シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140814543

感想・レビュー・書評

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  • 『フリー』『シェア』『メッシュ』『パブリック』と、自分が勝手に<ネット4部作>と名付けているものを、順不同ではありますがようやく読了しました。
    4冊を通して感じるのは、モノを作って売るだけのビジネスはもはや時代遅れであることと、買い手は単なる消費者ではなく、思いを伝えることで生産者や発信者と共に成長するパートナーであるということです。インターネットという双方向メディアの果たした役割は決して小さくありませんが、それ以上に私たちひとりひとりの考え方が変化してきた部分が大きいかと思います。

    最も大きな変化が、本書に指摘されています。つまり、産業革命以来の大量生産・大量消費について、これが正しい姿なのかと疑問を持つ人が増えてきたこと。地球規模のゴミ問題や環境問題が懸念され、リサイクルや環境保護という方向に舵を切りつつありますが、そもそも「買わない」という選択肢もあるのではないか、という趣旨となります。
    本書前半は、大量生産・大量消費による弊害を、事例を挙げて説明しています。とくに印象に残ったのが、太平洋ゴミベルトの話です。海流の関係で北太平洋の中央にプラスチックなどのゴミが集まる海域があるのですが、想像を絶する事態になっているようで、当然ながら環境や生物への影響も小さくありません。元をたどれば、私たちの大量消費・大量廃棄が引き起こした問題であり、人間のエゴが生んだ地球規模の環境破壊です。

    私たちは大量に廃棄するだけではなく、必要のないものを大量に買い、ため込んでしまうことにもなります。いざというときのために、1年のうちで数分しか使わないような工具を持っていたりすることもあるわけですが、必要なときにほかの人から借りたり、逆に自分のものを必要のないときにほかの人に使ってもらったりすれば、お互い助かるのに、という発想は当然出てきます。
    インターネットの力により、遠く離れた人ともやりとりできるようになり、ものの交換や融通がやりやすくなりました。コミュニティが大きくなり、やりとりされる物品の量が一定の規模を超えたことで、さらに発展していくという構図が、世界のあちらこちらで起こっているようです。
    副次的な効果として、交換や貸し借りの結果ものを捨てなくなるので、環境にも優しくなりました。

    後半では、カーシェアリングやソーシャルレンディング、コ・ワーキングといった近年注目されているシェアビジネスがいくつかあげられています。従来の生活を置き換えるものにはならないとしても、シェアビジネスの存在が選択肢を広げ、新しい価値観を生み出していることは間違いないでしょう。
    自分は会社員しか経験がありませんが、コ・ワーキング、あるいはノマドの働き方というのはおもしろいと感じました。「自由に働く」という感覚でしょうか。最近は勤め人でも働き方の自由度が大きくなってきており、会社を飛び出して好きなところで働くノマドや、コ・ワーキングで社外の人とも積極的に情報交換していくことも、かなり市民権を得てきたように思います。自分がやってみたら、すぐに怠けてしまいそうだなあ。(汗)

  • シェア、クリスアンダーソンの「FREE」と色違いの見た目なので、「セット?」と思って読んだ方も多いと思います。
    僕は最初見た時は、「ハァ?」でした。なんで同じ表紙にしとん。と。

    全くピンとこなかったのですが、その後、Facebookの中の世界を感じたあとに読んだら、完全に引き込まれました!
    同じく「mesh」も一緒に読んで、FREEにもSHAREにも、六法全書のように横断的に読んだら、この三冊の中に現代のビジネスのあるべき姿がありました。

    この姿は当然に、「三冊meets自分」なわけでこれからも変容するとは思いますが、どうかセットで見てみてください。同じ解答に辿り着いたらシェアしてください\(^o^)/

  • 再読。トランジションタウンやエコビレッジについて関心を持って調べているうちに、「シェア」という概念の重要性に気付いた。シェアオフィスやコワーキングもそうだが、人間の能力を引き出す新たな可能性のひとつが、この概念かも知れない。本書では様々な「シェア」ビジネスの成功例を紹介している。共通して言えるのは「シェア」がいかに「カッコイイ」ものとして捉えられるか。その為のデザインは非常に大切である。また、インターネットの利用によって取引コストを下げたり、「信頼」「評価」という価値を定数化したりすることが、新たなビジネスを成功させる条件となる。個人の「所有欲」「こだわり」といった観念から、これからの我々はどれだけ自由になれるのかがポイントになるように思う。

