MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

  • NHK出版
3.94
  • (234)
  • (374)
  • (204)
  • (29)
  • (8)
本棚登録 : 3359
感想 : 339
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140815762

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • まず私は著者に詫びないといけない。
    本書を読む前、メディアから漏れ聞く情報で、
    「3Dプリンタの入門書」程度なのではないかと想像していたことを。

    とんでもない。本書は、まさしく「新たな産業革命」を
    確かに描き出した、ものづくりの過去から現在、未来に至るまでの
    マイルストーンとしての記録と言えるようなものであり、
    また著者クリス・アンダーソンの家族と個人の過去から未来への
    メイカー・スピリットの継承を記憶した書でもある。

    まとめなどは下記リンク先に譲って、
    とりあえず私の所感をメモっておくと。

    ウェブという手段と、オープンソースという思想が
    不可分に結着し、低コストで国境や言語を超えた情報交換を可能にした結果、
    まずさきに情報の世界に革命が起こり、
    しかしものづくりについては、技術進歩や文化普及がボトルネックで
    進んでいなかったのだが、
    3Dプリンタ(これだけを取り出すと、本書を読む前の私のような誤解が
    生まれやすいので気をつけないといけないが)のような卓上成形ツールや、
    あるいは少数受託生産というビジネス方式が続々と発展したことで
    ボトルネックが解消されていき、
    そして資金調達という、数千年来の人類がビジネスを営むうえで
    課題であり続ける部分を、ウェブ先導のクラウドファンディングという
    文化の成熟によって、イニシャルで多数の個人からお金を集めるという
    モデルが成り立ったことによって、
    ついに「メイカー」なビジネスが、既存の大量製造方式で応えられなかった
    課題、顧客需要を満たすものとして、世界を変えるフェーズに
    入ってきた、というところかと思う。

    このムーブメントは本物で、本当に世の中へのインパクトをもたらすだろうと
    思う反面、
    しかし、私は日本からあんまり出たことがないのもあって、
    たとえばアメリカのITカルチャーの強いところでのみ騒がれているだけなのか、
    もっと広いレベルで今時点でインパクトがあるのかがよくわからん、とも思う。

    たとえば日本で見ると、やっぱり大企業のものづくりへの信仰が篤いし、
    さもなくば、本書で出てくる「エッツィー」的な手作りを讃える文化、というところで
    その間を切り開いていくようなメイカーな感じはまるで見られない気がする。

    ウェブをはじめとした情報のみで完結する世界と違って、
    現実のものが動くのは、その摩擦力の大きさ、そして既存のリプレイスの
    コストが壁になって、なかなか変わらない。
    もちろん、著者はそんなことはよくわかっていて、それでもなお、
    今世紀はどんどんメイカー的な流れが、これまでのビジネスのあり方を変え、
    大企業が人件費の安いアジアに製造拠点を移すだけ、という手法ではなく、
    デザインから、ロボットを駆使した生産(受注委託も含め)によって
    製造の拠点は先進国に戻ってくるだろうと予測している。

    さて、日本だとそのあたりはどうなのだろう。

    -----------------------------
    まとめ-「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」に出てくるサービスや会社や人物を調べてみた。
    http://bit.ly/1bfMaA5

    『MAKERS』を1章140文字でまとめてみた - NAVER まとめ
    http://bit.ly/1fvjvbC

    ///

    http://www.amazon.com/dp/B0083DJUMA
    Makers: The New Industrial Revolution [Kindle Edition]
    Chris Anderson (Author)

    ///

    (レビューは
     http://evolution.edoblog.net/
     に投稿のもの)

