世界の歴史 (28) 第二次世界大戦から米ソ対立へ

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124034288

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  • 中央公論新社『世界の歴史』シリーズの第28巻です。第二次世界大戦を出発点とし、米ソ対立からベトナム戦争を基軸に20世紀半ばの世界史をまとめています。
    この本を読了して、私は世界史の教員でありながら世界史的視野が足りない、とつくづく感じてしまいました。要するに、各国で起こった歴史的事象について、他国・他地域との関連もしくは前後の時間軸の中で捉えることができていないということです。以下、その具体例をいくつか。

    ・1941年のアメリカにおける武器貸与法の成立
    第一次世界大戦時の軍事物資の提供がおもに民間の融資によって行われたため、戦国巨額の戦債・賠償問題を発生させたため、国家資金によって提供することとで戦後の返済負担を軽減させるねらい。

    ・ヤルタ会談でスターリンがソ連の対日参戦を承諾した理由
    以前より強く求めていた「第二戦線」(いわゆる西部戦線)開設をテヘラン会談でアメリカ・イギリスが認め、ノルマンディー上陸作戦でそれが実行に移された代償。

    ・日本軍部がベトナム・カンボジア・ラオスのインドシナ三国に「独立」を認めた背景
    連合国との仲介役を期待していたソ連はこの地の宗主国であったフランスと同盟していたため、フランス植民地政権打倒がソ連との関係悪化を招きかねなかった。しかし「民族独立」ならばその懸念もぬぐえるだろうという目論見のため。

    ・ECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)成立の背景
    戦後ドイツの復興に警戒していたフランスは、ザール地方のドイツからの分離やルール地方の国際管理を主張してアメリカやイギリスと対立していた。さらにフランスがザール地方の経済支配を強めていったため西ドイツが反発、その対立を緩和するためにフランス外相シューマンが唱えたのがドイツ・フランスの石炭・鉄鋼の共同管理という提案であった。

    ・アジア情勢を見誤り、アメリカがベトナム戦争の泥沼へと突き進んだ一因
    マッカーシー旋風以降の「赤狩り」により、政府に批判的な意見を述べにくい雰囲気が生まれた。とくにアジア担当の外交官に与えた影響は深刻で、激動するアジア情勢をリアルに把握できる人物は放逐されるか、沈黙を余儀なくされた結果(おそらく彼らは中国や北朝鮮、北ベトナムと関係する機会が多かったからであろう)、アジア政策がきわめて硬直したものになったため。

    ・ベトナム民主共和国(北ベトナム)と旧宗主国フランスとの停戦協定=ジュネーヴ協定をアメリカが調印拒否をした理由
    アイゼンハウアー大統領は、朝鮮戦争が33,000人の犠牲を出しながら戦争前の状態に復帰しただけで終わった、また国内には反共のマッカーシー旋風が荒れ狂っていたため、アジアでの革命的民族運動には敵対的な態度をとるようになっていたおり、(ホー・チ・ミン勝利が確定的な)協定で決められた南北統一選挙は認められなかった。

    ・毛沢東の「大躍進」政策開始の背景
    アメリカなど資本主義諸国との平和共存を図るフルシチョフのソ連とモスクワで会談したが、中国の求める武装闘争と対立が明らかになり、ソ連に頼らないで短期間に中国を自立した社会主義大国へと押し上げるために「大躍進」を発動する。

    他にも参考となる点がいくつもあり、読み応えのある本でした。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授・一橋大学名誉教授

「2020年 『避けられた戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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