もののふ莫迦 (中公文庫 な 65-6)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (570ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122064126

感想・レビュー・書評

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  • 豊臣秀吉の家臣で、肥後の国を統治することになった加藤清正と肥後の国で育った岡本越後守による対立を描く。
    岡本越後守は、肥後の国が負けた時に、加藤清正が肥後の人を蔑んだことが許せない。

    岡本越後守は自分よりずっと身分の高い加藤清正に、武士としての道を説く。
    「おのれが敗北するかもしれぬとの思いを胸に宿す者は情けを知り、弱き者、敗れし者にも恥をかかさぬよう気遣うもの。相手に恥をかかせることは、おのれが恥をかくこととすら思うのでござる。その心得こそが、もののふの道にござりまする。」

    「目の前の敵を討ち果たすばかりならば、ただ強ければようござる。多くの兵と多くの鉄砲を集め、策をめぐらして敵の意表をつき、罠に陥れればそれですみましょう。されど、敵が治めていた土地と人を手に入れんとするならば、こちらは道を持たねばなりませぬ。武士としての道を。」

    そして岡本越後守は自分のもつ憎しみに向き合いながら、武士の道を貫く。正しい生き方を説く岡本越後守の言葉一つ一つには重みがあり、人を惹きつける。
    岡本越後守に周りの人々は圧倒され、ついて行く。武芸や戦法に長けているだけでなく、人としての魅力があったからこそ人々はどこまでも喜んでついて行った。戦国の世の武士たちの人間物語は今の時代とはかなり異なり、とても面白かった。

    また、2度にわたる朝鮮出兵について秀吉の意思と重鎮の大名たちの意向の相違や時代の背景を知ることができ、興味深かった。

  • 秀吉による九州平定戦の折、若き加藤清正の肥後武士への敬意を逸した対応を「もののふの道」に外れた行為であると怒りを露わにする岡本越後守。他の国衆は圧倒的な兵力に屈し戦わずして本領安堵を望むも、越後守は徹底抗戦を主張し出奔。その後、佐々成政による両国経営の失敗により一揆が多発する肥後国。秀吉の命を受けた加藤清正は一揆鎮圧に向かうがそこに立ちはだかるのはまた越後守であった。清正と越後守。二人の武士の道をめぐる心情の描写、人間ドラマが実に面白い。

  • 加藤清正の話を読んでみたく検索したらこれがについたので読んでみた。 
    確かに加藤清正は出てくる。主人公のライバル的存在として。 
    本作の主人公、岡本越後守が己のもののふの道を全うせんとどのような境遇に落ちても我を貫き通し、やがて周りを感化し巻き込んでいく。

    熱い!奇妙な偏屈野郎にみえる男が、戦となると鬼神のような戦いぶりを見せ、それに感化され周りがどんどん活気づき劣勢を挽回していく様が読んでてわくわくしてしまう。

    相手が誰であれ自分の信念を曲げず、その結果どんな酷い状況に陥ろうとも周囲の者を味方に引き込んでいってしまカリスマ性がすごい。

  • もののふについて、こだわった物語。展開は面白く、ぐいぐい読んでいった。もののふが何かと言うことについて、解釈がいろいろあるのかな。(イメージが違った)

  • 面白かった。
    加藤清正、朝鮮派兵がこのような形で描かれるとは思わなかった。
    たけも魅力を感じたし、もののふに最後までこだわった岡本越後の魅力も素晴らしい。岡本越後の行動が良いとわかっていても、できる人はいるだろうか?

