- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140814734
作品紹介・あらすじ
博物館には、別の顔がある。展示室の裏側に縦横に広がる巨大な迷路、人目に触れることのない秘密のコレクション、繭のような小部屋で一心不乱に研究にのめり込む人々。なかでも世界最大級の大英自然史博物館には、ここでしか通用しない大原則がある。いわく、「なにものも永遠に捨ててはならない」「おしゃれをしてはならない」「粗忽者と言われるくらいがよい(研究以外では)」。古生物学の世界的権威である著者が、30年間を過ごした古巣の素顔と、そこに生息する浮世離れした住人たちの姿を、軽妙な語り口で綴った「大英自然史博物館全史」。
感想・レビュー・書評
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『乾燥標本収蔵1号室』 - HONZ
https://honz.jp/articles/-/2453
乾燥標本収蔵1号室 大英自然史博物館 迷宮への招待 | NHK出版
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000814732011.html
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ずっと読みたかった一冊。
元学芸員が語る、大英自然史博物館の知られざるエピソード集。
三葉虫が専門の著者。収蔵庫を舞台に繰り広げられたアカデミックな標本以外の珍品噺も収録されている。この本は、博物館の伝統を築き上げた人々の歴史と数々の逸話の標本箱でもある。 -
大英自然史博物館で長らく古生物学者として働いてきた著者
が、博物館のバックヤードとそこに「棲む」人々を紹介した
本である。読み物としてとても面白く、あっという間に読み
終えることとなった。博物館の舞台裏を紹介する本という
のも確かなのだが、その実「博物学」あるいは「自然史学」
の素晴らしさと重要性を訴える本であった。どの分野でも
そうなのだろうが、地味な基礎的研究に予算が割り当てられ
ないのは大問題であると私も思う。 -
大英自然史博物館の舞台裏
大英自然史博物館は、大英博物館の一部として成立した。
この本では、著者が勤務する博物館の歴史とそこで活動する人々の姿と業績に焦点を当てて紹介している。内容は著者の専門分野である古生物学や生物学、鉱物学の様々なエピソードを集めたものです。博物館の多くの職員は、自然に存在するものを研究し、分類するのが主な仕事です。数十年に渡って、ひとつのテーマを研究する人もおり、意欲と根気が必要な職業です。そういう人達の中には、いろいろ変わった人も多くて、エピソードに事欠かないようです。著者は多くの先輩や同僚達を紹介していますが、ほとんどが一般には無名の人達で、読んでいて映画のスタッフを一人一人紹介されているような印象があった。まあそれも悪くはないのだけれど、読み終わったら誰が誰なのか全く名前を覚えていなかった。(さすがに歴史に残るオーエンやハリソンの名前は知っているが)博物館の舞台裏の紹介は面白いテーマでエピソードの楽しめるのですが、もう少し系統立てて仕事の中身を紹介して欲しいと思いました。 -
博物館の研究員たちの人間描写が面白過ぎる。
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博物館に保管されている標本、
そこで働く人たち、
それらを含む大英自然史博物館の歴史と今。
著者が経験してきたエピソードを多数紹介。
ゲノム解析を筆頭とした科学技術の進歩。
"稼ぐ"ためにテーマパーク化される博物館。
理解と感謝を示しつつ、
古き良き時代として昔を懐かしみつつ、
著者のちょっぴり複雑な心境も伝わってくる。
軽妙な文章なので読みやすくはあるが、
あくまで「著者自身のアーカイブ」の紹介であり、
分類されているようで、
全体としてはまとまってはいない印象を受ける。
まさに、自然史博物館らしいのかもしれない。
一番印象的だったエピソードは、
「ラセンウジバエとの戦い」だった。
遺伝子操作で不妊化したオスを大量に放つことで、
集団としての繁殖力を失い絶滅させる。
生物学者からすれば普通なのかもしれないが、
私にはとても斬新な発想に感じて新鮮だった! -
大英自然史博物館の学芸員である筆者がその裏舞台で活躍する、してきた人たちとその人たちを取り巻く政治的な、社会的な変化を書いた一冊。 学芸員という仕事に興味があるので読み始めたが、長期的な目では大変必要な仕事であるにも関わらず、短期的な利益を上げられないため、境遇が悪い状態であるのは悲しいことだ。日本ではキュレーターの仕事も学芸員に含まれているので余計に仕事は多いだろう。 いつか分類学の長期的研究が必要であると理解を示してくれる社会がやってくるのであろうか。
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著者いわく博物館の魅力は収蔵品ではなく、来館者に見えないところで働く人々で決まるそうだ。プロフェッショナルの世界には変わり者も多く、熱心が故の奇妙な行動の数々から博物館の裏の歴史を垣間見ることができる。