沖縄決戦 - 高級参謀の手記 (中公文庫 や 59-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122061187

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争時、日本で唯一地上戦が展開された沖縄戦の全貌。四十三年ぶりに復刊した本書は、十八万の米上陸部隊を迎え撃ち潰滅した第三十二軍司令部唯一の生き残りである著者が苛烈な戦いの経緯を描くとともに、現代日本人にも通じる陸軍の宿痾を鋭く指摘した「日本人論」でもある。

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄戦の全体像を描いた32軍作戦参謀の手記。
    沖縄戦の準備から戦闘間は上級司令部に惑わされ、戦闘後は捕虜との誹りを受け、戦後は本人の認識とは異なる通説が流布した怒りが、本書の大きな動機となっており、一方、組織の和よりも自己の信ずる正しさを貫く、よく言えば正直な、悪く言えば集団に馴染めない本人の性向が招いた立場というのも多少あるのではないかとも察せられ、そこは色々と差し引いて読む必要があると思われるが、本戦争における沖縄戦の意義から、32軍の取るべき作戦を導き、最後までその信念を捨てずに軍司令部と沖縄戦の推移をリアリストの眼差しで見つめ続け綴られた本書から得るものは多い。

    特に感じられたのは、人間の、組織の、そして日本人の極限状況における弱い側面である。
    物事を合理的、論理的に見て論を進めれば、もっと良く戦えたというのは、八原の述べる通りであり、それができず、閉塞感からの逃亡としての徒らな攻勢で戦力をすり潰す等の、極限状況における人間の、組織の、もしくは日本人特有の愚行が、冷静に観察されている。我々がすべきは、ここから人間、組織、日本人の本質を見出し、己を知ることで来たる状況において適切な観察と判断をいかにすべきかを考えることであろう。

    冷静に戦局を、人を観察し、厳しく批判するその一方で、他者への敬意や温かい眼差しも同居する、沖縄戦を戦った一人の人間の記録としても、非常に面白い作品である。

  • 沖縄戦を指揮した八巻参謀の手記。
    当初の予定どおり持久作戦に徹して居れば、第五師団の台湾転出がなければ、開戦初期の陣地からの攻勢を自重してれば、など戦いは錯誤の歴史でありことがよくわかる。そして正しい意思決定を組織の中で通そうとするときは意見の合理性の闘争だけでなく政治闘争に勝たねば結果が出ない。
    一方でこれ以外の現地の方の体験記を読むとそこにあるにはもっと生々しく血肉の香りがするかのような体験談。
    戦争を指揮する側と指揮される側ではこんなにも見える景色が違うものか?と。

    #5744 「増加した徒歩部隊の多くは、歩兵的訓練に乏しいものばかりで、そのうえ戦車に対抗する兵器をもっていなかった。せっかく戦線に投入しても、ほとんど全滅の有り様である」

    で増加した歩兵部隊とは臨時招集された島民、それも二十歳前に若者を含む人たち。
    その人たちの手記と対比して読むと見え方の違いがすごい。

    戦場における戦記は命令された側と命令する側の双方で合わせてよまないと実相は見えないなと理解した。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/732291

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/732291

  • 旧軍大本営の空回りが悲しい。一方で、皆が必死に考え行動していたことが分かる。

  • 東2法経図・6F開架:210.75A/Y16o//K

  • "戦訓を伝える為"に生き残った参謀の沖縄戦記。作戦立案の担当者だけに、戦闘期間中の軍の実情や首脳部の空気などは著者にしか書けなかった。最も筆に力がこもっているのは作戦対立のくだりで、著者の立案に反する決定に対しては、「日本人の欠点」にまで論旨が発展している。それは一面、現代にまで通じる真理があるものの、沖縄戦全体において膨大な民間人の犠牲が出たという、最大の反省点については力点は置かれておらず、結局一職業軍人の回想の範囲に留まっている印象は否めなかった。

  • 第2次大戦時に沖縄へ駐屯し、侵攻してきたアメリカ軍と戦い潰滅した日本第三十二軍の高級参謀八原大佐が綴った沖縄戦の記録(2015/05/25発行)。

    当時の日本陸軍参謀の作戦立案能力が、どれ程低かったが良く解る本です。
    例えば、必勝戦法が10キロの急造爆薬を抱えてアメリカ軍戦車に体当たりし自爆すると云うものであったり、戦力差を無視した無謀な総攻撃を行い戦力を著しく消耗するなど、ドイツやアメリカ、イギリス他の国々の参謀と比較すると著しく劣っているように感じました。

    又、元高級将校の軍人であった筈の著者ですが、海軍の提督を将軍と云っていたり、陸軍の航空部隊を当時存在しない空軍と云っていたり、陸軍の常套句である”転進”とは云わず”後退”と云っているなどなど不可解なことや、軍司令部で唯一捕虜になり逃げ延びたことに対する釈明が今一つ頷けなないなど、本書の信憑性にも疑問を感じました。

    本書、史料としてそれなりに意義のある本かもしれませんが、幻の名著と云うには大げさな本のように思います。

  • 戦没者は軍人・民間人合わせて約20万人。壮絶な沖縄戦の全貌を、第三十二軍司令部唯一の生き残りである著者が余さず綴った渾身の記録。〈解説〉戸部良一

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