DNAが語る稲作文明: 起源と展開 (NHKブックス 773)

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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140017739

作品紹介・あらすじ

中国浙江省・河姆渡遺跡の発見により、稲の起源をめぐる論争に再び火がついた。紀元前5000年ごろの籾が長江下流域から出土し、通説とされていた「アッサム-雲南起源説」に疑問が呈されたのである。稲の原郷はどこか、稲の起源をつきとめられるのか。気鋭の育種遺伝学者が、稲の葉緑体DNAの分析とフィールド・ワークから、従来の諸説を考察しなおし、新説のバックボーンを検証してゆく。さらに、稲の伝播のルートをたどり、日本とアジアの稲作文明を再考する。

感想・レビュー・書評

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  • ☆ジャポニカ長江起源説

  • 稲の「雲南−アッサム起源説」や一元説を洗い直している。DNAの分析から稲はジャポニカとインディカの2種に分けられることを示し、ジャポニカについては長江中下流域が起源であることを提示している。一方のインディカの起源については、熱帯の大河下流域と推測するにとどまっている。

    稲作の日本への伝来については、春秋時代の黄河文明の侵略によって、照葉樹林文化と稲作が長江上流域、南部、朝鮮半島や日本へ移動したと考えている。また、弥生時代に温帯ジャポニカが伝来する前、熱帯ジャポニカが縄文時代に伝わり、粗放な稲作が行われていたという見解を示している。

    これまでの説を照葉樹林文化ともあわせて説明したうえで、それを否定する調査結果を示す形で議論を進めており、学説の歴史を振り返るのにも役立った。

    ・稲作遺跡は、長江中下流域では8000年前の彭頭山(ほうとうざん)遺跡などが見つかっているが、雲南省一帯では4000年前を少しさかのぼる程度。
    ・野生稲は現在は長江流域には見られないが、著者による河姆渡遺跡の炭化米(芒の鋸歯)の調査によって存在が認められた。
    ・長江流域の遺跡では、クスノキで作られた丸木舟や棺桶の遺物、漆を塗った器などが出土しており、照葉樹林文化を基層文化として発展したと考えられる。
    ・日本国内のシイノキやクスノキの巨木は、神社仏閣など人によって攪乱された場所に限って分布している。クスノキは樟脳が防虫剤や医薬品のカンフルとして利用されていたため、運ばれた可能性がある。

  • この本は二つの大きな常識だったことを
    懇切丁寧に 解説して、
    佐藤洋一郎の『仮説』を提案する。

    その二つの常識は・・
    稲の地理的な起源と系統的な起源にかかわることであった。

    稲と稲の文化はどこで生まれたか?
    →渡部忠世氏の『アッサム・雲南起源説』
    稲の祖先はどんな植物だったか?
    →岡彦一氏の アジアの稲は共通の祖先からうまれた『一元説』

    アッサム・雲南起源説に対して、長江流域起源説を提唱。
    これは、遺跡からの発掘で、具体的に出たことで証明された。
    約7000年前以前の遺跡が、雲南地域で見つかれば、
    また逆転するが、今のところ見つかっていない。

    稲の先祖はどんな植物だったのか?
    ジャポニカとインディカは、共通の野生種があるという説だった。
    稲作という栽培化する前の野生種がどんな稲か?
    ということであるが・・

    葉緑体DNAの分析によって・・・
    (葉緑体DNAは、母系の遺伝子をひきつぐ)
    インディカには、69対の塩基が欠失していることが、
    わかった・・・ジャポニカは欠失していない。
    葉緑体DNAは、15万塩基なので、わずかなのであるが。

    野生種も欠失しているものが インディカ野生種、
    欠失していないものが ジャポニカ野生種に分けられる。
    ジャポニカのほうが、早く存在していたと考えられる。

    インディカとジャポニカは、別々の野生種からできた。
    ジャポニカの野生種は 長江流域が、起源。
    インディカの野生種は 熱帯のどこからしい。(場所未定)
    熱帯ジャポニカについては,まだわからない。

    このことから・・・・
    長江流域から・・・雲南へ伝播。
    従来の雲南起源説は、否定される。
    長江流域から・・・朝鮮および日本へ伝播したと考える。

    この展開は、ドラマティックですねぇ。

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著者プロフィール

1952年生まれ
京都大学大学院農学研究科修士課程修了
総合地球環境学研究所副所長・教授 農学博士
序章執筆
主 著 塩の文明誌(共著,NHKブックス,2009),イネの歴史(学術選書,2008),よみがえる緑のシルクロード(岩波ジュニア新書,2006),稲の日本史(角川選書,2002)など


「2010年 『麦の自然史 人と自然が育んだムギ農耕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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