幸せの条件 (中公文庫 ほ 17-9)

著者 :
  • 中央公論新社
3.83
  • (116)
  • (269)
  • (163)
  • (20)
  • (3)
本棚登録 : 1951
感想 : 184
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122061538

作品紹介・あらすじ

恋も仕事も中途半端、片山製作所勤務の「役立たずOL」梢恵に、ある日まさかの社命が下された-単身長野に赴き、新燃料・バイオエタノール用のコメを作れる農家を探してこい。行く先々で断られ、なりゆきで農業見習いを始めた24歳に勝算はあるか!?働くこと、生きることの意味を問う、『ジウ』シリーズ著者による新境地。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 向上心がない女子社員さんが、自分にとって必要なものを見つけていくお話。
    まさか震災が絡んでくるとは思わず、少し驚いた。
    前を向いて終われるエピローグになっており、明るい気持ちで読書を終われる。

  • 誉田氏の作品はホラーからミステリ、青春ものまで幅広い。今回はバイオエタノールからの農業への取り組み。
    何事もやる気の無さそうな若い女性の梢恵。彼からも会社からも見放され、社長の道楽のようなバイオエタノールの機械用の米を作ってくれる人を探しに、長野出張を命ぜられる。何となく東京に居づらくなった梢恵は出張に出掛けるのだが、そこで出会う人々が良い人たちで、梢恵は成長して行く。
    会社から給料を貰いながら住み込みで農業法人で働くのだが、ここの社長含め家族や従業員達からの農業の知識が勉強になる。
    丁度起きた東北の震災も描かれ、梢恵の取り組みにも変化が起きる。お荷物社員が立派に更生する姿が嬉しくなる。厚い本ではあるが、あっという間に楽しく読めた。

  • 著者が、リサイクルライフに興味を持ったのが、この作品を書く動機だとか。
    さらに、3.11の震災と原発事故が、著者の背中を押したそうだ。
    減反、高齢化、待ったなしの農業問題に焦点を当て、その魅力(もちろん過酷な条件は都会に比べるべくもないが)や必要性を描いた一方で、食料自給率についての政府のまやかしを、登場人物に批判させている。
    そして、福島第一原発は、東京電力の施設であり、関東の人がその恩恵を享受しているのに、被害を受け農地を奪われたのは東北の人々だと、訴える。

    「農業小説」ともいえるこの系譜には、テレビドラマにもなった『限界集落株式会社』(黒田伸一著)や、主人公の青年が、米つくりに出会い成長していく『生きるぼくら』(原田マハ著)などがある。
    題名とも関連するが、いずれも都会で自らの立場を見出せない者たちが、農村で生きる意味を見つけるサクセスストーリー。
    「あなたが会社に必要とされていないのではなく、あなたにこの会社が必要ではないのだ。あなたのいるべき場所は他にあるはずだ。」―登場人物の言葉。
    もっと、広く読まれるべき作品の一つといえよう。

  • 好きそうだからといただいた本。小説は普段読まない方だったけど、長野はよく訪れるので情景が思い浮かぶし、主人公の気持ちも東京出身者としてはよくわかるので、するすると読めてしまった。

    現実と交差するシーンもあって、幸せの価値観が時代とともに変わってきていることを感じられる。

    終盤の「本当に必要とされる人間なんて大していない」というところからがぐっときた。気づいてしまった自分に素直にいたいものだな。

  • 誉田さんの描く女子はいつも魅力的ですね。私は武士道ジェネレーションに出てくる女子の皆さんのファンですけど、彼女たちを連想しました。男子なのに何故こう書けるのでしょうか?一度、女子の声も聞いてみたい(笑)。 他の登場人物もまたイイ!君江さん、朝子ちゃんも魅力的ですねー。 とは言いつつ、考えさせるテーマもあって。最後の社長の片山社長のセリフにもジーン。 穂高村、モデルがあるそうですが、行ってみたくなりました。

  • 「周りが食いっぱぐれても、俺たちは食いっぱぐれねえ」

    農家さんは、生きるための「食」にもっとも近く、農家さんたちのお陰。手塩にかけて一年中忙しいということがテンポ良い展開からも分かるし、有り難く食事しよう、と思える。

    でも、後継者問題…。農家さんはあくまで、食べるための作物を作っている。

    自給自足、やってみたいと思いながらも大変さを想像し、私は有り難くスーパーで買わせて頂こうと思う。

  • 2018.4.30読了
    ☆5

    大好きな作品がまた一つ増えた。

    仕事も恋愛もイマイチなOL梢恵が農業と出会い、成長していくお話。

    とてもテンポが良く、まるでドラマを見ているかのようにリアルにイメージしながら読めた。

    ずっと軽いタッチのまま進んでいくのかと思いきや、途中東日本大震災が起こり、梢恵や「あぐもぐ」の人たちも大きな影響を受ける。
    震災の描写は当時の状況を思い起こさせ、目をそらしたくなる部分もあったが、それも作者からの「決して忘れてはいけない」というメッセージだったのだろう。

    また、農業やバイオエタノールについても梢恵と一緒に学んでいる気持ちになり、とても勉強になった。
    食料自給率がカロリーベースで計算されており、カロリーの低い野菜がカウントされていないとは知らなかった。
    食料自給率だけを見て低すぎると騒ぎ立てることが、いかに無意味かということが分かった。

    読後感も良く、みんなにオススメしたくなる作品だった。

  • 東京の中小企業の冴えないOL梢恵は、社命で長野の農家を営業活動することに。そしてひょんなことから農業体験をしていくうちに、農家の緊密な家族愛、仲間愛、そして肉体労働の充実感にはまり…。

    梢恵が農業に目覚めるきっかけが、東日本大震災なので、本書は東日本大震災ものとも言えるのかな。

    現代農業のリアルな姿が描かれていて、中々興味深い。しんどそうではあるけれど、農業の魅力満載。ちょっと憧れるなあ。

    軽めの話だけれど、読後感は爽やかでgood。

  • 再読で一気読み。やはり、面白い。農業を舞台にここまで微笑ましかったり、泣けたり、社会問題を考えられたり。農業の知識、取材がしっかりなされているから、時事の原発まで取り込み、見事な取り込みかた。仕事をする、必要とされるのではなく、自分自身で見極めることが大事。自分はこうやっていきていくんだを見つけられる、そしたら死ぬ気で守り抜くのが大事。ハッとした。登場人物が良い、チームで声を出して、集中していく気持ちよさ、ご飯の美味しさ、忙しさと爽快さ。恋愛要素もほとんど爽やかなのに、惹き付けられる名著。

  • 誉田さんの、ミステリー以外の本は
    実は初めて読みました

    最高だった!

    農家にバイオエタノールの機械売るために
    見習いに出る女子の物語

    農業やりたくなる
    っていうかこんなあったかい家族に出会いたくなる
    素敵

全184件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

誉田哲也
1969年東京都生まれ。2002年『妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞、03年『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。主なシリーズとして、『ジウⅠ・Ⅱ・Ⅲ』に始まり『国境事変』『ハング』『歌舞伎町セブン』『歌舞伎町ダムド』『ノワール 硝子の太陽』と続く〈ジウ〉サーガ、『ストロベリーナイト』から『ルージュ 硝子の太陽』まで続く〈姫川玲子〉シリーズ、『武士道シックスティーン』などの〈武士道〉シリーズ、『ドルチェ』など〈魚住久江〉シリーズ等があり、映像化作品も多い。

「2023年 『ジウX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

誉田哲也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×