命もいらず名もいらず 上 幕末篇

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140055809

作品紹介・あらすじ

日本をどうする。お前はどう生きる。-最後のサムライ!山岡鉄舟、堂々の生涯。

感想・レビュー・書評

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  • 山岡鉄舟の青年期の話。

    津本陽の硫黄島戦記で「名をこそ惜しめ」というのがあったが、こちらはさらに進んで「命もいらず名もいらず」だ。志さえあればいいらしいが、志だけ高い新人は早くやめることが多い。淡々とこなし、生活のためにここにいると言う新人の方が仕事の覚えも早いし長続きする。

    器は大きいのかもしれないが、同士に酒を飲ませるために自分の赤ん坊のための食料を買う金さえなく、飢え死にさせたというのは全く人間失格。

    現代では社会不適合の奇人だと思う。

  • 山岡鉄舟の生涯。まさに正直で真っ直ぐな人間。
    身長は六尺二寸(188センチ)、体重は二十八貫(105キロ)と、恵まれた体格。
    優れた武術家であり、また書でも有名。あね木村屋の看板の書は鉄舟によるもの。
    豪快ではあるが、曲がった事は一切しない。清々しい生き方。
    上巻は清河八郎が暗殺されるまで。

  • 幕末を幕臣サイドの視点で描いた小説を読むことはなかったので新鮮だ。勝海舟でさえ、氏を主人公に据えた著作は読んでないし。山岡鉄舟はとてつもなく豪儀で一本気な漢として描かれる。やると決めたらひたすら徹する鬼鉄さん。融通も何もありゃしないが、頭を冷やせば素直に詫びるし、己の負けをも認める。と聞けば立派なれども、ときに色道修行だの色情哲学だのと廓通いに明け暮れ、家財一式、着物も布団も売りつくし、あげく、女房は栄養不足で乳が出ずに最初の子が亡くなるって、それだけでヒトとして零点だと思ったりするのよ。さて、剣術では浅利又七郎なる達人に打ちのめされ、さらなる求道心に火がついた。この負けん気の権化、明治の世ではいかなる働きをするのか。

  • 【要約】


    【ノート】

  • なぜか買ってから本屋で見かけない。。。読み応えあるいい小説なんだけどなあ!「利休にたずねよ」の著者!

  • 侍の精神は、理解し難いところもあるけど、見習いたいところもあり。
    幕末は、いつ読んでも大変そうです。

    この時代の、普通の人たちの暮らしがどんなだったか気になります。

  • 山岡鉄舟の小説。
    歴史ものだが難しい言葉も少なく読みやすい。
    歴史小説にありがちな退屈な幼年期もない。
    ただエピソードをつなげた感があるのでまとまりがイマイチない。
    愚直すぎる主人公。ただ貫き通す。

  • 凄い人です。

  • かの西郷隆盛をして
    「金もいらぬ、名もいらぬ、命もいらぬ人は始末に困るが、
    そのような人でなければ天下の偉業は成し遂げられない」
    と賞賛せしめた男がいました。
    山岡鉄舟です。

    幕府の旗本の家に生まれた鉄舟は徳川慶喜のために身を捧げ、
    単身で西郷と会見し江戸城無血開城の基本的確約を得る。
    維新後、その西郷隆盛や勝海舟らの推挙によって、
    明治天皇の教育係を拝命し、天皇の信頼を得るまでに至ります。
    彼は書をよくし、禅の道を極め、剣は無刀流の開祖。

    そんな彼も坂本龍馬や西郷隆盛、勝海舟ほど人気はないようです。

    そうした中、山本兼一『命もいらず名もいらず』上下(NHK出版)
    という本を図書館で借りて読みました。

    彼の愚直で一本気な生きざまは心打つものがあります。


    この西郷との会見の段、大変面白いのでひとくさり紹介しましょう。
    徳川慶喜のため、江戸の人々のため、
    江戸無血開城を願った勝海舟は鉄舟を下交渉約として、
    駿府に入る西郷のもとに送ります。
    鉄舟はやがて、敵陣薩摩軍が陣をはる本営にたどり着くと、
    「朝敵徳川慶喜家来、山岡鉄太郎。大総督へまかり通る」
    と大音声を発し、通り抜けていった。
    赤旗の隊長は、あっけに取られたられ、
    きょとんとした顔で、なにやらつぶやいたままであった。

    明治維新、まだ若かった明治天皇の教育係が必要になり、
    鉄舟に白羽の矢があたります。

    この鉄舟と明治天皇の間のやり取りも面白いので、紹介いましょう。
    有名なすわり相撲の一件です。
    酒の度を過ごしがちだった明治天皇、
    その日も酔った勢いで鉄舟に相撲を強要された。
    身長の差があるので、すわり相撲ということになりました。
    いくら押し倒そうとしも、びくともしないので、
    陛下はついに拳で鉄舟の目を突ことしましたが、
    かわされて前のめりに倒れ軽いキズを負われました。
    臣下から謝るべきだろう言われた鉄舟は
    「わが身はもとより陛下にまつってあるので、
      負傷などいささかも厭いはしないが、
      もし陛下がご酔狂のあまり拳でもって
      臣下の目玉をお突きになったとすれば、
      天下に、後世に、古今まれなる暴君と呼ばれることになられる。
      そして酔いからお覚めになったのち、
      どれほどご後悔なさるかわからないと推察いたす。」
    と言って、その場でお沙汰を待った。
    やがて陛下から「朕が悪かったと山岡に伝えよ」とのお言葉がありました。

    しかし、鉄舟は「ただ悪かったとの仰せのみにては、
     私はこの席を立ちかねまする。
    なにとぞ実のあるところをお示しくだされたくお願い申し上げる」
    しばし、黙考された陛下は、「これから先、酒と相撲は止める」
    これを聴いた鉄舟は大いに感激して涙を流した。

    それから1ヶ月、自ら謹慎していた鉄舟はぶどう酒1ダースを陛下に献上した。
    「もう呑んでもよいのか」
    と晴れやかな顔をされた陛下はその場でぶどう酒を召し上がった。
    陛下は本当に禁酒されていたのである。

    最後、死を悟った山岡鉄舟は皇城に向かい結跏趺坐して、
    そのまま死を迎えます。享年53歳でした。
    篠突く雨の中、葬列が皇城の前を過ぎる時、
    陛下は高殿からそれをみおくられた。
    武士の最後を。
    最後の武士を!

  • 2014/1/20-2/8
    山岡鉄舟
    人というものついおのれを過信し他人を見くだす悪癖がある。おのれが正で他人が邪、おのれが清く、他人が穢れているて思いがちだ。世の多くの人間が、そう慢心して生きておる。とかく人とは愚かなものよ。

    まずは人に勝ちたいという気持ちを無くすことから始めよ。修行は人に勝つためではなく、おのれの徳を積むためにする。徳の積み方が分からぬ者は、おのれを見つめよ。

    おのれに恥じぬよう精神を満腹にして生きよ!

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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