- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130120326
作品紹介・あらすじ
人間もまた進化の産物であるという視点に立つと、人間の行動や心理はどのように捉えなおすことができるだろうか。本書では、最新の進化生物学の知識をもとに、人間の行動や心理を解明するための一つのアプローチを概説する。
感想・レビュー・書評
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カッコウの例は、「格好」の例と言えるでしょう.
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では、配偶者防衛に端を発する、女性の行動のコントロールをしようとする傾向は、進化によって形成された男性の心理なのでしょうか? それは、わかりません。このような資源の独占と富の蓄積、男性間の繁殖の不平等がヒトの配偶システムを特徴づけるものとなったのは、少なくとも農耕と牧畜の発明以降であり、せいぜいここ1万年のことです。この1万年の間に、権力欲や配偶者防衛欲がどれほどであるかに関して、男性間につねに強い淘汰が働き、男性の脳の構造やホルモンの分泌のパターンが、権力欲や配偶者防衛欲に優れるように変わってしまっていたなら、遺伝的基盤のある心理と言えます。
しかし、「女性は多数の男性と性関係を持ちたがらない」という通念と同様に、家父長制的文化のもとで作り上げられているものにすぎないかもしれません。権力欲が強く、男性どうしで連合を組み、女性の行動をコントロールする男性が成功するという社会が長く続けば、男性は、毎世代、学習によってそのようなジェンダー・イデオロギーを身に着けるかもしれませんが、それが遺伝的な変化までは引き起こしていないかもしれません。いまのところ、これはどちらとも言えないでしょう。 -
「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」関連本。
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適応行動論(履修してない)の教科書。人生トップレベルに面白かった本かもしれない。トンデモ理論や似非科学に惑わされない進化の捉え方を教えてくれる。メインとしては人間の知性も行動もまた進化の産物であるという視点に立って人間を説明していくパート。わかっていることもわかっていないこともあって面白い。また、人間研究は数多くの学術分野に関連して成り立っているんだなあと深く感じた。生物学と文化人類学・社会科学の対立が描かれたりもしてた。以下関連する分野を自分の思うままに挙げる。包含関係はあるけど面倒なので描かない。生物学、進化学、遺伝学、動物行動学、生態学、分子生物学、脳科学、心理学、認知科学はもちろん、文化人類学、社会科学、社会心理学、行動経済学、メディア論や言語学まで色々。教養という感じ。
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サイエンス
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2625円購入2002-00-00
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これも古いけどよい教科書だな。社会生物学(論争)についてのパーソナルな視点からのコメントも多数あって参考になる。
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人間行動の基盤に進化論が示唆する遺伝子的要素があるとは。行き過ぎた文化至上主義に対して、認識を改めてくれる。学術書であるため、気軽に読める本ではないが、噛みしめながら読み進めることで得られるものは多い。特に性差に関して。
・文化には何でもあるというミードの研究は信頼性が低かった。
・「種」の保存の曖昧さ
・日本の家族のきょうだいと同じくらい、キブツの子ども同士はなじみが深くなる。近親婚回避の進化メカニズムから、キブツ出身者同士の結婚率は低い。
・継子は実子に比べて、子殺しに合う危険性が最大40倍も高い。
・一般に男性の免疫系は女性のそれより低い。男性ホルモンのテストステロンが免疫を阻害するから。
・長子は他の順位の者より年代にして70年分、新理論の受容に保守的だった。現代の政治思想に対してもそうだ。※これは女性よりも男性の方がさらに顕著だろうな。
・好き嫌いの感情は、互恵的なシステムが出現した後に、そのシステムを調整する上で重要な方法として進化した。
・性淘汰の強さを決めるものは、親の投資(子育ての労力)と潜在的繁殖速度。
・配偶者防衛
・一夫多妻の傾向が強いほど、雄同士の争いが激しくなり、身体が雌に比べて大きくなる。
・ヒトにおいて、ある程度の精子間競争が存在していた。
・極端な形の一夫多妻制は、農業や牧畜の発明後、富の蓄積と分配の不平等が生じるようになったとに出てきたもので、ここ1万年の間の現象だと推測される。
・生涯繁殖成功度の最大数は男性の方が大きく、ばらつきも大きく、生涯に一人も子を持たない確率は男性の方が高い。
・進化心理学的にいえば、そもそもなぜ男性が権力を得たがるかの進化的理由は、それが繁殖成功度の増大に寄与したから。
・少子化は人間行動生態学の大きな謎。
・初潮年齢が低いほど、生涯出産数が増える。処女の高い評価は父性の確実性と関係。
・自己主張しない女性がよいのも、男性から見た配偶者防衛の一つ。
・いずれの国でも、男性は女性よりも性的関係に対して(父性の確実性)、女性は男性よりも心変わりに対して(親の投資)、強い苦悩を感じる。
・生物の進化の歴史を考慮し、それぞれの生物がどんな問題解決をせねば生存して繁殖することができなかったかを考えれば、学習のメカニズムには異なるものがあり、それが行動ごとに、そして生物ごとに異なるのは当然。
・言語には音声コミュニケーションという側面と、世界の認知という側面の二つがある。