  • シェアモデルを研究してまちライブラリーの運営方法の参考にしようと思いました。その意味でとても示唆に富んでいる本です。大量生産時代を創りだしたアメリカでさえ「もの」をシャアして大切に利用していこうという動きが出ているのは、時代が大きく変わりはじめているように感じました。社会資本を個人の思いやりやほんの少しの志で創られる可能性に挑戦したい気持ちを持たせてくれた本です。

  • これまでずっとあることに対して違和感を感じていた。それは、世間一般の方々のものの買い方でした。どんな人でも常に私より新しいものを持っていることでした。特に、電化製品についていうと、私のもっているものの話をすると、皆首を傾げました。新しいもの買えるくらい給料貰ってるでしょって。
    この本は私の価値観を一寸の狂いもなく表現してくれています。本の中で言うコラボ消費や評価資本の考え方は古くて新しい、皆さんが目から鱗の価値観で、必ず近い将来に共通価値観になると感じました。
    自分の違和感を代弁して頂いただけでなく、今後の方向性も示唆頂きました。
    一度立ち止まってゆっくり考えてみるよいテーマだと思います。日本には昔からある美しいやまとごころに通ずる価値観だと思います。とてもお勧めの良書です。文中にある一文が印象的です。革命の真っ只中では、その変化に気が付かないものだと。

  • これは久々に衝撃的だった。
    ソーシャルネットワークというツールの発明により、コミュニケーションのスピードと情報量が圧倒的に向上した。
    インターネット上では今までも行われていた情報やスキルの共有だが、そのスキームがどんどんリアルのコミュニティーにまで広がってきていて、その結果として社会的問題がいろいろなところで解消されてきている。
    何より、ここで紹介されている数多くのモデルは、全てクールですぐに使ってみたいと思うものばかり…。
    人はそういったサービスを一度体験することで、本当に必要だったのは「所有」や「消費」ではなく、「利用」や「体験」であることに気づく。
    またその際に生まれる「コミュニケーション」の心地よさを改めて実感する、まさにマインドセットされるのだ。
    マインドセットが連鎖することにより今後、確実にこのシステムは広がっていくであろう。
    P2Pのコミュニケーションシステムにおいて、重要なのは財務的な信頼以上に個人の人間性に対する信頼である。
    個人としての経験や信頼、すなわち本質的な価値をいかに蓄積し表現していくか、今こそ真剣に考えるべきときだと強く感じた。

  • フリーミアムの次は「コラボ経済」か。

    これまでの経済は個人が特定のモノを独占するという形だった。本書で取り上げられているのは、複数の人間が特定のモノをシェアするという「コラボ経済」についてである。

    「シェア」はけっして新しいスタイルではない。原始時代はむしろシェアが主流であっただろう。書籍を「市民共通の資産」とみなす図書館、ルームシェア、カーシェアなどは以前からある。

    しかし、「コラボ経済」はネット時代が本格化したことで、急速にその環境を整いつつあるのは事実だ。同書には多数の事例が紹介されており、限りない可能性を見せてくれる。

    コラボ経済はいいことづくしのように見える。「結果として」、地球環境にも優しい。共有すれば、過剰消費を避けることができるのだ。

    ただ、根本的に疑問なのは、少消費社会(=コラボ経済)へと変貌した時、資本経済はどうなるのか? 消費しなければ、ゴミも出ないが、経済も動かない。

    コラボ経済や「評判資本」(「ツイッターノミクス」で言うところの「ウッフィー」)は、経済の代わリ得るのだろうか? 

    残念ながら、こうした疑問までは答えていない。経済評論家は同書をどう見るのか、非常に興味深い。続編にも期待したいところだ。 

  • 今年読んだ本のなかで、最も影響を受けたひとつ。
    今後の事業戦略を考えるうえで、「ツイッターノミクス」でのウッフィーの考え方や、「プラットフォーム戦略」の重要性が、この本を読むことでひとつにまとまる。

    今後の資源問題や環境問題を考えると、コラボカルチャーやシェアカルチャーが、コアの「文化」になる・・・。
    と考えると、生産中心の経済指標から、幸せを反映した多面的な価値指標へと移行する。

    ◆過剰消費の20世紀における人の定義
     →信用履歴、広告、所有物
    ◆コラボ消費の21世紀における人の定義
     →評判、属するコミュニティ、何にアクセスできるか、どうシェアするか、何を手放すか

