一路(下) (中公文庫 あ 59-5)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122061019

作品紹介・あらすじ

中山道を江戸へ向かう蒔坂左京大夫一行は、次々と難題に見舞われる。中山道の難所、自然との闘い、行列の道中行き合い、御本陣差し合い、御殿様の発熱…。さらに行列の中では御家乗っ取りの企てもめぐらされ-。到着が一日でも遅れることは御法度の参勤交代。果たして、一路は無事に江戸までの道中を導くことができるのか!

感想・レビュー・書評

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  • とにかく(下)は面白かったです。笑ったし、涙も出ましたし、本当に良かったです。加賀百万石のお姫様の恋の話がありますが、ここの部分は本当に好きでした。お姫様の可愛さと、侍従の女性の強さの対比に心が温かくなるような感じがしました。また、主人公の許婚の女性の優しさと強さもステキでした。参勤交代と聞くと武士のイメージが強いですが、それを支える人たち、無事に勤めを終えることを願う人たちがいるからということを考えさせられました。いつの時代もかげながら応援する人たちは強いなぁっと思いました。

    最後まで読むと、うつけ者と言われているお殿様のすばらしさが分かります。非常に頭の回転の良いお殿様だと思いました。お殿様と聞くと、ちょっと自分とは違うような雲の上のような人の印象ですが、非常に人間味があり面白いお殿様が描かれています。

    この作品はぜひ読んで欲しいです。笑って、泣いてと忙しいですが、それができる作品です!

  • 読み終えたーっ!
    読み応えたっぷりだった。
    行列は国元を出発し、中山道を通り、途中11の宿場町で宿泊しながら江戸へと向かいますが、そのすべての宿場町での、すべての道中での、1日1日の出来事が描かれていて、圧倒されました。蒔坂家の参勤交代のすべてが描かれています。だから、行列に同行しているような、側で様子を伺っているようで、凄く面白いです。特に宿泊した宿場町でのそれぞれの出来事が、すべて面白かった。
    将監による御家のっとりの企み、またその結末に、将監を慕っていたお殿様の姿がさびしく見え、少しかわいそうに思えました。
    あまたの困難を乗り越え、行列を差配し、無事に江戸へと到着した一路に、「本当にお疲れさま」と労いたいです。国元に帰ったら、許嫁と一緒になって、幸せに過ごしてほしいです。
    独特の言葉がたくさんでてきて戸惑うことも多かったけれど、御家のっとりの企みや参勤道中の数々の出来事にハラハラさせられ、凄く面白い作品でした。

  • 下巻に引き続き、とっても面白かった!
    シリアスでも逆でも語り口が淡々としてて、それがまた癖になる。
    下巻でも沢山の困難が発生して、主人公はすごく必死だし、逆にお殿様はますますよく分からない人物になっていく。
    最後色々なことが明らかになるけれど、締めくくりの一路の名前の意味にはグッときた。

  • 参勤交代を通して武士の矜持、意地、気概が伝わるお話しで、殿様、上士、下士、お姫様、それぞれの立場を完うするべく一所懸命に生きようとしている。当時の人々の生き様なんだろう。時代背景的には幕末でこれが最後の参勤交代だったのが物悲しい。浅田さんらしい普段目にしない漢字や読み方が多く、立ち止まることがあったが、それも何だか上下巻楽しめました。

  • 参勤交代のお話は初めて読みました。

    険しい旅だったんですね....。荷を捨てるほどのことまでしなければ越せない峠。
    人一人がただ行くだけでも危険な崖っぷちを、馬も渡ったのよね...と
    想像するだけでも足がずるずると崖を滑る。加えて、水が溢れる川を渡ることさえ
    この時代にしてならどんなに大変なことかと思えたにしても
    参勤道中の道々がこれほどの命がけだったということに驚かされました。
    (自分も)落ちる(死ぬ)かと思った。(笑)

    道中の"差し合い"というのも面白かったです。
    どちらも先を譲るわけにはいかないのです。
    さてどうする???

