血のジレンマ サンデーサイレンスの憂鬱 ( )

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140814703

感想・レビュー・書評

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  • 競馬自体最近はそんなに観ないし、やらないです。ただ、昔からサラブレッドと呼ばれる競走馬の血統とか系譜とかはロマンがあって大好きなんです。あの時の子がこんなに大きくなったのか〜っていう親心的な物もあったり、そんな私にピッタリだった本。
    何が面白かったって、この本は2011年に出版された本で未来(現在)のことが書かれていない事!そんな本を今になって読み始めて、サンデーサイレンスという超超種牡馬を軸にした日本競馬会のジレンマが現在にどう影響を及ぼしているのかを当てはめながら読むとまあ面白い!フワッと読めたのもgoodでした。

  • 日本競馬界の抱える不安要素を、わかりやすく解説してくれている。
    JRAが、社台グループの運動会と揶揄されていることについても、触れられているのが新鮮。テレビ&ラジオでの競馬中継では、このことについて、批判的な意見はまずとりあつかわれない。
    馬券ファンにこそ、読んでいただきたい。

  • 血統専門家が書いた本。
    競馬初心者の私からすると、各所で歴代の名馬について触れており、
    名前しか知らなかった競走馬の血統やその背景について知る事が出来る。

    が、やや同じ言い回しが多く、結論も繰り返し述べられているところがマイナス。

  • 日本競馬会をとりまく状況が、この本により、手に取るように分かる。サンデーサイレンスという1頭の馬の驚異的な成功。半世紀に一度レベルの成功がいま日本で起きており、このレベルの奇跡的な成功は、血の濃さが行き着くところまで行き着いてしまい、必ず袋小路に至るという過去の歴史が語られる。
    ドキュメントとして優れた本。本書が予言の書となる可能性は高そうだが、その歴史を目撃したくはない。

  • およそ100年前のイギリスにおけるセントサイモン系の爆発的な発展とその後の急速な没落。今日の日本におけるサンデーサイレンス系の血の飽和は、この「セントサイモンの悲劇」と同じ運命をたどるのではないか。また、サンデーサイレンス旋風は社台グループの興隆に大きく寄与したが、同時に中小の生産牧場に壊滅的な打撃を与え、格差を助長したのではないか。本書はこうした「血のジレンマ」と「格差社会」を二本軸として、サンデーサイレンスが残した負の遺産についてスポットを当てていく。

    従来の日本の血統常識では、繁殖牝馬の質の差は優秀な種牡馬を配合することでカバーすることができると考えられていた。ところが、サンデーサイレンスの場合、自身の長所を最大限に産駒に伝える一方で、配合牝馬の資質をもうまく引き出してくるという、種牡馬として類い稀な能力を有していた。そのため、中小牧場と比べて繁殖牝馬の質が圧倒的に高い社台グループがサンデーサイレンスの恩恵に浴して大成功を収めたのである。

    しかし、サンデーサイレンスの革命的な大躍進は、一流の種牡馬も一流の繁殖牝馬もみな「父サンデーサイレンス」という異常な事態をもたらした。両者は極度の近親交配となるため配合することができない。したがって、サンデー系の種牡馬は、わずかな非サンデー系の肌馬をめぐって、身内同士で抗争を始めることになる。「血の共喰い」である。

    こうした状況を打破すべく、現在社台グループは非サンデー系の欧米の種牡馬や繁殖牝馬を大量に導入し、サンデー系の血の滞留の解消を図っている。それ自体はきわめて賢明で合理的な判断である。しかし、著者が指摘しているように、「(海外から種牡馬や繁殖牝馬を買ってきた)そのお金は国内のシェアを食って得たものなのだ。極端な話、社台グループは中小の牧場を疲弊させたお金で、海外から種牡馬や繁殖牝馬を買ってきている構図になる」(p.217)。おそらくここが最大の問題点なのだろうと思う。

    資金の一方的な海外流出を防止するという観点から、またノーザンダンサー系やミスタープロスペクター系で飽和している欧米の生産界に活力を与える観点から、著者はサンデー系の種牡馬をどんどん海外に放出すべきだと提言する。私もおおむね同意する。ただ、そうした場合、日本国内におけるサンデー系種牡馬の希少価値が相対的に上がるため、中小牧場がサンデー系種牡馬を配合したくてもできないような、そんな事態が生じてくることも考えられる。そうなると「格差社会」の解消という課題の解決は遠のいていくだろう。

    そうした点も含めて、この「血のジレンマ」は相当に深刻な問題である。

  • サンデーサイレンスと社台の革命といえるほどの歴史的成功と寡占状態に表裏一体でつきまとう憂いと影。血統学関連の3作目。

  • 結局のところ、生物学の常識、異質の受入がキーポイントと言えそう。
    強烈な血として、サンデーサイレンス系 が一世を風靡した時は、サンデーサイレンス系=同質 が強みを発揮。
    したものの、そののち、新たな革新を生み出したのは、異系統の血が必要だったということ。

    生物学もヒトの社会も、不変の真理と言えそう。

  • ラジオDIGで紹介されていて興味を持った。

    12月22日(木)「有馬記念に見る競馬界の今」http://www.tbsradio.jp/dig/2011/12/post-1490.html

  • あとがきに書かれていますが、サンデーサイレンスと競馬界の格差社会を絡めながら書かれていて、その視点、問題提起が鋭いなぁと思いました。

    血統のロマンという明るい話と、その反対に影を落とす部分のコントラストが印象的です。

  • サンデーサイレン巣を中心とした現代競馬の発展の理由、そしてこれからを血統面から語られている本。
    血統の話にとどまっていないので、血統好きでなくても読みやすく楽しめます。
    なぜ最近歴史的名牝が誕生するのか?の解説には納得です。
    すべての競馬ファンに読んでもらいたい、そんな本です。

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