マイ・ロスト・シティ- (村上春樹翻訳ライブラリー f- 1)

  • 中央公論新社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124034981

作品紹介・あらすじ

優しさと、傲慢さと、抗いがたい自己破壊への欲望。一九二〇年代の寵児の魅力を余すところなく伝え、翻訳者・村上春樹の出発点ともなった作品集をライブラリーのために改訳。『哀しみの孔雀』のもうひとつのエンディング、「ニューヨーク・ポスト」紙のインタヴューを新収録。

感想・レビュー・書評

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  • 初めてのスコットフィッツジェラルド、初めての村上春樹翻訳本。
    うっすらと村上春樹節が出ていたり、出ていなかったり、、フィッツジェラルドの自伝的エッセイ。
    本人の、波のある人生を送ってきたからこそかけるような、どこか痛々しく、寂しく、虚しく、絶望的な情景。
    でも素敵だった。

  • 村上春樹が初めて翻訳した作品集の改訳版。5つの短篇と表題作(自伝的エッセイ)、及び春樹によるフィッツジェラルドへのオマージュからなる。いずれもアメリカ文学を読む楽しみに満ちている。例えば、南北の違いに想を得た「氷の宮殿」を読むと、あらためてアメリカの広大さと、地域によって背負っている歴史の違いを感じる。また、フィッツジェラルド自身の浮沈を投影したかに思われる「哀しみの孔雀」も2通りの結末が紹介されていて、興味深い。もちろん、作品としての良さは「ハッピーエンド版」は、オリジナル版に遠く及ばないのだが。

  • フィッツジェラルド
    絶望文学の寵児

    哀しみの孔雀は読んでいて辛かった
    ハッピーエンド版があってよかった。。。

    1920年代、束の間の狂乱
    行ってみたいな〜

  • 2回目読了。名作。時の洗礼。特に残り火。

  • ①文体★★★★★
    ②読後余韻★★★★★

  • 残り火、哀しみの孔雀が好きです。

    インタビューの『30を過ぎたら、人は生きているべきじゃないよね』という言葉、29歳のとき全く同じことを思っていたのでどうにもこの発言が頭に焼き付いてしまった。

  • ブックオフできれいなものを見つけて購入した。表紙の写真が素敵だった。
    村上春樹さんの思い入れがよく伝わってくるエッセイから始まる。
    その他は小説の短編と、フィッツジェラルドのインタビューが含まれている。
    エッセイ「フィッツジェラルド体験」では、例えばヘミングウェイに比較すると、フィッツジェラルドは、端的に言えば、その域まで達することはなかった、と言っているように読んだ。
    何となくその言わんとするところが分かるような気もするが、どちらの作家も詳しく比較して考えてみたことがなかったので、はっきりと言葉にできない。
    ただ、この作品集の短編を読んでいて、村上春樹さんが「intimateで個人的な世界」と言っているように、確かに、色々な意味でこれらの作品世界は「個人的な」ものなのかもしれないと思った。
    ひとつには、これらの短編はどれもフィッツジェラルド自身の生涯の各場面を反映していると思われたこと。私小説的というのだろうか。作者自身、仕事がうまくいかず、酒におぼれ、家族も病を得た。ただこの点じたいは、作品の評価にマイナスにはならないとは思える。むしろ、初期のまだ成功していたころでさえ、後世の絶望を予感させるような作品を書いていることを興味深いと思った。
    これ以上幸せにはなれない、と思う心理が、ずっとつきまとっていたのだろうか。
    また、これらの作品は、アルコール依存であったり、事業の失敗だったり、とても生活臭のある、物質的な困窮からの悲劇になっていて、何か新しい価値観などにかかわるものというより、現実生活から想像できることのきれいな切り取り、のような印象もある。
    ただもちろん、短編小説として、例えば「哀しみの孔雀」など、うまくまとめられた物語ではあると思った。
    もう少し米国の歴史、もしくは文学史などを背景にして読めれば、また詳しい魅力がわかるのかもしれない。

  • 人生の苦しい部分を切り取ったような物語ばかりなのだけど、読後はなんとなく優しい気持ちになる。苦しいことも辛いこともあるけれど、優しく生きていける場所がどこかに残っているはず。

  • フィッツジェラルドの素晴らしい短編を読むと「他に読むべき小説があるのだろうか…」と思わされてしまうくらい。べっとりとした自意識過剰や、自分と世界の不調和を声高に宣言しなくても、人生を描くことはもちろんできる。爽やかな風が吹き抜けながらも、どこまでも破局の予感に満ちていて、その落差が大きいほど効いてくるという構造。女性看護師が『風と共に去りぬ』を読んでいた。

  • 例えばヘミングウェイのあの畳みかけてくるようなクリスプ(張りのある)な文体に比べると 新聞のコラムに派手な話題を提供する謂わばコンヴェンショナル(月並み)な流行作家というのが彼の置かれた位置だった 極めてインティメート(親密)で個人的な世界である そして見事に人の辿る滅びの道を描き切った作家はアメリカには他に類を見ない 彷徨ほうこう 放埒な生活 おやこ父娘 その比類なき美しさは見紛うべくもない 恐らく夭折し こわね声音 虹彩こうさい そうごう相好を崩して がんしょく顔色無いほど てんよ天与の美味 こうえん香煙 看過 聖域侵犯 恢復の見込み 抗い難い必要に駆られたらしく 巨大な脆い鱗となった う呻めき 無意識の衣におお掩われている 睦み合っていたあの過ぎ去りし日々 遅蒔きの野菜 潤い 鎧戸 小径 酒壜さかびん 一九二〇年のあの不安気な空気はしかと確として金色に光り輝く絶え間のない歓声の中に没し去り 廃墟の空にはエンパイア・ステート・ビルがぽつんと 私はニューヨークという都市の致命的な誤謬、そのパンドラの箱を眼の当たりにしたのである。 リンカーン暗殺の後で絞首刑に処せられた そしてミネソタ州セントポールの町で籐とう家具の工場を始めた さけい左傾

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