  • ドローンで有名な3D Robotics社のCEOであるクリス・アンダーソンによる、製造業のこれからを綴った本。

    今後は大企業による大量生産ではなく、個人や小企業による多品種少量生産の時代がやってくると予言しています。

    時代は正にクリス・アンダーソンの言う通りになりつつあります。

    その分企業でエンジニアをしている人にとっては選択が迫られている時期なのかもしれません。

  • 少し前、TVで3Dプリンターの展示会のニュースを見た。ビックリした。3Dプリンターとはコピー機である。二次元ではない。三次元なのだ。SFの世界がそこにあった。この本は、そういう世界の話かと思いきや、少し違った。話はもっと先に行く。プリンターは一部であって、そこから新しい次元の産業革命が始まっているというのだ。内容的には、私は製造業に疎くて付いていけなくなる場面も多かったが、幸い訳者後書きがうまい事要約してくれていた。少し長いが、紹介する。

    (略)アンダーソンが指摘するように、ほんのひと昔前まで産業機械だったコンピュータやプリンターは「デスクトップ」とは対極にあるものだった。しかし、ひとたび「デスクトップ」と「コンピュータ」が結びついた時、人々の生活が大きく変わった。そしてそれがインターネットにつながったとき、革命が起きた。でも、それはまだ本当の革命ではないのです。本当の革命は、それが実体経済に影響を及ぼすとき、つまりものの作りのやり方が変わるときに起きるのです。とアンダーソンは言う。「デスクトップ」と「工作機械」が結びついた時、それまで大企業のものだった製造の手段を個人が持つようになり、ビットの世界で起きてきた革命がアトムの世界で起きるのです、と。スティーブ・ジョブズがパーソナルコンピュータを通して世界を変えたように、製造の手段を持つ無数の個人、つまり「メイカーズ」が世界を変えることができるのだという。しかも、それが社会と経済に及ぼす影響は、ビット世界の「フリー」や「ロングテール」よりも、はるかに大きく、深いものになる、と。
    個人によるもの作りの革命を後押しするもう一つの大きな変化は、ブローバルなサプライチェーンが個人にも開かれてきたことだ。材料を調達し、部品を製造し、それらを組み立てるプロセスは、これまで大企業に独占されてきた。それが、ポノコやシェイプウェイズなどのウェブの製造委託サービスや、アリババなどのマッチングサイトを利用することで、プロ用の工作機械を所有しなくても、個人が大企業と同じ製造能力を手に入れることができる。お金がない?だったらキックスターで資金を集めればいい。それを売るには?ウェブサイトを立ち上げてオンラインで販売すればいい製造業を起業しようと思ったら、パソコンとインターネットがあればこと足りる。(略)

    あとの「要約」は本書を読んでないとわからない言葉だらけなので省略します(これでもわからない人にはわからないと思います)。ひとつ大事なことは、メイカーズは特許権を主張せずに全て公開していることです。もちろん、その方がはるかに利益があるからそうしているのです。イマイチ仕組みがわからなかったのですが、事実が証明しているようです。

    204pで、近く(アメリカ)と遠く(中国)で製造委託の利益が出る波を図で示していた。100個単位の試作品ならばアメリカ、1000個単位の製造委託ならば中国、柔軟な生産の必要性があり自社工場の一万個単位ならばアメリカ、費用削減の必要性があり10万個の製造委託ならば中国という風である。

    これだけをみればまさにTPPの世界である。関税障壁が無い方が更に利益を産むだろう。しかし、一方でこれらを進めるのは大企業ではなくて、個人や中小業者だというのは、「新しい世界」のように感じる。マルクス経済の立場からの分析を切に望みたい。

    なにか「途轍もない変化」が始まっている気がした。

    2013年7月17日読了

  • 急にメディアが3Dプリンター推しになったと、NHKニュースを見ながら思っていたが、この本はNHK出版だった。
    ともあれ時代を映したテーマ。アンダーソンはロングテールやフリーミアムを言い当てた人だ。「一家に一台3Dプリンター」は決して夢物語ではない。
    彼が言うメイカー・ムーブメントは、・個人が製造する・個人向けに製造する・ベンチャーが製造する・ベンチャーに出資する個人・オープンソースをソーシャルに共有しながら製造する、など多岐にわたる。どれも有機的につながっており、新しい時代を示唆する。
    折しも、先日日本でFabLabを立ち上げた若き才人、田中浩也氏の講演を聞いたところだったので面白さ倍増。彼は「ジョブズがパソコンを作り始めたときと似ている。私はジョブズになる。」と豪語した。気持ちいいし期待する。
    良著。こういう本はタイムリーに読まないといけない。

