日本政治思想史: 十七~十九世紀

著者 :
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130331005

作品紹介・あらすじ

「御威光」の支配から文明開化まで-何が起きたのか。江戸から明治半ばの日本へと遡航し、政治をめぐる思想を斬新な視点で描き出す。歴史を知る楽しみに満ちた、刺激的なタイム・トリップ。

感想・レビュー・書評

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  • 戦国以降の江戸・明治の統治はいかにして可能であったか。儒学の影響を意識しながら17-19世紀の政治思想をときほぐす。著者の政治に対する問いの姿勢に感銘。

  • 幕府(公儀)の正当性が江戸時代の政治思想においてどのように定義づけられ、それが変遷したのか、と言う視点が興味深かった。意外と読みやすく、いろいろな政治思想家の考え方をたどることができる。

  • 「多種多様な人が、不思議にもこの世に生を受け、そのつかの間の生涯において、思い、感じ、行ってきたこと-それらを知り、理解することは、これまで多くの人にとって深い喜びであった。これからもそうであろう。本書では、その歓びを分かち合うことを目指したい」。こんなにも本質をつき平易な言葉で始まる本書。

    革命という形をとらずにわずか十数年で200年以上の安定していた江戸幕府が崩壊しドラスティックに体制が変更された明治維新。その理由について、本書は、儒学・朱子学をふまえての思想的展開を中心に、江戸幕府の御威光、禁裏、百姓と強訴、西欧人観、イエと性など縦横無尽に論じつつ、下級武士達の積極的自律的内部崩壊であったと、地にどっしり足をつけた論考で、鮮やかに描き出す。

    極めて刺激に満ちて、志高い書物である(Amazonでも大絶賛である)。久しぶりに、頭の筋肉の奥を動かさざるを得なかった気がする。個人的なことにはなるが、思想・哲学・歴史などに(ちょっとだけれども)青臭く背伸びをして関心を持っていた学生時代の自分を思い出し、心がザワザワした。骨のある本を読まなければ、きちんと物を考えて生きていかなければ、と改めて思った。

  • 本書は古代中国の思想から説明を起こし、その天命思想がいかに徳川時代を内部から食い破ったのかを説明する。
    個人的な感覚だが、近世の寺子屋のテキストといえば論語を含む古代中国の儒教書をイメージするが、中世には儒教的なイメージがあまりない。少なくとも儒者でビックネームは思い付かないし、むしろ風林火山など孫子など兵法書の方が人気があったのかなと思う。
    近世と中世では社会状況が異なるため、時代に求められる教育の質や程度が異なるのだろうが、江戸期になり羅山や仁斎をはじめとして儒学が隆盛したのは事実だ。このことは蘭学の導入や文明開化を待たずして既に積極的な海外文化の取り込み、海外文化の日本化が行われたことを意味するのだと思う。

  • 政治思想史というジャンルではあるがかなり多岐にわたる当時の文化経由での政治を紹介した本。
    武士の思想や町人、官吏、商人などの思想を時代ごとに紹介し、さらには海外の文化思想、海外から見た日本、男女の文化などをさらりと紹介。
    序盤のいわゆる武士について、脚色されたテレビなどの媒体経由で表面的な彼らの文化ではなく、その実態と思想のようなものが紹介されている。これは読み応えがあった。
    また性の意識などを始め、その性にまつわる封建社会の仕組みなどが読み取れ単純に面白かった。

  • 江戸時代の政治思想を概説。教科書に出てくる思想家の思想から、幕府の統治を正当化する、あるいは否定する政治思想まで。
    面白いのは後者。どうして江戸時代は260年間も続いたのか。とりわけ、島原の乱以降大きな反乱もなく幕末の混乱期の前まで「天下泰平」が続いたのか。それを統治イデオロギーの点から考える。そして、そのイデオロギーに開国はどう影響を与えたのか。討幕のイデオロギーは佐幕のイデオロギーとどうつながっているのか。明治時代の文明開化は江戸時代にどのように準備されたか。
    維新も文明開化も突然降ってきたものではない。近代に比べると退屈にも思われがちな江戸時代のダイナミズムを見直す、刺激的な一冊。

  • すごい本。17世紀から19世紀までの、日本における「政治思想」を慨覧。「国」や「世界」、「日本」ということばに集約された思想を縦横無尽に駆け巡る、といった風情である。

    印象的なのは「政治思想」であるが16章に「「性」の不思議」と題されたパートがあること。もちろん「性」の問題がきわめて政治的であることは少し勉強すればわかることなので意外といってはいけないのだが、新鮮味を覚える章である。

  • 佐賀県立図書館で読む。

  • おもしろい。
    以降これを読まずに江戸も幕末も語れないだろう。
     
    情報量が非常に多く、数多の価値観が均等に並べられているように見えて
    実際は深く交錯しているように感じる。消化しきるのがとても大変。
     
    今は全体の1/3くらいを一旦反芻している状態という感覚。

  • 江戸時代から明治の開国までの大衆思想史.タイトルの“政治”は,幕府だけでなく,大衆へ影響を与えた儒者の政治思想も含まれている広義の意味での政治.大陸からやってきた儒教を,泰平の世となった江戸時代においてどのように解釈し,大衆に広まっていったか,当時刊行された教書を史料として解説していく.“日本国”というアイデンティティの確立や,徳川幕府という御威光の存在,京の禁裏の立場といった時代背景に留まらず,泰平の世に武士がどのようなアイデンティティを確立しようとしていたか,といった大衆思想も詳しく読み解いていた印象を持った.特に,幕末の攘夷論は西洋の帝国主義の否定ではなく,弱まる御威光に対する反乱である,とする解説が面白かった.
    江戸や明治の時代小説をさらに面白くする良書.

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著者プロフィール

渡辺 浩(わたなべ・ひろし):1946年、横浜生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学法学部教授、法政大学法学部教授を歴任。現在、東京大学名誉教授、法政大学名誉教授、日本学士院会員。専門は日本政治思想史。著書『近世日本社会と宋学』(東京大学出版会、1985年、増補新装版2010年)、『東アジアの王権と思想』(東京大学出版会、1997年、増補新装版2016年)、『日本政治思想史 十七~十九世紀』(東京大学出版会、2010年)、『明治革命・性・文明――政治思想史の冒険』(東京大学出版会、2021年)など。

「2024年 『日本思想史と現在』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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