NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140812822

感想・レビュー・書評

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  • 1228円購入2011-02-28

  • 本書は、数学について書かれたものではなく、数学者という特殊な生き物について書かれたものである。したがって、「100の難問(ポアンカレ予想)」についての解説はほとんどなく、これを解いたペレルマンおよび、その関係者について焦点があてられている。 この方法は、決して悪いわけではなく、むしろ、ポアンカレ予想とは「3次元ホモトピー球面は3次元球面に同相」であり、これは・・・などと数学用語を並べたてるよりは良いのかもしれない(数学を学んだこと、特にトポリジーが大好きだった私にとっては若干ものたりないが)。 というわけで、この本は、謎の数学者ペレルマンに肉薄しようとする。しかし、このペレルマン、数学以外に興味がなく、外界との接触も断ち、母親と隠れるように生活している。数学者なら誰しも憧れるフィールズ賞まで拒絶し、数学ミレニアム問題を解いた者に与えらる100万ドルさえも拒否。どこまで、変わっているのか、天才もここまでくれば狂人と区別がつかない。このような人の人物像に肉薄するためには、一緒に過ごしたことのある人か、ペレルマンと同じ志を持っていた人に当たる以外手がなく、実際にそうしている。 そのインタビューの中、ある数学者が、「このような難問に一人で立ち向かうことは、なにより恐ろしいまでの孤独と立ち向かわなければならない。その厳しさが、明るく快活だったペレルマンをあのようにしてしまったのではないか」というようなことを言っていた。その時、10年解けなかった問題に取り組んだ日々のことを髣髴とした。ああ、そうだった。数学とはそういうものだった。覚醒と狂気の狭間にあるその断崖に一人立ち、深淵ともいえるその狂気に引き込まれる恐怖と、引き込まれたい願望との葛藤。これこそが、ペレルマンをしてポアンカレ予想を克服させ、と同時に人格を破壊させた。数学の本質とはかくも厳しいものである。

  • NHKスペシャルを書籍化した本なので、とても読みやすい。
    テレビだったら、さらにわかりやすかったんだろうな。
    ポアンカレ予想とそれに挑戦する数学者について、何となく触れることができた。

  • ペレリマン博士。ロシアの天才数学者。ポアンカレ予想を証明した。フィールズ賞を受賞したが拒否した。100年の間解かれなかったポアンカレが予想した問題(単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相である)がどうして解かれたかを追った内容。面白かった。

  • NHKスペシャルが元である。数学のミレニアム問題にもあげられているポアンカレ予想がついに証明された。一般向けのため数式はもちろんほとんどない。したがって数学者以外にはこの難問がどう難しいのかさえわからないが、この難問に挑んだ数学者の数々のドラマが推理小説並みに面白い。
    著者の春日真人氏は東大大学院理学研究科を卒業したディレクターである。おそらく製作者に数学の要素がなければこの人間ドラマにスキャンダラスな面を強調しただけの全く面白くなかったであろうことは想像に硬くない。

  • 2007年に放送されたNHKスペシャルの内容らしいが、番組は観ていない。

    本書は番組の内容を取材の様子を交えながら、一冊の本に書き下したものである。フランスの数学者であり、物理学者でもあるアンリ・ポアンカレが提起した超難問「ポアンカレ予想」に関して、これを解決したグリゴリー・ペレリマン博士に迫ろうというドキュメンタリーのような内容だ。

    内容は、ポアンカレ予想とはどんな問題かというところから始まり、時間を追ってその難問に挑戦した数学者たちの成果や苦労などが描かれている。数学についての詳細な記述はもちろん出てこないが、専門用語などは注釈にしてわかりやすい解説になっていると思った。
    数学の話も、先生方が語るたとえ話をもとに、丁寧な説明でおもしろい話になっていると感じる。ペレリマン博士の具体的な結果については理解するのが難しいが、それでもどんなことをして、そこがすごいのかはなんとなく伝わってきた気がする。

    残念ながら、最後の下りではもう一度博士と再会することもなく、賞金の辞退やロシアにこもってしまった理由などは不明のままになったが、「間違いなく何かに挑戦し続けている」という文面が非常に印象に残った。また博士の新しい論文がarXivなどに現れることがあるのかもしれない。

  • よくわからない。

  • 非常に高潔な数学者が,多数の凡庸な数学者が作り出す社会と絶縁したというのが本当のところなのではないかなと邪推します。瑣末な研究を沢山行って生まれる業績で,学会に幅を利かせる人はどの業界にもいるからねぇ。


    *****
    彼の怒りは理解できないわけでもないですが。おそらく彼の心の中では,[フィールズ賞を]辞退したほうが気が楽だったのでしょう。(p.119 スメール博士の言葉)

     数学の本質とは,世界をどういう視点で見るかということに尽きます。数学的な考え方を学べば,日常はまったく違って見えてきます。文字どおりの『見る』,つまり網膜に映るという意味ではありません。学ぶことによって見えてくるという意味です。(p.146 サーストン博士の言葉)

    私は身に沁みて知っています。最初に何かを考えだすとき,そこには孤独がつきものなのです。(p.156 サーストン博士の言葉)

     サンクトペテルブルクに戻ったペレリマン博士は,ステクロフ数学研究所に勤務し,何かに取り憑かれたかのように研究に没頭した。学生時代の博士を知る同僚たちは,その変わりように唖然としたという。
    「大学院で一緒に勉強していた頃,ペレリマン先輩は明るい普通の若者でした。私たちは一緒にパーティーに参加したり,新年をお祝いしたりしたんです。夏休みには勤労奉仕でコルホーズ(集団農場)にも行きました。他の仲間となんら変わることはなかったんです。
     でも,アメリカから戻ってきた彼は,まるで別人でした。ほとんど人と交流しなくなったのです。昔みたいに声をかけることもできない。私たちとお茶を飲んで議論することもなければ,祝日を祝うこともありません。驚きました。以前はあんな人じゃなかったのに」
     ペレリマン博士はセミナーなどの共同作業がある日以外,研究所に顔を出さなくなっていった。人付き合いを極力避け,研究に打ち込む日々が続いた。(pp.175-176)

     数学でもっとも特別な瞬間は,問題を違った角度から眺めたとき,以前見えていなかったものが突然明確になったと気づく瞬間です。鬱蒼とした森だと思っていたのに,適切な場所に自分が立つと,木が整然と並んでいるのが見えるのです。他の角度から見るとその構造は見えずに,混沌とした木だけが見えます。でも,適切な方向に自分が向くと,突然,この構造が見えます。数学とはこのようなものです。私にとってペレリマンの論文はその連続でした。私は何度も『美しい』と思いました。(p.196 ジョン・モーガン博士の言葉)

  • あたし、数学が好きな人フェチかも。

    でもこの本は、
    数学ができる人には物足りないと思う。

    微積がわかんないあたしくらいバカちんで、
    数学好きが好きな人くらいが読んだら丁度いいかも。

    読み終わった時に、春日真人さんを始め、取材クルーの皆さまに心の中でお礼を申し上げた。

  • ポアンカレ予想と、それを解決したペレルマン博士について追ったTVのドキュメンタリの書籍化。TVが元ネタなので、非常にわかりやすい説明がなされている。主題はポアンカレ予想よりもペレルマン博士について。数学者というものを、非常に真剣に理解しようとする姿勢が良い。

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