嗤う伊右衛門 (C・Novels BIBLIOTHEQUE 73-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784125006031

感想・レビュー・書評

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  • まずは広く知られている四谷怪談と違う設定で話が書かれている所が興味深い。興味深いに留まらず、それぞれの章がそれぞれの登場人物を中心に描かれていて、皆が説得力のある魅力的な人物像を与えられている。そしてお岩様の強さと来たらすごい。しかしこの大悪党(読んだ人は誰の事か分かりますね)の極悪さと来たら、もうたまりません。私が一番好きだったのは又市かな。久しぶりに京極先生の文体を読み、その文体をしっかりと堪能させて頂きました。

    さいごに。「蛇は陰気を好むもの。鼠もまた然り。陽光の下には居らりゃァしやせん」、そういう事なのか・・・?

    • hypnosisさん
      imuzak12様こんにちは(≧▽≦)
      いつもコメントありがとうございます。私も京極作品しばらく休眠中…。
      巷説百物語シリーズってどうです...
      imuzak12様こんにちは(≧▽≦)
      いつもコメントありがとうございます。私も京極作品しばらく休眠中…。
      巷説百物語シリーズってどうですかね!?『鵺の碑』が出る前に全作読み切れるかなぁ…
      (あながち出来そうだからコワい)
      2013/09/03
    • imuzak12さん
      こんにちは、hypnosisさん♪ 『鵺の碑』というと、出る出ると言って久しくまだ出ていないという噂の御本ですか?(お化けみたいだ・笑) 百...
      こんにちは、hypnosisさん♪ 『鵺の碑』というと、出る出ると言って久しくまだ出ていないという噂の御本ですか?(お化けみたいだ・笑) 百鬼夜行が憑き物落としなのに対して、巷説百物語シリーズは逆に憑き物付けちゃうのかな?読んでないけれど、なかなか面白いみたいですよ。私は狸が読みたいです。
      2013/09/04
    • hypnosisさん
      あら???勝手な思い込みで既に全部読まれていらっしゃるのかとσ(^_^;)
      今まで本をあまり読んでこなかったので、リアル本棚が手狭で悲鳴状...
      あら???勝手な思い込みで既に全部読まれていらっしゃるのかとσ(^_^;)
      今まで本をあまり読んでこなかったので、リアル本棚が手狭で悲鳴状態です…
      京極本専用スペースを拡張せねば!!ご回答ありがとうございます♡
      2013/09/04
  • 鶴屋南北・小山内薫に続いて京極版お岩さん。
    四谷怪談の筋もうろ覚えのまま「嗤う伊右衛門」として読んだときにも十分面白かったけれど、これはパロディとして読んだほうが断然面白い。
    巷説に寄せながらエンターテイメントの面白い部分も使って、エピソードもキャラクターもいったんバラしてから役を振り直して京極夏彦の小説に構成し直してある。

    筋は身も蓋もなく言ってしまえば、男たちがこの女は俺のもんだと言ってる話。
    だから筋だけ説明しても意味がないんだ。全部読まないと良さはわからない。
    女たちは力がなくて敗れるけれど、思い通りにはなってやらない。
    コミュニケーションがどこもかしこも断絶していて、「嘘も方便」は間違った運用をなされる。

    私は今の人だから、今の人向けに書かれたこの本のなかの「家意識」や「妻女の役割」が肯定的なものとして書かれたわけではないと理解できる。
    しかしその意識を持った登場人物たちを愚かに書くわけではない(時代の中では当然の思考として描かれる)から、これはこれで筋が通っている。
    こういうのを今を知らない百年後の人が読んだら、私が小山内薫の「お岩」に抱いたのと同じような違和感を持つのかもしれない。
    と、思ったら「お岩」を読み違えたような気がしてきた。面白いなー。

    歌舞伎の四谷怪談は上演の日程に合わせて一日目と二日目、忠臣蔵と四谷怪談が対になるように造られた部分が多くあったらしい。
    この本もそのように、少しずつ重ねてずらしたエピソードがたくさんある。
    皮剥ぎ・守袋・蛇・鼠・「首が飛んでも」など、気づいてみればうまいなーと思う。
    あげられている参考文献を全部読んだらさらに面白いんだろうな。

    「お岩」は岩の父の暗くなった視界から始まる。
    「嗤う」は蚊帳のぼやけた視界を厭う伊右衛門から始まる。
    比べて読むと面白い。


    表紙が美しくない。読むだけならいいけど手元に置くなら単行本のほうがいい。
    解説は高田衛。文献をあげてくれるのはいいけど散漫でこの解説は蛇足かもと思いながら読み進めたら、「驚愕の京極である」で一気に脱力した。
    なんかこの人好きだ。

  •  『京極ワールド』として再構築された四谷怪談。
     澱んだ醜悪さと、清廉な純粋さが、混沌と渦巻く世界観。
     そして、於岩の示す、醜さと美しさの並立。
     小股潜りが繰り出す弁舌の流暢さに衝かれた時点で、自分も術中に陥っている。
     伊右衛門と於岩、二人の純愛の昇華は、確かに幸福の一形態ではあるのだろう。

  • <warau Iemon>
      

  • 泉鏡花なんたら賞を取ったとかどうとか。うん、確かに、変態だし。冷静になって見てみると、二人とも頭おかCのである。冷静に考えれば、基地外なのである。なんだけども、なんだろうか、このムードというか、ちょっと古典っぽく書かれてる感じとかで、いつの間にか、なんとなくそれっぽい雰囲気がしてきて、騙されてしまう。いや、もちろん変態なのが悪いわけではなくて、それはまぁ良いんだけど、ついでにツンデレっていうか、しかも行き過ぎって言うか、お岩さんの発狂っぷりも半端ないし、恐らくはそれを受け止めたであろう伊右衛門の変態っぷりも半端ないし、もう後半の突っ走りっぷりはもう止まらない。まさにノンストップジェットコースタームービーっていうか、そういうの昔あったような、ぞくぞくして楽しめたのでした。

  • 伊東さえいなければ、伊右衛門とお岩は幸せに暮らせたのかなぁ。それにしても純愛だねぇ。蛇とねずみがどっから湧いたのかがよくわからないけど。何かの象徴だったのかなあ。

  • 読んでいて、胸が詰まりそうになるほど
    切ない。けれど、読み終われば、爽快感と、暖かいものが残った。
    人に左右されず、常に凛とした姿のお岩さんは、本当に美しく感じた。

    時代物なので、私には難しい単語や、漢字が多く、読み進めるのに多少苦労しましたが、
    それでも面白かったです。

  • 闇や蚊帳に映る陰の描写が暗くてよい。登場人物各々の生い立ちや歪み、狂いぶりも細かく描かれてどんどん読めた。哀しい話だ。映像もみたいな。

  • 最初は、ん?ん?この細切れに出てくる人と筋は覚えておかないといけないのかな。これ本筋にまだ入ってないんだよね、って感じ。
    半分過ぎた頃、気づけばお岩さんと伊右衛門を全力で応援してました。
    いつもながらこの作家さんの話は本筋に入るまでがちょっと辛い。
    入っちゃえばもう先が気になって気になって仕方なくなって、前半の倍くらいのスピードで読めてしまうのがすごい。
    人物描写も濃くてのめりこめる。
    しかしこれはミステリー・・・?
    なんにしても良かった。読んで良かった。

  • 怪談が恋愛小説に。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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