動物感覚 アニマル・マインドを読み解く

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140811153

作品紹介・あらすじ

動物は、人間が見過ごしてしまう微細な情報を感じとることができる。その鋭すぎる感覚ゆえに臆病だが、同時に驚異的な能力も発揮する。飼い主の発作を三十分も前から予測する犬、数百か所におよぶ木の実の隠し場所を正確に記憶しているリス-。自閉症についての理解を広めるために世界的に活躍してきた著者が、自閉症であるからこそ知りえた動物の感覚を研究した成果を、初めて発表した。全米ベストセラー・科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルどおり、動物たちの持っている感覚や認知について書かれているのだが、同時にヒトの認知についての本でもある。ヒトは他の種とくらべてかなり特異な知能の発達を経ているのは間違いないが、かといって地球上の生物である限りは他の種たちから完全に隔絶した存在でもないだろう。動物との比較でヒトが何であって何でないかが見えやすくなる。また、その比較の橋渡しをするのが著者自らもそうである自閉症であるところも読みどころ。

  • いろいろな事を知る事ができた。動物と自閉症者が同じように物事を捉えること、動物は人が見落とす微細な情報を感じている事、それを理解したうえでの動物との接し方、動物そして自閉症者の素晴らしい能力など。
    著者が7章の最後に記している動物への愛情が、心に染みた。

  • 自閉症でありながら。、動物行動学の研究者として活躍するテンプル・グランディン博士が、動物にとっての「感覚」と人間との比較について書いた一冊です。

    詳細で、丁寧な観察と、「人間と動物の中間」であるという、自閉症独自の感覚を持って行われた分析には感嘆すべきものが多々あります。
    動物とともに行動する上で、非常に有用で、目からウロコと言わざるを得ない情報が多く、また同時に多くの動物をとてもいとおしく感じます。

    自閉症の人が「些細な」事象に気を取られ、そして痛みよりも恐怖を避けようとし、それは動物の持っている感覚と少なくない類似があるというのには驚きました。
    また動物が好奇心旺盛であり、かつ捕食以外の攻撃性を持つというのも驚きました。複雑で高度な知能を持つ動物ほど、残虐さも兼ね備えると。
    また、人類の祖先は社会性を身につけたのは、オオカミとの交流によるものではないか、という仮説には驚きますが、興味深い理論が展開されています。

    動物の仔細に渡る分析は、その動物のことだけでなく、ヒトに対するさらなる知識の獲得にもなりえるということがよくわかります。人間の知覚と動物の知覚の大きな違いからは、まだまだ学べることがあるのでしょう。
    とてもおもしろく、動物のこと、感覚器官の進化の系譜、自閉症のことをもっと知りたくなりました。

  • 図書館で何度も借り直して読んだ本。時間はかかったけれど、読んでよかった。自閉症、アスペルガーの人の繊細さや弱点が、当事者の手で丁寧に説明されていて、学びの多い本でした。いつか忘れずに買うために、ここにメモ。

  • 共著者のうちの一人は自閉症。自らの感覚をもとに、自閉症患者と動物には、一般人では知覚できず、獲得もできないある種の天才があると論じています。

    人間は動物に比べて視覚(正確には色覚)が発達しているため、フェロモンなどを嗅ぎ取るための嗅覚が退行し、性的情動を視覚に頼るようになったということ。
    人間は視野にあるもののうち「見ようと意識したもの」だけを知覚するが、動物は取捨選択をせずに見えているものを「すべて」見てしまうため、それによって怯えたりパニックを起こしたりする場合があること。
    恐怖は戦いを回避することにつながるため、恐怖心の強い動物ほど身体的攻撃は抑制されること。
    捕食動物の情動(狩りの本能)は生来のものであるが、そこから先については教えてやらなければならず、家猫などが小動物を殺しても食べないのは、それが食べられるということを教えてもらっていないからだ、ということ。

