T_ADS TEXTS 02 もがく建築家、理論を考える

制作 : 東京大学建築学専攻 Advanced Design Studies 
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130638517

作品紹介・あらすじ

ふたつの東京オリンピックのはざまで,時代の大きなうねりのなか形作られた現代日本建築の多様性を「理論」「技術」「都市」「人間」という四相から見直すシリーズの第1弾,「理論編」.日本を代表する建築家自身による作品解説とインタビューによる現代日本建築入門.

感想・レビュー・書評

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  • 第1世代は丹下健三や前川國男、坂倉準三、吉阪隆正
    1940〜1950
    原爆という問題に、広島の平和記念公園で、経済と平和の軸。
    モダニズム建築(コンクリートと鉄でできた工業化社会の建築様式)
    形態は機能に従う。
    日本の伝統とモダニズム。

    ミケランジェロは、神の世界から、人間の世界に変わる時代に
    その間の矛盾を乗り越える理論。
    ルコルビュジェは、西洋の市民社会が、工業化を進めて大衆社会に変わる時代。
    丹下健三は、ルコルビュジェと同じ近代の転換を行った。
    →建築の革命を起こした。

    第2世代は、槇文彦、菊竹清訓、磯崎新、黒川紀章。
    1930年代に生まれた人
    高度経済成長期。
    丹下健三から学びながら、どうやって個性を出して行くのか?

    磯崎新は、身体が感知する空間は、必ずしも身体に優しい空間ではない。
    人は空間に優しく包まれるというより、空間に引き込まれている。
    立体フレーム。空間認識。形のデザインから、空間のデザインへ。
    ものの存在感を、空間に溶け込ませる。
    日本の伝統建築には、木割りがあり、木造のプロポーションシステムがある。
    西洋では、黄金分割。ルコルビュジェはモデュロールの理論に。
    丹下は、ルコルビュジェに日本の木割りをはめ込んだ丹下モデュロールを使う。
    香山壽夫は、空間の有効性を認めつつ、空間は危ないと注意を促す。

    槇文彦は、インターナルな理論、建築の内部的な理論の模索。

    原広司、香山壽夫は、第2.5世代
    反抗や自己主張ではなく、普遍的な質や理論を建築に求める。
    日本でも、建築がアカデミズムに組み入れられる。
    構造的な機能と空間的な機能。
    表と裏が重なり合う道。
    モダニズムの機能決定論を逃れる。
    丹下健三は、建築を具体的に語ることが困難な時代にいきた。
    形態の言語としての建築とイデオロギーとしての建築。
    建築を日常的な言葉で議論する。空間は抽象的な概念。
    抽象的な概念と具体的な共通性。

    第3世代 安藤忠雄、伊東豊雄、藤森照信、大野秀敏。
    1940年代に生まれた人
    豊かになった1970年代から活動を始める。
    グローバリズムに巻き込まれる。
    低成長時代に入った。モダニズム批判が巻き起こった時代。
    工業化は、人間を幸せにするのか?
    一人一人が野武士のように、小さな革命の言葉、エクスターナルナ理論の模索。

    藤森照信は、建築の中に、原型を志向する。
    古典主義よりも前の建築の始原に遡ろうとする。
    建物に植物を取り込む実験。草屋根。
    神様が作った自然と人間の作る建築の間に接点を見つける。
    原始的な要素と現代的な要素。
    存在しない記号を使う。
    西洋は、建築を言語化するが、日本は言語化できていない伝統がある。
    モダニズムの延長としてのメタボリズム。
    丹下健三の創造力の秘密は、関心の広さと芯まで届く深さ。

    大野秀敏は、槇文彦が師匠。
    槇文彦の理論を正当に受け継ぎ、都市をおもしろくするためには
    つながりの理論がいるとしている。
    モダニズムの直系。透明感のあるデザインを特徴とする。
    現代的な社会問題を背景とした都市デザイン。
    場所が人間にとって本質であるから、動くことは、人間が生きることの基本。
    人間の動きを都市の連続性で考える。
    槇文彦の見えがくれする都市から、ファイバーシティという理論。
    線的な要素 道、壁、並木と周りの世界の関係を調整する。
    政府主導から、民間主導への大きな変化。

    第4世代 隈研吾、妹島和世、坂茂
    1950年代生まれ。バブル崩壊後の世代で、失われた20年
    本格的に、新しい言葉を使うこと。

    妹島和世は、伊東豊雄が師匠。
    伊東豊雄は、単体でアートのような際立つ建築が特徴。
    単体ではなく、環境の広がり自体がアートのように浮かび上がる。
    全体を建築と考える。建築そのものが、環境の一部。
    内部空間と外部空間をどうやって近づけるか?
    自分の感覚と建築の距離、自分が真によく、快適と感じるもの。
    建築が面白く無くなっている中で、面白くするには?

    隈研吾は、アートの限界も視野に入れて、それをどう乗り越えるのか?
    すでにあるものに寄り添いながら、ちょっとずれている。
    下町文化と現代をどう繋ぐか?そのためには様式から離れる。
    ゆるい境界の重なり合いと、軽くて薄いエレメントで空間にグラデーションを作る。
    建築を箱と捉えることをやめるべき。建築の枠を外す。
    建築家が消えて行く時代となっている。

    第5世代 塚本由晴、藤本壮介
    経済的危機を迎えただけでなく、阪神大震災、東日本大震災という自然災害。

    この世代たちが、理論、技術、都市、人間の4相に注目する。
    建築の理論とは、建築を支える言葉。
    建築を理解するための言葉の多様性の共有。
    建築とは、境界を形にする道具である。
    人が動きやすくなる境界を形づくる道具である。

    この本を読みながら、建築と建築家のあり方が、確かに
    もがいて、言語化しながら、新しい流れを作り出そうとしている。

  • 今を代表する建築家のインタビューです。どこかで聞いたことある話が多いです。

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