    なかでもいちばんのお気に入りは、参勤道中御供頭小野寺一路と並んで
    もう一人の主人公(ではないかと思う)の蒔坂左京大夫のお殿様。
    このお殿様にはのっけからもう釘付けでした♪
    第一印象とはよくいったもので、御発駕当日朝からのお姿がかっこよすぎて
    最後までずっと目が離せませんでした。

    江戸までの参勤道中
    その行く道に苦難があれば
    一行の人の中にも闇があり....

    「一路」は、小野寺一路という名の参勤道中御供頭の物語でありながら
    江戸までの中山道を行く行列一行の皆が、懸命にその道を乗り越えていく
    "一路"の物語でもありました。

  • 上巻が色鮮やかな料理が小さな器に盛りつけられて寿司詰めのように飾られた籠膳であるならば、下巻はうな重のように大きな器にでーんと大物を盛りつけたような感じ。下巻は道のりがあとわずかでありながら、これまでの問題点が一気に噴き出してくる、それを解決せねばならないため一つ一つがじっくりこってり書き込まれているので上巻のようなテンポよさはない、しかしながらこれまで垣間見せていた御殿様の本来の姿が顕現し、あれやこれやが一気に大団円。これぞ時代小説の粋である。
    タイトルの一路という名を背負った御供頭の名の由来も明かされすべてがきれいに、それでいてまったくの爽快感でもなくしんみりとした御殿様の幕引き口上、星4ではあるものの、上下巻通しては間違いなしの星5である。
    あとがきの参勤交代とは行軍である、がまったくの作り物というこの発想がなにより秀でていた。浅田さん、流石!

  • 自分の領分の中で命をかけて「一所懸命」に頑張る武士達の物語。笑いと感動、ユーモアとシリアスが絶妙なバランスでとても面白かった。
    急速に変わっていく時代の中、変わらずにいることに批判も起こるが、時代に上手く乗ることだけが生き様では無いことを物語を通じて感じる。

  • 下巻も楽しかった。やはり浅田先生、大興奮の面白さである。感動に涙した回数でいうと、圧倒的に上巻のほうが多いが、下巻も人間ドラマから目が離せず、蒔坂左京大夫が段々かっこよく見えてくるから不思議である。左京大夫に限らず、主人公の小野寺一路を始め、登場人物すべてがイキイキしていて、その魅力は悪役も含めて全員を好きになってしまうほどである。好きな登場人物を上げればキリがないのだが、下巻では特に国分七左衛門の義理堅い男臭さが書き出されていてよかった。思わず声に出して笑う場面も数多くあり、泣いたり笑ったりと感情を揺さぶられまくる良書である。

  • 久しぶりに氏の長編を読了。いつもの浅田節に酔いしれました。決して読者を裏切らないサービス精神。少々落ち込んでいる自分の精神状態もおかげさまで、少しは前向きに頑張ろうという気になりました。

    いつものことながら、ケレン味があり過ぎる展開に人物造形ではあるが安心して読め、カルタシスが得られる。「蒼穹の昴」位までは、本当に良く読んでいた記憶があるが、その後しばらく離れているので、未読の作品も沢山ある。また、楽しみが増えた。

  • やはり読み始めると、止まらない。

    人を描くのも、情景を描くのも上手くて、どんな人物も無駄にはならないというと語弊があるが、生きていることに感動した。

    クライマックスからの落ち着き方が、なんとなくよそよそしくて下巻は星四つなのだけど、とても面白かったし、泣いたし、笑った。

    与えられた仕事を、一所懸命にこなすこと。
    分をわきまえ、場を見通して、自分が出来得る限りの技を尽くすこと。
    それは、ややもすると忘れがちなことで、自分本位になりがちな自身への警句ともなった。

    初読で、共にハラハラドキドキしながら江戸まで駆け抜けたこの二冊に、感謝。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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