楢山節考/東北の神武たち - 深沢七郎初期短篇集 (中公文庫)

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  • 中央公論新社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122060104

作品紹介・あらすじ

辛口の批評家正宗白鳥をして「人生悠久の姿がおのづから浮かんでゐる」と言わしめたデビュー作「楢山節考」。表題作をはじめとする初期短篇のほか、中央公論新人賞「受賞の言葉」や、伊藤整、武田泰淳、三島由紀夫による選考後の鼎談などを収録。文壇に衝撃をもって迎えられた当時の様子を再現する。

感想・レビュー・書評

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  • 今までにない読書体験だった。

    深沢七郎は、言わなければよかったのに日記を読んで、楢山節考を読まなきゃとおもい、古本屋で購入。
    エッセイに度々出てきていたおりんという人物、なんだろう、昔話のような曲調で日本人としての思想の核の部分を歌詞にしかけているのにもかかわらず、満足感はない、歌詞の足りていない音楽、のような…。

    深い部分もあるのだが、欠けている部分もある、それが掴みきれない魅力なのか。
    油断したら終わってる、これがいい余韻が残るわけではない。

    本人が元々ギターをやっていたのは知らなかった。
    なんだか掴みどころのない変わった人なのか、深沢七郎。

    後半のいろんな解説がとてもおもしろかった。

  • 古典としてよくとりあげられる。今回、読む機会を持った。内容は姥捨て山と思ったら、それはそうもあるけどそれだけではなかった。三島も絶賛している。もっと早く読めばよかったと思う。

  • 癌を告知された母は生きることに執着せず、淡々と準備して旅立った。その潔さを思い出すたびに死に直面した人の心の中はどうなんだろうかと思っていた。
    おりんは病んでおらず、逆に歯を折らないといけないほどに丈夫だった。死に直面していたわけではなく、自ら選んだと言える、何のために?家族のため?生きて迷惑をかけることを案じた自分のため?
    どんな状態になっても生きていける社会を作っていきたい。

  • 本当は風流夢譚が読みたかった。
    話自体はなんだか後味悪く怖い
    むしろ、巻末の三島や武田の対談が面白い

  • 楢山節考を初めて読んだ。
    これに限らず、本書に収められている短編から、日本の暗闇があった時代が、質感と共に目の前に浮かぶ作品である。
    こうした時代を経て、僕らは無機質な部屋にいるのだと実感する。

  • 古き良き日本の姿形がこういう文化だったら、私は今のほうが確実に良いと思う。老人捨てられてるし。フィクションとして読む、この収録物語自体は好きです。でも余韻をぶち壊す外野の解説等が後半多すぎるよ。

  • 表題作の二つは再読。この二つの他に、初期短編、「楢山節考」の戯曲バージョン、中央公論新人賞受賞時の深沢の短文や選考委員の講評などが収められている。
    「楢山節考」をかなり久しぶりに再読しながら思ったのは、自己(主人公)が運命を、共同体の「掟」を、他者のまなざしを受け入れながら、静かに自-死するというテーマ。自死のテーマは深沢はその後あまり直接的には取り上げていないため、それが最も鮮烈なこの作品が、やはり代表作ということになるのだろう。
    この、他者のまなざしのもとで慫慂と死を受け入れるというテーマは、そういえば、カフカのものである。深沢はカフカとは全くちがうコンテクストに乗せて、同等の自-死に至る境地に到達している。その心理的経過は民俗的な、個と集団とが分離しきらないいかにも日本的な世相に基づいており、深沢はそれを「庶民」の世界として敷衍的に書き続けた。「死」への視線は、「人類滅亡教」という少々ふざけたノリに紛らせて、戯作的な方向に進んだ。
    私は彼のそうした戯作的方向が好きだ。カフカ的シビアさはときに見えにくくなるが、それでも、どこかで「死」の主題が見え隠れしているはずだ。
    新人賞の選考委員として鼎談しているのは伊藤整、武田泰淳、三島由紀夫。この得体の知れない新人作家を、彼らはそれぞれのコンテクストに引き寄せて理解しようとしているが、成功していない。特に三島由紀夫は深沢の芸術的洗練の無さを嫌がっているようだが、三島の「インテリジェンス」は、深沢文学の不気味な輝きの前では哀れなくらいだ。若干似たところのある不気味さを有する泰淳も、ちょっと見当外れな発言をしている。
    悪文で、近代的小説としての芸術的洗練とは全くかけ離れた深沢文学の衝撃的な魔力は、何冊読んでも、いまだにその全容を明らかにされていないように思える。

  • 嫌だな。
    こういうどう考えても好きになれそうにない作品が心に残ってくるのが、1番もやっとする。

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著者プロフィール

大正三年(一九一四)、山梨県に生まれる。旧制日川中学校を卒業。中学生のころからギターに熱中、のちにリサイタルをしばしば開いた。昭和三十一年、「楢山節考」で第一回中央公論新人賞を受賞。『中央公論』三十五年十二月号に発表した「風流夢譚」により翌年二月、事件が起こり、以後、放浪生活に入った。四十年、埼玉県にラブミー農場を、四十六年、東京下町に今川焼屋を、五十一年には団子屋を開業して話題となる。五十六年『みちのくの人形たち』により谷崎潤一郎賞を受賞。他に『笛吹川』『甲州子守唄』『庶民烈伝』など著書多数。六十二年(一九八七)八月没。

「2018年 『書かなければよかったのに日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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