- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122064027
感想・レビュー・書評
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児玉清さんの書評集。
日本から24冊。海外から18冊。それは魅力的なブックガイドにもなっている。
小説だけなのでやや食傷気味になるところだが、書評があまりにも面白そうで楽しくて、ここで載せないわけにはいかなくなった。
ひとつひとつが、心が躍るような書き出しでスタートする。
『さあ、この電車に乗りましょう。楽しい出逢いに満ちた阪急電車に!それも今津線に!』
(有川浩「阪急電車」)
『「守り人シリーズ」にようこそとまず申し上げたい。なぜならば、この本を手にした
あなたはきっと至福の一刻を過ごすことにまちがいないからだ』(上橋菜穂子「神の守り人」)
『読書の楽しさ、小説を読む喜びをこれほど見事なまでに与えてくれる作家がいてくれるとは。
毎回、読了後、満足感と至福の気持ちで次作を待ちわびるということになる佐伯泰英
書き下ろし時代小説は、僕の人生にとって最高に嬉しく有難い存在なのだ』
(佐伯泰英「攘夷 交代寄合伊那衆異聞」)
『心を洗われるような感動的な出来事や素晴らしい人物と出逢いたいと、常に心の底から
望んでいても、現実の世界、日常生活の中ではめったに出逢えるものではない。
しかし、確実に出逢える場所がこの世にある。その場所とは本の世界、つまり読書の世界だ』
(百田尚樹「永遠の0」)
『この物語の主人公コークに僕はぞっこん惚れこんでいる。彼の男らしさに、彼の人生への
考え方に、また見事な大人振りに、僕はぞっこんなのだ』
(ウィリアム・K・クルーガー「二度死んだ少女」)
まるであの声で語り掛けてくるかのような、この書き出し。
温かく、軽快で、ちょっぴりお茶目で。
過去に読んだ本も何冊かあったが、正直これほどまでには思わなかった。
その差はどこにあるのか、読んですぐに分かった。
児玉清さんは、作品に対する愛、作家さんへの敬意を、決して忘れていないのだ。
隅々まで読みつくし、調べ上げ、それも真正面から受け取って、感じて、考えて、言葉を尽くして作品への思いを表現している。
それはまるで「捧げる」と言った方が良いような姿勢だ。
少し上から「批評」している書評など、ただのひとつもない。これは素晴らしい。
そしてその文章力も並大抵ではない。書評のひとつずつが「作品」と言って良いほど。
梯久美子さんの後書きによると、少年時代の壮絶な虐めを、物語を読むことで乗り越えたという経験があるらしい。これもなかなか出来ないことだ。
生涯本を愛し、本を書く人に敬意を持ち続けたのも、それが原点なのだろう。
何とか多くの人に本の面白さの伝えたいという情熱も、むべなるかなである。
小説のお好きな皆さん、これはお読みになるとよろしいかもですよ。 -
芸能界きっての読書家であった筆者が、趣味が高じて文庫本解説まで手掛けるようになった解説集。
「寝ても覚めても本の虫」で淀川長治さんが「どんな映画でもいいところを探して褒める、私が褒めないで誰が映画を見ますか?」という一途な映画愛を語っていた件がありました。おそらく、筆者が解説を引き受けた小説の中にはイマイチな作品も含まれていたと思われますが、見事にプロ根性をみせています。好きは言えても嫌いが言えない解説って大変そう。とはいえ、本書と「寝ても覚めても本の虫」を読むきっかけになったのは、宮部みゆき「孤宿の人」の解説が児玉氏の文章だったからなのも事実です。 -
芸能界きっての読書家として知られた著者が、ミステリーから時代小説まで和洋42の小説を紹介する。本を選びあぐねている人に贈る極上のブックガイド。
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児玉清さんによる解説をまとめた本。
どれだけのペースで読んでいたのか、びっくりするくらい守備範囲が広いというか、面白ければ何でも受け入れてたんだなと思いました。
海外の作品も原書で読めるなんて、すごいなぁ。
そして何か面白い本が無いかと本屋をウロウロしてしまう気持ちもとても共感しましたw
日本の作品は時代物が好きだったですね。
宮部みゆき、畑中恵くらいしか読んでいなくて、なんとなく避けていた佐伯泰英とか藤沢周平も読んでみようかな、という気になってしまうからすごい。
海外ものも翻訳の違和感や海外ならではのジョークとかユーモアが教養の無さでイマイチピンとこなくて好きでは無く、最近はほとんど読んでなかったけど、ジョン・グリシャムとかケン・フォレットとかを読んでみたくなりました。
猟奇殺人ものは「羊たちの沈黙」が辛かったので、やっぱり手に取る気にはなれませんでした。
