サーカス団長の娘

  • NHK出版
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140054758

感想・レビュー・書評

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  • 物語のネタを作家に売るビジネスをする男性の話。

    主人公のペッテルは、並外れて豊かな想像力を持つ一方、本質的に他人に興味がない。思いついたプロットを実際に小説にできないのは、それを読者に届ける営みに必要な情熱が欠けているからだろう。愛する女性に対しても、その人自身についての想像力を働かせなかったために、終盤の悲劇が起きた。
    いくつかの物語が入れ子的に挿入されているが、フォントで地の文と区別されている。キーになる「サーカス団長の娘」の物語は微妙なバージョン違いで何度か語られるが、マリーアの娘に話してやった箇所(p133)では地の文と同じフォントのままで、この話が特別な意味を持つことが暗示されている。

  • 花が好きな本

  • タイトルと表紙のイメージと異なる。こういう雰囲気で本を作りたいという気持ちはわからんでもないが、騙された。騙されたというのは、サーカスに属する少女が主人公と思って手に取ったのに、色々話のネタを思い付くオッサンの、その小咄の1つであって、自身の悲しい生まれに根深く閉ざした物語という、回りくどかった書き方に騙されたのよ。作家は著名な人みたいだが、自分がそれを読み取る土壌を持っていなせいで「やられたぜ」みたいな読後感が残るが、こういった、他の作品で絶対に味わうことのない感覚を体験できるのも、大きな収穫ではある。

  • ヨースタイン・ゴルデル作品 翻訳本を
    少しずつ読み漁っている
    その読み終わった作品の中でも
    ちょっと評価のつけかたが分からない
    何を基準に星★の数を付けたらいいのか
    思い悩んでしまう作品でした
    なぜ、この本のタイトルが『サーカス団長の娘』
    になっているのか
    もっと違うタイトルでも良かったのでは?
    と思ってしまう
    あくまでも考え出した物語の中の登場人物であり
    全てが架空の物語で
    ある瞬間に考え出されたイメージだから
    この本を読了した後で
    タイトルと合っていない感じがしている
    ではどういうタイトルが好ましかったのか
    私個人の意見としては
    『物語のネタ、有ります!』
    なんてのは、どうかしら。
    本を書くためのネタがあれば
    見てみたいと思う人がいるのではないか
    哲学的な内容か
    そうではない普通の恋愛小説みたいな内容かにかかわらず、人の頭の中のイメージを見てみたいと思っている
    人間はたくさんいるのではないでしょうか?
    だからネット社会でSNSのコミュニティーサイトが流行るのでしょう。
    自分の事より他人の秘密とか、感心事を
    知りたいという要求は
    誰でも、少しは持っているものだと思います。
    でも度が過ぎた行動は嫌われますが…
    まわりを騙し続ける人生も
    アウトになってしまいますよね(^-^)

  • 物語の神になりそこなった男の物語。原因は愛。
    入れ子式の小説が面白くもあり。放漫な男の人生が痛々しくもあり。
    オチにつながるキャラクタが登場した瞬間にネタバレしちゃうのが惜しいな。

  • ペッテルの溢れる才能と人を惹きつける力、隙のない経営力そして影のある存在感がたまらなく読んでいて楽しかったです。これを読んでから売れてる作家さん達ってペッテルからネタ買ったのかな~なんて想像してしまいます。読み進めてページが減って行くのが惜しいと感じる一冊でした。

  • 作品の内容を読み進むと、
    どれだけ崇高な作品が全体的に仕上がるのかと
    期待させるものがあるのだけれど、
    残念ながらそこまでではなくという展開にちょっと
    ガッカリですがストーリー展開と登場人物の
    心の崩壊が気になって読み進んでしまいました・・。

  • 物語を創造する力が強ければ強い程、創造物と現実との区別がつかなくなる感覚とは言わないまでも、偽りの自分という考えが理解できれば感じるものは多いと思いました。

    物語のオチは読み進めていけば察しがつくとは思いますが、物語のエンターテイメント性とかではなく、漂う雰囲気がとても好きでした。

  •  ストーリーテラーの天才・ペッテルが、自分の考えたお話を作家たちに売りつける……といったおはなし。ゴーストライターというのとは、ちょっと違う。警句を除いて、彼が売るのは基本的にプロットで、完成は作家にまかせる。
     とても贅沢な小説だった。入れ子になっている梗概のひとつひとつをとっても、面白い小説が書けそうなくらいだ。職業作家がこの小説を上梓したということ自体、ほとんど驚くべきことのように思える。

     ペッテルの行為はべつに犯罪ではない。しかし、彼はあまりにも他人を侮っていたと思う。自分だけが特別だと思い込んでいた。こないだ読んだ、伊坂幸太郎『マリアビートル』の王子や、貴志祐介『悪の教典』の蓮実のように、他人の心を弄んでいる――彼の創造した物語の一部であるかのように。
     それに思い至らなかったから、ペッテルは、みずからの糸に絡めとられてしまう……。
     結末のできすぎ感は否めなかったが、それでもじゅうぶん価値がある作品だと思えた。

     ペッテルは非常にいけすかないヤツだと思うのだが、彼の発する言葉にははっとさせられる。
     これを、作家は、また作家志望の人はどう読むのだろう? と興味を持った。

    原題:Sirkusdirektørens datter

  • 記憶に残る本の一冊になると思う。

    キーワードは「三歳」。

    何となく、最後は娘と再会するんだろうな、この女性が娘なんだろうな、とは思っていたけれど、娘は幸せな人生を送るものかなと思っていた。

    一番最後のペッテルの昔の記憶はありきたりながらもゆるやかに胸が締め付けられた。
    それまでの彼の人生を読んできたからかと思う。
    三歳の時迷子になったペッテル少年は、どこに辿り着くのか。元の場所に戻れるのか。最早もう遅いのか。

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