- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130626095
作品紹介・あらすじ
歴史的な発展を追って理論を組み立てていく類書と異なり、美しく再構成した理論を提示。相加変数を基本的な変数にとることにより、温度を基本的な変数にして議論をする類書とは異なり、相転移があっても破綻しない堅固な論理構成。単純系だけでなく複合系にも適用できる一般的な原理を提示。さまざまな熱力学関数を結びつけているルジャンドル変換を、1章を割いて詳しく解説。既習者の多くが苦手とする一次相転移もきちんと解説。
感想・レビュー・書評
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“『なんだ、熱力学というのは、人間が無知だった時代の経験則か』と思ってしまう人もいるだろう。確かに、熱力学の成立の経緯はそれに近いかもしれないが、現代的な物理学の視点から熱力学の体系を見直してみると、まことに驚くべき理論体系であることに気付く。(p.4)”
熱力学の教科書として定番の一冊だが、熱力学を公理論的に構成していく珍しいアプローチで書かれている。また筆者の分類によれば、必要ならばミクロ系の物理学の知識を用い、示量変数のみを基本変数とする、というスタンスに立った本でもある。
導入する公理は、大まかに言って
(1)孤立系はいつか平衡状態に移行する。
(2)平衡状態と一対一に対応したエントロピーという物理量が定義でき、その値は局所平衡エントロピーを(与えられた条件の下で)最大化したものである。
の2つである。このような構成の仕方の利点はいくつかあるだろうが、主なものは以下の3点だと思う:
(a)熱力学特有の物理量であるエントロピーを導入することにより、少数個の変数のみでマクロ系の状態を記述出来るという、エントロピーの重要性が強調されていること。
(b)熱を自由にやりとり可能な二つの系の温度が一致するという(直観的には自明な)ことの意味が、エントロピー最大の原理(実現される平衡状態で偏導関数がゼロ)から明確に説明されること。
(c)熱力学第二法則が、内部束縛を除くことによる状態空間の拡大が状態空間上の関数の最大値を増加させるという数学的な一般事項の応用として説明されること。
1回生の頃に熱力学を学んだ時は、確かに一つ一つの計算は出来るようになったものの、色々な物理量が登場してきてしかもそれらがお互いに絡み合っているために、何が本質なのかがよく分かっていなかった。今回3回生になって本書を勉強したわけだが、この「何が本質なのか」ということが上記の公理(1)(2)としてまとめられていて、一段高い位置から熱力学を理解できたように思う。
1 熱力学の紹介と下準備
2 「要請」を理解するための事項
3 熱力学の基本的要請
4 エントロピーの性質
5 示強変数
6 仕事と熱 簡単な例
7 準静的過程における一般の仕事と熱
8 2つの系の間の平衡
9 エントロピー増大則
10 熱と仕事の変換
11 ルジャンドル変換
12 他の表示への変換
13 大きな系・小さな系
14 熱力学的安定性
15 相転移
16 統計力学・場の量子論などとの関係
付録A 熱力学に便利な偏微分の公式
付録B 二次形式
付録C 問題解答詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ルジャンドル変換が何者なのか議論を通じてよくわかったのが収穫だった。
個人的にすごく好きなのは相転移についての議論の章。表示を取り換えたときの特異性の議論がしっかりされていて面白い。鍵になるルジャンドル変換についてしっかり議論されているので数学にも疑問が残らない。あと熱力学的にモデルに要請される条件の話も興味深かった。具体的には自由エネルギーの凸性。メキシカンハット型とかワインボトルの底とか言われる有効ポテンシャルがあるが、あれは条件付きでしか正しくないそうだ。
結局、自由エネルギーの凸性(とルジャンドル変換)が何を意味するかという話である。勉強不足と感じた。 -
現在、最もテンションを上げて読んでいる本です。
まだ読破には至っていませんが、これまでバラバラだった熱力学の知識が、一本の線になっていく感覚が沸きます。
読む前には熱力学の偉大さが全く分かっていませんでしたが、今では熱力学って凄い!と思えるようになってきました。
(アインシュタインは相対性理論を作るとき、熱力学だけが普遍的な理論だと信じて
作り上げたのそうです。)
とにかく、何が公理で何が定理かを明確にしている点がすばらしいです。
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(5年 機械システム工学科)
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https://libopac3-c.nagaokaut.ac.jp/opac/opac_details/?kscode=004&amode=11&bibid=1014145733 -
3192円購入2010-01-21
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7月新着