  • どうして秀吉が朝鮮半島に攻め入るということをしたのか
    ということをこの本で趣旨としてはいないが

    しかし歴史的には加藤清正らがそこで戦をしたのである
    戦争は当然、残虐非道なのである

    秀吉の九州制覇から始まった、この物語の主人公「岡本越後守」(才蔵)」の
    男気・カリスマ性を軸にして非道の道を良くも悪くもまっしぐらの戦国時代もの

    秀吉もそうだが、一度手に入れた権力は死んでも手放したくないという
    我執の醜さがこの小説を読んで浮き彫りはっきりしたことだけは確か

  • 骨太な時代物を読みたかったので読んでみた。
    タイトルの通り、二人のもののふ莫迦の対比を中心に物語が進んでいく。一人は加藤清正。当然のごとく史実に実在した人物である。一方は岡田越後守という架空の武士。互いが信じるもののふの道のぶつかり合い、違う立場で反目し合いながらもわかり合っていく。戦乱の時代に翻弄されつつも強烈な個性を発した男たちの物語であり、濃いキャラクターが印象に残る。
    時代設定として、豊臣秀吉が勢力を拡大し、天下統一を果たすところから、二度に渡る朝鮮出兵が描かれる。特に朝鮮出兵の朝鮮半島での戦いをここまで詳しく描いたものは初めて読んだので、とても新鮮に読めた。とくに中盤から後半にかけては蔚山城の籠城戦が描かれているが、互いに凄惨を極める戦いで、読んでてとても痛々しい。
    この物語の語り部役として登場する粂吉という男も時代に翻弄されまくりで、気の毒になるほどだ。
    今の平和な時代に生きててよかったと思う。

  • 面白し

  • 出だしはなかなか話の展開もなく読み進むめるのに時間がかかったが、中盤からいっきに話が面白くなり、あっという間に読み終わってしまった

  • 圧巻だった。岡本越後守という流行り病に冒されてしまった者たち。その病は我々読者にも飛来する。これは単行本で本棚に収めておきたいな。もちろん熊本の書店で購入する予定だ。

  • 時代は戦国時代。豊臣政権下での猛将・加藤清正と、一人のこれまた屈強の男・岡本越後守との戦いのドラマだ。舞台は肥後国、そしてそこから秀吉の狂走である朝鮮討伐に巻き込まれて、舞台はさらに朝鮮に移る。

    本のタイトルの通り、ここに貫かれているテーマは、岡本越後守が自身の生き方の指標とした「もののふの道」だ。要するに、岡本越後守という男は、「莫迦」という代名詞に置き換えられるほど「もののふの道」にこだわり続け、死んでいく。「莫迦」と呼ばれるほどに信念を貫くところに、ある種の魅力が生まれるのだと思う。

    私が読む限り、この小説には他に3人の「莫迦」が登場する。加藤清正は、秀吉に忠誠をつくし続けることを信念とする豊臣莫迦、イクサ莫迦だ。

    もう一人は自身の優柔不断のため、越後守の敵になり味方になりながら、結局のところ心の底では越後守の生き方に生涯憧れ続ける粂吉。そして、想いとは反対に越後守と別々の人生を歩むことを余儀なくされる女・たけ。いかなる境遇に陥ろうと、男勝りの潔さで越後守を愛し続ける。

    歴史小説としては、豊臣秀吉の天下統一、朝鮮出兵が、いかにわがまま秀吉のアホな発想のもとに行われ、多くの犠牲を出した愚行であったかを再確認できると思う。

    そしてまたそういう風に、いつの時代も時の流れに翻弄されながら生きる一人一人が、その中でどう信念をもって生きるべきかを考えてみる契機とするのもよいかもしれないなと思います。

  • 歴史物や時代小説と言われる作品において所謂、痛快な戦物にあたる作品である。
    ただ主人公が信念としている事が「もののふ道」、日本の武士道であり、その極端さが作品の面白みになっている。
    ストーリー展開や構成も中々優れている作品だと思う。

  • 「本屋が選ぶ時代小説大賞」との帯に誘われ読んでみたらめちゃくちゃ面白かった。こんなに心踊る話は久々。どこまで史実に則っているのかな?

  • 豊臣に故郷・肥後を踏みにじられた軍人・岡本越後守と、豊臣に忠節を尽くす猛将・加藤清正が、朝鮮の戦場で激突する!「本屋が選ぶ時代小説大賞」受賞作。

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著者プロフィール

中路啓太
1968年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得の上、退学。2006年、「火ノ児の剣」で第1回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞、作家デビュー。2作目『裏切り涼山』で高い評価を受ける。綿密な取材と独自の解釈、そして骨太な作風から、正統派歴史時代小説の新しい担い手として注目を集めている。他の著書に『うつけの采配』『己惚れの記』『恥も外聞もなく売名す』など。

「2022年 『南洋のエレアル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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