    これまでペットを飼ったことはないですが、そんな自分程度でも疑問に感じていたことの答えのいくつかは、この本でクリアになりました。

    最後のほう、ちょっとした西欧人批判ともとれたのが、「知能指数と文化進化はイコールではない。動物の知能が低いからといって、それによってその種が劣っているという訳ではない。渡り鳥が道を覚える能力やリスが埋めた木の実の場所を記憶する能力など、動物には人間には到底真似できないような、様々な天才が備わっている」というところ。自分たちが一番上だと自惚れることに対しての、厳しい正論だと思います。

    最後の40ページぐらいは動物の扱い方に関する注意点が細かく挙げられてます。本書の要点を押さえた部分でもあり、ペットのしつけにも転用できる部分なので、ここだけ読んでも面白いと思います。

  • 4歳まで言葉をしゃべらなかった、自閉症である著者が、自らの情動やビジュアルラーナーである感覚を動物の行動と比較しながら書かれている本。自閉症の子どもたちの感じ方や問題を考えるのに非常に参考になる。科学者だけあって、客観的、論理的、詳細な記述は感動的!

  • 自閉症の著者が、動物と自閉症の共通点を述べつつ、その特徴や実際の注意点を述べている。

    自閉症(視覚情報のフィルタリングができない)だからできることがある、というスタンスには、学ぶところが多かった。
    また、思考言語と表出言語が同一レベルでないことなど、日常に照らし合わせたときにはっとする記述が随所にあった。

    動物施設の監査について
    「設備の整備記録や従業員の記録でなく、牛が転んでいないかを見る」
    「細かな監査項目はかえって重大な欠陥を見落とす」
    という趣旨の内容には、監査に対応する者として、思い当たることがとても多かった。
    何を要求されるかで、どんな対応をするかが決まることもまた事実。
    監査のためだけに膨大な記録を用意する羽目にもなり、本当の意味での改善や管理をすることにもなる。

  • 自閉症と動物の思考の仕方は似ているという考えを自閉症の著者が展開する。
    動物は人間が思うほど知能が低くないし、動物の目線になって考えてあげることが彼らの幸せにつながる。

    動物好きな自分は肉食についてどう行動すべきか考えていて未だ現実的で納得のいく答えが出ていない。
    この著者は、その答えの一つを持っている。家畜の動物を幸せに生活させて、苦しまないように処分するという仕事をすること。

  • 4年前ぐらいに読了した本で、今一番再読したい本です。

    当時はあまり知識がなかったのでアレですが、動物の行動や情動に関してなかなか面白い視点で書かれていたと思います。

    特に印象に残ったのが、動物にとっての「恐怖」という要素についてです。

    皮肉なことに動物にとって、一番の恐怖の源である職業に就くことになってしまいそうですので、そこの点はしっかり把握しておきたいと思いました。

  • 正真正銘の神本(かみぼん/神の如く悟りを得られる本)だ。著者のテンプル・グランディンは、オリヴァー・サックス著『火星の人類学者 脳神経科医と7人の奇妙な患者』(吉田利子訳、早川書房、1997年)のタイトルになっている人物。自称「火星の人類学者」は自閉症の女性動物学者であった。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20110215/p11

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著者プロフィール

1947年生まれ。世界各地の家畜施設を設計する動物科学者。コロラド州立大学で教鞭をとり、自閉症関連の講演や執筆でも活躍中。著書として『アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク』(ケイト・ダフィーとの共著、梅永雄二監修、柳沢圭子訳、明石書店、2008年)、『我、自閉症に生まれて』(マーガレット・M・スカリアノとの共著、カニングハム久子訳、学習研究社、1994年)、『自閉症の才能開発』(カニングハム久子訳、学習研究社、1997年)ほか多数。

「2009年 『自閉症スペクトラム障害のある人が才能をいかすための人間関係10のルール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

テンプル・グランディンの作品

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