    ◆コラボ消費のシステム
    1、プロダクト サービス・システム(PSS)
     「所有」より「利用」の時代へ。
     ・利用した分にだけお金を払う
    2、再分配市場
     ・ソーシャルネットワークをとおして、中古品や私有物を、必要とされていない場所から必要とするところ(人)に配り直す。
    3、コラボ的ライフスタイル
     ・同じような目的をもつ人たちが集まり、時間や技術など目に見えにくい資産を共有する。

    こういったこれからの流れを念頭において、自己啓発や事業戦略の構築を行うべき。

  • 昨年末に発売されて話題になった「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」の続編に位置付けられるような一冊。米国のネット上での動きを「シェアリングエコノミー:共有型経済」という観点から見つめなおし、20世紀が育んだ消費文化へのカウンタ―としての方向性を提示したものである。まだ日本国内で活発に見られるような現象ではないし、本書で紹介されている事例も海外のものなので、なかなか馴染みにくい側面もあるのだが、この変化を日本に昔から根付いている”お裾分け文化”の進化系と捉えると、分かりやすいのではないかと思った。

    ◆本書で紹介されている”お裾分け”の進化系
    1.”お裾分け”が、お仕着せに終わる可能性が少なくなってきている
    「つまらないものですが」と言われていただいたものが、本当につまらないというケース、「お口に合いますかどうか」と言われて出していただいたものが、本当に口に合わないというケースは、誰しも経験があるのではないだろうか。このような不幸なケースは誰が悪いわけでもなく、こちらのニーズやウォンツが顕在化されていない仕組み自体に要因があることが多い。ただし、昨今のネット上で見られる変化のように、情報発信がどんどん簡易化されていくことにより、このような不幸なマッチングは確実に減少していく。考えてみれば、Facebookの「Like!(いいね!)」と「Share(シェア)」という二つのボタンは、実によくできていると思う。一見同じような振る舞いをする、この二つのボタンは、似て非なるものである。「Like!」は、的確な「Share」を呼び込むべく”自分のために行うもの”、「Share」は友だちの顕在化されたニーズを満たすべく、”他人のために行うもの”ということなのだろう。

    2.お裾分けの相手が、ご近所さんには限らなくなってきている
    これまでのお裾分けとは、地縁・血縁、リアルな人間関係等をベースに行われてきた。この根底にあるのは信頼関係というものである。しかし、顔の見えるソーシャルメディアが台頭することによって、信頼できるクラスタ―は、流動化、拡大化することが可能になった。これは同時に、お裾分けの対象が、広がっていくことも意味している。一番大きな変化は、システム化されることで、お裾分けの片割れがクラウドであるなど、一対一には限らなくなってきているということであろう。これは貧富の格差解消など、大きな社会問題を解決しうる可能性もあることではないかと思う。

    3.お裾分けする内容が、モノからサービスへと範囲が拡大している
    1、2の変化によって、お裾分けを効率的、システム的に行うことが可能になれば、お裾分けする内容はモノには限らないという変化を引き起こす。本来は分割できなかったようなものでも、多くのニーズが可視化され、所有から利用へと目的を変えることで、シェアが可能になる。車、バイク、ファッション、玩具、映画、ゲームといったモノですらマイクロ化されていく、新しい動きがおこりつつあるということなのだ。

    こうして考えると、この古くて新しい”シェア”という文化が、お裾分け文化の発達している日本で本格的に根付くのも、そう遠くはないことのように思える。このような動きが加速し、世の中全体が効率的に再編成されると、経済全体が緊縮してしまうような懸念も感じるが、またそこに新しいビジネスが生まれていく可能性も大きい。そして、一番大切なことは、この<シェア>という新しい動きが、貨幣経済の全盛時には見られなかった”新しい価値観”をシェアしてくれるかもしれないということなのだ。

  • シェアは本当に望ましいモデルなのだろうか。その先コモンズと結びついた時、どうなるのか。やはり、マクロな問題ををシェアで解決できると考えるのは少々難しいかなという感想。というのは、経済成長のドライバーとして私的所有がよくあげられるが、シェアがそれに変えて成長を促すとは思えない。ミクロなビジネスにお話としてはありだろうね。

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著者プロフィール

作家、ソーシャルイノベーター。『シェア』(2010)で提唱した「共有型経済」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。またオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている。

「2018年 『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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