ダーウィンが信じた道: 進化論に隠されたメッセージ

  • NHK出版
3.14
  • (0)
  • (2)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 38
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140813812

作品紹介・あらすじ

世界を揺るがした、科学史上もっとも重要な発見のひとつである「進化論」。この理論が生み出された陰には、いったい何があったのか?キリスト教社会に背いて研究を続けるほど、ダーウィンを駆り立てた熱い思いとは?新たに見直された若き日の草稿、書簡、自筆ノートから、ある強い信念があぶり出される。崇めるにせよけなすにせよ、21世紀になった現在でも避けては通れない人物、それがダーウィン。聖人でも悪魔でもなく単なる科学者でもない、人間としての彼の姿に世界的研究家が迫る!新たなダーウィン像の決定版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  我々の生命観を一変させ、現代生物学の礎の一つとなった進化論を生んだダーウィン。今年は彼の生誕200年に当たり、主著『種の起源』出版150周年でもある。本書はその佳節にふさわしい、ダーウィンの知られざる実像に迫った大著だ。

     著者2人は高名な科学史家で、1991年にも浩瀚な伝記『ダーウィン』を共著で上梓し、数々の賞に輝いている(邦訳は99年に工作舎より刊行)。本書は同書に屋上屋を架すものではなく、別の角度からダーウィンの歩みをたどったものだ。

     著者たちが光を当てるのは、ダーウィンが生涯を懸けて進化論を築き上げた、その動機。科学の進歩のためでも自らの知識欲のためでもなく、ダーウィンには他に明確な研究目的があったと、著者たちは言うのだ。
     ダーウィンを進化論研究に駆り立てた原動力は、当時まだ存在していた奴隷制への義憤だった、というのが著者の見立てである。本書は、丹念な検証作業によってその主張を裏づけていくものだ。

     ダーウィンが生きた時代、科学者にも奴隷制擁護主義者は多く、彼らは人種多起源論を唱えていた。白人と黒人は祖先を異にする別の種だと考えることで、奴隷制を正当化しようとする勢力が存在したのだ。人種多起源論が誤りであり、人類が共通の祖先をもつ兄弟であると立証できれば、奴隷制正当化の根拠を突き崩せる――そんな情熱が、ダーウィンを支えていたのだ。

     著者たちはダーウィンの生涯を、奴隷制との長い闘いのプロセスとして捉え直していく。
     奴隷制反対の立場をとる名家に生まれたダーウィンは、若き日に測量船ビーグル号で航海をした際、南米各地で奴隷たちの悲惨な境遇を目の当たりにし、奴隷制への怒りをいよいよつのらせる。本書の前半では、そのような進化論以前の歩みが詳述される。そして後半では、進化論が深まりゆく過程、論敵との闘い、キリスト教社会での進化論公表をめぐるダーウィンの長い逡巡などが、つぶさにたどられていく。

     ダーウィンの“闘う人道主義者”としての側面を活写し、科学と社会の関係について改めて考えさせる労作。

     私は、佐倉統の好著『進化論の挑戦』を少し前に読んだところだったので、本書もたいへん面白く読めた。

     ただ、本文だけで600ページ超という本書の分量は多すぎ。「そこまで詳論する必要はないのでは?」と思わせる部分まで微に入り細を穿って書かれていて、トリヴィアルにすぎる。私が本書の編集者だったなら、この半分の量にまで削らせるだろう。

  • 読みづらい

  • ダーウィンがどのような経過で「種の起源」や「人間の進化と性淘汰」を書いていたのかそこには、チャールズ家やウェッジウッド家の奴隷制に対するつよい反感がありました。白人であろうと黒人であろうとおなじ種であり差別されるものではない、という強い意志がありました。厚い(600ページほど)本でしたが、あまり読み込まず、流すように読んでみたらけっこうすんなりと読めました。ダーウィンが生きた時代と人となりを理解するにはよいかも・・・

全3件中 1 - 3件を表示

エイドリアン・デズモンドの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×