑な妻の素顔-社会の狭間で生き抜く女たちは、今日もしたたかに、密やかに闘い続ける。『汝の名』『女神』の明野照葉がスリリングに描く五つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 全て新作かと思いきや「宿敵」だけが書き下ろし作品で後の4編は1996年度に書かれた「在星邦女」から2008年まで書かれた作品で構成されています。

    内容紹介を読んで今回も明野さん独特のスリリングな展開を期待したのですが予想とは違いやや平凡な印象を受けました。

    表題作の「宿敵」に関してはその言葉から受ける印象とは裏腹にどこかほのぼとした感じさえ受けます。

    どの作品も丁寧に描かれてはいるものの、やはり明野さんが持つ独特の背筋がゾクっとする様な世界観のある作品を期待します。

  • 傍らに同性の存在を感じながらも一人ですっくと立つ女性達の五作。年下女性を拾った三十六歳の女性の都合の良い女に収まる相手への微かな苛立ち。二人の闇が意外な結末。無職から亡くなった独居老人の部屋に残された物を片付ける商売を始める話や、うつの自分とそうでない時の自分を別人のように切り離して語る話も印象的。

  • 「在星邦女」がサスペンスものとして面白かった!薫は悪女だが応援したくなる。

  • (収録作品)月を撃つ/NOBODY/在星邦女ーワイヴス・イン・シンガポール/満願の月/宿敵

  • 訳ありな女性たちが主人公の5話からなる短編集。

    「月を撃つ」
    小さなバーを営む女性が主人公。
    彼女はある夜、ゴミ置き場でうずくまる若い女性に声をかけ、行きがかり上面倒をみる事になる。
    彼女は女を食い物にする男から逃げてきたと言う。
    最初は面倒な事になったと思っていた主人公だが意外にも女性との同居生活は快適なものだった。
    所が、二人の前に女を追い込んだ男が現れて-。

    「NOBODY」
    都合のいい時にしか存在を思いだしてもらえない、そんな存在感のない女性が主人公。
    いつも貧乏くじを引かされる彼女は今回も身よりのない親戚の世話を頼まれる。
    貧乏くじを引かされたはずだったーが、それが元で彼女は思いがけない小さな幸福を手に入れ、それが仕事につながっていく。

    この話、面白い発想だと思いました。
    この話だけで長編にしたり、連作短編にしても面白そう。

    「在星邦女」
    シンガポールで幸せな結婚生活を送る女性。
    彼女は過去にコールガールをしていた経験があり、その頃の顧客に偶然出くわしてしまう。
    昔の事をバラされたくなければ自分の渡す宝石の原石を一時預かってほしいと言われ引き受けた彼女だったがー。

    これで終わりかと思いきや、意外な続きのある話。
    同じことをしても頭の良し悪しが運命を決めてしまう。
    そんな皮肉さを感じる話。

    「満願の月」
    離婚し、友人の経営する会社に勤める事になった女性。
    彼女には子供の頃のトラウマがあり、両親、妹との関係がどこかギクシャクしている。
    それが彼女の性格に影を落とし、卑屈な性格になっている。
    自分の人生がうまくいかないのは全てそのせいだと他人のせいにしている彼女だが、そのトラウマとなった場面と同じ状況になった時、彼女が思いだした事とはー。

    どこか自分に似てると思う主人公。
    私も30代の頃はこんな感じだったのかな?と思った。

    「宿敵」
    ライターの女性が主人公。
    彼女の中には二人の自分がいて、一人はうつ病で、もう一人はその自分を奮い立たせようとする。

    タイトルにもなっている話でよくよく読むと深い話なのかもしれないけど、この本の中ではイマイチ。
    短い話。

    どの話もそれなりに楽しめて面白い。
    どの女性も訳ありで、重たくてネトーッとした所があるのはこの人の書く他の本と同じ。
    反対に、生きづらさを感じる世の中で自分だけじゃないと思える不思議な安堵感もあったりする読後感だった。

  • 女の心理のドロッとしたところがうまい。
    そこまでイヤミス過ぎないので、さらりと読める短編集。
    「在星邦女」が面白かった。
    「NOBODY」もほっこりしてて好き。

  • 人間の本質を見事にあぶり出し表現仕切れている。それもより複雑な女性に的を当てている。明野先生自身の内面を描いているのだろうか?

  • 暗くていまいちでした(°_°)

  • 1996年オール讀物推理小説新人賞最終候補作「在星邦女」の他、雑誌に掲載された中短編3編、書き下ろし一編。
    「在星邦女」は不条理な結末ながら一番面白かった。
    すっきりしない話もあり、この作家は長編のほうが断然面白い。

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著者プロフィール

明野照葉

東京都生まれ。一九九八年、「雨女」で第三十七回オール讀物推理小説新人賞を受賞。二〇〇〇年、『輪廻RINKAI』で第七回松本清張賞を受賞、一躍、注目を集める。ホラーやサスペンスタッチの作品を得意とし、女性の心理を描いた独自の作風はファンを魅了してやまない。『汝の名』『骨肉』『聖域』『冷ややかな肌』『廃墟のとき』『禁断』『その妻』『チャコズガーデン』(以上中公文庫)、『女神』『さえずる舌』『愛しいひと』『家族トランプ』『東京ヴィレッジ』『そっと覗いてみてごらん』など著作多数。

「2020年 『新装版 汝の名』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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