- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130033527
作品紹介・あらすじ
平和と共生の未来へ。国際社会の新たな理念に向き合い叡知を結集-東京大学の挑戦。
感想・レビュー・書評
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中西:深化するコミュニティ、田原:つながりからまとまりへ
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2013.7記。
大学時代のゼミの活動で、マニラのスラム街にホームステイしたことがある。指導教官は中西徹先生という方で、「スラムの経済学」という本でその方面では有名な方なのだが、日本語よりはタガログ語のほうがむしろ流暢、といった風情で、我々が学生だったときは先生もまだ30代、とにかく飛行機でフィリピンに連れて行ってしまうような雰囲気だった。
本書に先生が寄稿している文章を読むと、社会のセイフティネットとして、共同体の存在を非常に重視する姿勢にまず非常に感銘を受ける。我々は、漠然と「共同体」と言えば古き良き農村にあるものであって、都市部ではそれが希薄化していると思いがちだ。が、てんでバラバラの地方から寄り集まってきた人々によって自然形成されたスラムでも、日々の取り決め、婚姻、助け合いなどを通じて「自分の街」への帰属意識が芽生える。そして、そこにはちゃんとリーダーも生まれる。
サント・ニーニョというそのスラムに滞在したとき、住民の世話役、というソーシャルワーカーのおばちゃんを紹介された。皆に慕われていて本当に魅力的な方だったのだが、自分もスラム育ちで今も住んでいる、という人なのだ。スラム街でくらしのサポートをボランティアで行っている、というだけで漠然と援助機関かNGOの人だとなんとなく思い込んでいた当時の自分を恥ずかしく思い出す。
中西先生は、外からの「手助け」がより優れているという予断を排し、自発的なコミュニティの仕組みを正当に評価しようと試みている。
こうした取り組みがどれほど面白く意義深いものなのか、おぼろげながら理解したのは宮本常一の民俗学の著作等に触れてからだし、さらに言えば、組織(一種の共同体)で仕事をするようになってからだ。うーん。先生すんません、当時はわかってなかったです。色々読まされた文献とか、もっとちゃんと勉強しとけばよかったなー。 -
人間の安全保障にとって一番重要なのは、恐怖と欠乏、そして貧困からの克服である。
今後重要なのは、カーストで差別されている人々、女性だという理由だけで差別されている人々がいなくなること。彼らへの啓蒙活動を行うことが重要だろう。 -
どんな人でも人間の安全保障を考えることができる、という序文が印象的。