- Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122061187
感想・レビュー・書評
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沖縄戦を指揮した八巻参謀の手記。
当初の予定どおり持久作戦に徹して居れば、第五師団の台湾転出がなければ、開戦初期の陣地からの攻勢を自重してれば、など戦いは錯誤の歴史でありことがよくわかる。そして正しい意思決定を組織の中で通そうとするときは意見の合理性の闘争だけでなく政治闘争に勝たねば結果が出ない。
一方でこれ以外の現地の方の体験記を読むとそこにあるにはもっと生々しく血肉の香りがするかのような体験談。
戦争を指揮する側と指揮される側ではこんなにも見える景色が違うものか?と。
#5744 「増加した徒歩部隊の多くは、歩兵的訓練に乏しいものばかりで、そのうえ戦車に対抗する兵器をもっていなかった。せっかく戦線に投入しても、ほとんど全滅の有り様である」
で増加した歩兵部隊とは臨時招集された島民、それも二十歳前に若者を含む人たち。
その人たちの手記と対比して読むと見え方の違いがすごい。
戦場における戦記は命令された側と命令する側の双方で合わせてよまないと実相は見えないなと理解した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
旧軍大本営の空回りが悲しい。一方で、皆が必死に考え行動していたことが分かる。
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"戦訓を伝える為"に生き残った参謀の沖縄戦記。作戦立案の担当者だけに、戦闘期間中の軍の実情や首脳部の空気などは著者にしか書けなかった。最も筆に力がこもっているのは作戦対立のくだりで、著者の立案に反する決定に対しては、「日本人の欠点」にまで論旨が発展している。それは一面、現代にまで通じる真理があるものの、沖縄戦全体において膨大な民間人の犠牲が出たという、最大の反省点については力点は置かれておらず、結局一職業軍人の回想の範囲に留まっている印象は否めなかった。