家にある積読もたまってるのに、また読みたい本、作家さんが増えてしまって嬉しい悲鳴が出るばかりです。
また新規開拓をしたくなった時に読んでみようと思います。 -
エンタメ読みなのがちょっと恥ずかしかった。、なぜか文学の方が偉い?ような本当の読書家のような気がして。
でも児玉さんがこんなにエンタメ読みとは意外。そして、読みやすい事について、声を大にして分かりやすくて何が悪いとその面白さを力説してくれる事がとても嬉しかった。
それぞれの本の紹介にも、本当に好きなんだなと感じられる熱量がある。
たぶん、そこそこ好みが似ているので読んだ事ないものを読んでみたい。 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50058892 -
書評集。文庫を愛情たっぷりに紹介。
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あの児玉清さんによる面白い小説の解説集です。それぞれの小説の巻末に児玉さんが書かれた解説を集めたもので、児玉さんの声を思い出しながら楽しませていただきました。掲載されている小説がいかに面白いのか。その著者の背景も詳しく書かれており、読めばその小説を読みたくなってしまうこと間違いなしなのではと思わされます。2部に分かれており、前半は日本の、後半は海外の小説が挙げられています。児玉さんの「面白い」小説を読まれてきたその幅広さに脱帽してしまいました。どの小説も絶対面白いだろうなと。
読んだことのある小説もありましたが、その著者の背景を知ることで、新しい気づきというか発見も見させていただいたように思います。
コメントありがとうございます!
児玉さんの壮絶な虐め体験というのは、戦争下の疎開中のことなのです。
...
コメントありがとうございます!
児玉さんの壮絶な虐め体験というのは、戦争下の疎開中のことなのです。
見知らぬ土地で両親もいないのに、独りぼっちで闘ったことを思うと涙が出ます。
お母さんが面会に来ても、歯を食いしばって言わなかったそうです。
この本以外にも、児玉さんの書評本は出ています。
どれでも地球っこさんのお好みでお読みくださいな♪
うふふ、本棚名、可愛いですか。嬉し、恥ずかし!
あまり壮大なことを言うのは気が引けるので「小さな」としておきました・笑
週刊ブックレビューの!
アタックチャンス!を引き継いだ谷原章介さんもなかなかの読書家の方ですよ。負けず劣らずのジェント...
週刊ブックレビューの!
アタックチャンス!を引き継いだ谷原章介さんもなかなかの読書家の方ですよ。負けず劣らずのジェントルマンです。
朝日新聞の好書好日というウェブページで連載を持っています。王様のブランチでは見られない風景が見られます。
児玉さんは文学作品が読みたくてドイツ文学科に進んだらしく。これぞ学問と言えますね。探求心。
本棚のタイトル、いいですね。味わいがあります。現実の図書館にコーナーとして設けて欲しいです。
ニルスのふしぎな旅を少しだけ連想しました。あれも夢のある作品でしたね。
一人また一人、夢の扉を開いてくれるはずです。
最近読む本にも書き出しがついてますが、それは誰かの作品から借りてきたものなんですよね。。
自分の言葉で伝えるパワーに脱帽です。
コメントありがとうございます。とても嬉しいです!
先日夜型さんのコメントにお返事した後、どうしてもっと色...
コメントありがとうございます。とても嬉しいです!
先日夜型さんのコメントにお返事した後、どうしてもっと色よいお返しが出来なかったのかと
情けなくて、その晩は殆ど眠れませんでした。
またこうして書きこんで下さって、ほっと胸をなで下ろしております。
谷原さん、そうだったのですね。知りませんでした。
「好書好日」の連載を今度のぞいてみます。楽しみです!
児玉さんの書評はまことに清々しい魅力がありますね。
ここまで愛してもらったら、作品も作家さんも本望でしょう(#^^#)
それとね、「穿つ」という表現を原義で使用していました。
そんな点も、すっかり魅了されてしまったワタクシです。
ああ、もっと早く読みたかったです(って、毎回そう思ってますが)
本棚名、気に入って下さって良かったです♡
レビューを読むのはほんの数分間のこと。
その間だけでも「ここではないどこかへ」旅が出来たら幸せだと思いません?
その旅先で、本を通した色々な風景が見えたらもっといいなぁと。
夜型さん、新しくレビューも載せて下さったんですね!何だかワクワクします。
岩波の二冊の赤本、とても興味があります。ぜひ読んでみたいです。
自分の言葉で伝えるのは、レビューの基本かと。。。
どうしたら読んで下さる方に伝わるか、もうそれだけで精一杯です。
夜型さん、ありがとうございました。