- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130120616
作品紹介・あらすじ
神々の物語から諸哲学まで、この思想の全体像を描く。ホメロス、悲劇詩人、ソフィスト、ストア学派…。現代文明の基盤の一つとなった、古代ギリシア人の思想の特質をたどる決定版。
感想・レビュー・書評
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岩田靖夫 「ギリシア思想入門」
ソクラテス、プラトンだけでなく、エピクロス、ストア哲学、ホメロス、ギリシア悲劇まで 体系に組み込んだギリシア精神史の本
ギリシア思想の面白さは 民主思想と理性主義という構造が一貫しており、幸福論につながっている点にある。内省的であるが 陰鬱
的ではない 明るさがある。
ロゴス、アレテー、イデアなど 日本語にすると 定義が広がる言葉が、ギリシア思想の適用範囲の広さになっている気がする
アリストテレスの共同体
*人間であるとは ポリス的(共同的)であり、法により生きること
*法=共同体の正義の実現を目指す→共同体は自由で平等な人間の間のみ成立する、自由と平等を可能にするのが法
*人間はロゴスを持つ動物。ロゴス=人と人の語り合い、交流
カロス=美しい、驚き
アレテー=徳
ホメロス「オデュッセウス」
*怖いもの、危ないものの正体を見ようとする好奇心
*人生=酒、歌、踊り、競争
*オデュッセウス=生き延びて幸福を勝ち取ろうとする自己実現
プラトン
*イデア=認識、言語、法則、価値の原理
*霊魂不滅=生きているものには霊魂かあり、霊魂のないものは死んでいる→魂は生の原理であり、それ自体が不死
*正義=弱者の自己防衛〜不正を働きながら罰を受けない最善と 不正な仕打ちを受けても仕返ししない最悪の中間的な妥協
*人間は イデアを 認識、模倣し、イデアと一体化するために 生きている
エピクロス
*人生の目的=幸福。幸福=快楽=肉体の健康、魂の平安
*幸福に達する道=神々を恐れない、死を恐れない、快楽の限界
を知る、苦痛の限界を知る
*死=無→死はどこにも存在しない→我々が存在しているときは死は存在せず、死が存在するときは 我々が存在しない
ストア哲学
*幸福の条件=自然に従って生きる、有徳であること
*善と知の同一、非倫理的な善への無関心
*宇宙全体=自然=神=理性(ロゴス)→あらゆる価値の源泉
*哲学=人間の魂の配慮
*不幸や災難は 宇宙(ゼウス)の繁栄→歓迎の精神で受容せよ
*善=宇宙全体の秩序に調和して生きる
ストア派の倫理
*1.善いもの(徳) 2.どうでもよいこと(生死、名声、富、健康) 3.悪いもの(臆病、不正、無知)
*2は 1の行為と矛盾しないかぎり 求めてもよい。3の行為と結びつく場合 棄てるべき
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もしも万物が常に動いているならば、答というものは、なにについて答えるにしても、すべて同様に正しいことになる。(……)万物流動説はあらゆる言説、あらゆる認識を不可能にしてしまう思想なのである。
それ故、およそ認識が、あるいは、言語による意思の疎通が成立しうるためには、なにか留まっているものがなければならない。 p162