雪はよごれていた―昭和史の謎 二・二六事件最後の秘録

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著者 : 澤地久枝
  • 日本放送出版協会 (1988年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140051344

雪はよごれていた―昭和史の謎 二・二六事件最後の秘録の感想・レビュー・書評

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  • 前提知識がなさすぎたので、そのうち再読する。

  • わかりやすく二二六事件について書いてるので勉強になった。

  • 2.26事件の関係者らを裁いた特設軍法会議の資料は戦争中に焼失したとされていたが、主席検事官であった匂坂春平氏がひそかに保管していた資料が1986年に遺族の手により初めて公開。もの言えぬ時代のなか、匂坂がかすかな手がかりを通して暗示する事件の真相を読み解いていく、読者の側も高い集中を要求されるノンフィクションである。

    事件の報に接した軍上層部の動きは、複雑怪奇としか言いようがない。「皇軍相撃を避ける」ためとしてテロ行為を起こした者たちを反乱軍として扱わず、官邸占拠を解除させぬまま、戒厳軍に組み入れた。テロに続く戒厳令の発令こそは、軍による統治をめざす青年将校らのまさに期すべきところであったため、戒厳軍に組み入れられたと聞いた彼らは、当然、自身らの行動が正統化されたものと考え、大いに喜んだという。実際、上層部は彼らを「反乱軍」と見ていたのか、それとも正統な行動をとった正規の軍隊として扱うつもりだったのか。
    その矛盾を端的に示すものが、「陸軍大臣ヨリ」と称される告示文の謎であった。青年将校らと事件直後に会談した陸軍大臣川島義之らが、事件発生から数時間後に宮中でまとめたこの文書には、その内容、作成され伝達された時間、伝達の対象に、いくつもの矛盾がある。真相をつきとめようとする匂坂ら検察官の努力にもかかわらず、時間厳守、命令の正確な伝達を旨とする軍人らの誰もが、定かな記憶をもたないと平気でいう。
    当日の出来事を書き変えようと口裏をあわせる彼らがつくりだした厚い煙幕を透かして見えてくるものは、青年将校らを焚きつけ、テロの成功を見てとって勝ち馬に乗ろうとするも、天皇の激しい怒りに触れて将校らを切り捨てることにした軍上層部の姿であった。驚くべきことに、彼らは、反乱軍に解散・部隊復帰をうながす「奉勅命令」すら伝達させずに葬ったのである。自決を覚悟して勅使の派遣を求める将校らに対し、「よく覚悟してくれた」と感涙にくれる軍幹部たち。この感動的な場面のなかで、ある青年将校が自分たちは黙って死ぬことを期待されているのだと卒然と悟ったという記述には、寒気が走る。けっきょく、都合よく自決してくれることを期待されていると知った将校らは、黙らずに裁判で語ることを選んだのだった。
    だが、裁判で軍上層部の責任を問おうとする匂坂ら検察官の努力は挫折を余儀なくされる。その帰結は、死刑に処された被告らの最終論告で予見されていた。

    ――戒厳部隊に編入したことを方便なりと称せられますが、苟しくも天皇陛下の部隊に方便で編入するとはありえません。戒厳司令部の機密作戦日記は偽造したものと判断します。(安藤輝三)
    ――結末は吾人等を踏台に蹂躙して幕僚ファッショ時代現出なるべし。(林八郎)

    「歴史の闇は深い」というクリシェでは済まされぬ。「国を想って命をなげうった純粋な若者たち」を美化し利用することで、権力者たちは合法的にファシズムをすすめていった。その構造は今なお健在であることを、日の目を見なかった資料は雄弁にものがたっている。

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雪はよごれていた―昭和史の謎 二・二六事件最後の秘録の作品紹介

激動の昭和史、最大の謎といわれる二・二六事件の闇に包まれていた全貌を明かす新資料が発見された。特設軍法会議の主席検察官が自宅へ持ち帰り、終戦後も秘蔵していた膨大な文書、手びかえであり、陸軍首脳が戒厳令施行を利用して企んでいた別なる二・二六事件とその陰蔽工作を示すものであった。青年将校らは処刑され軍首脳の陰謀は闇に包まれたが、検察官の執念は52年の歳月を超え事件の真相を現代に甦らした。戦後最大の第1級資料の発掘により昭和史を揺るがす衝撃的な新事実が明らかになった。事件の全貌を描く鮮烈なノンフィクション。

雪はよごれていた―昭和史の謎 二・二六事件最後の秘録はこんな本です

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