  • 読むのは初めてだが、内容については各所で語られているので、だいたい理解できる話。
    私自身としても、個人のものづくりが中規模なビジネスになっていって、老後をそれで過ごせればよいな、と漠然と考えていたところなので、それを具体的に書いてある本書は参考になる。とりあえず、3Dプリンタを使ってなにか作るプロジェクトは、早急に再始動したいところた。
    以下もあわせて。
    http://anoda.cocolog-nifty.com/mad/2013/09/makers-6c5d.html

  • ものづくりのロングテールすげー

  • ものをつくる。本能に根ざした行為。大人になるにつれていつしかできない理由を探すようになり、ありものですませるようになって久しい。これまで趣味、ビジネスでのモノづくりの制約になっていたものが徐々になくなっていく世界が克明に描かれている。これまであきらめていたものを作ってみようかなぁと思わせてくれる一冊。

  • FREEと同義なのではあるが、オープンソースによるイノベーション。文明発達スピード向上の論理はとてもとても納得できる。鈍重な大企業組織のスピード感では新しいイノベーションを生み出せない時代がやってきたのだと、昨今の大企業の凋落をみていると、つくづく感じる。
    もっともっと、インターネットインフラが進み、3Dプリンタのようなイノベーションを形にできるデバイスが普及し、大企業レベルの販促プロセスが汎用的に一般でも活用できるシステムが普及し。。。資金力がなくとも社会にイノベーションが起こせるツール群が普及する。もっともっと社会が面白くなるのではないかと、ワクワクできる本でした。

  • 世界規模で進行するモノのロングテール、3DプリンタやCNC(コンピュータ数値制御)で可能となった新しい時代の家内工業の事例について説明した一冊。ビットではなくアトムの世界でもロングテールが進行しつつあること、製造手段の借り手としてDIYなモノづくりがビジネスとして成立しうること、クラウドファンディングを通じて資金調達と市場調査を同時に出来る環境になりつつあることを示す。メモ。(1)ジョイの法則。一番優秀な奴らは大抵外にいる…。webのお蔭で人は教育や経歴に関わらず能力を証明することが出来る…。会社はより小規模にバーチャルにカジュアルになる。…彼らは所属意識や義務からではなく能力と必要性に従って離散集合する(2)要するに数百万個ではなく数千個単位で販売される特殊な電子製品ならアメリカで製造することは可能なのだ…。中規模の製造企業にとってそれは理想的なニッチ市場だ。(3)パブリックなモノづくりは製品開発をマーケティングに変える。

  • CADを主体とする設計図のデジタル化とオープンソース化がもの作りに与えるインパクト。それで完成したものを少量外注、発売できる。それが市場に受け入れられるかどうかを、キックスタートという商品を買いたい人からお金を先に集める仕組みで調べ、資金調達する。アメリカのこのもの作りの流れは、必ず日本にも来るだろうと思う。国民性にも合っているし。

    ・コンピュータが本当の意味で僕らの文化を変えはじめたのは、それがネットワークにつながったとき、最終的にはすべてのネットワークのネットワークであるインターネットにつながったときだった。それでも。究極の経済的インパクトが感じられるようになるのは、ソフトウェアによって様変わりしたサービスの分野ではなく、二度の産業革命と同じ領域、すなわちもの作りの世界が変わったときだろう。
    …「無重力経済(ウェイトレス・エコノミー)」、つまり情報、サービス、知的財産といった形のないビジネス(「足の上に落ちても痛くないもの」からなる経済)は、何かと話題になりやすい。しかし、現在、ビット経済の大部分を占めるのはこの形のない情報産業で、大きいといってもまだアメリカのGDPの五分の一に過ぎない。そのほかのすべての産業、たとえば、サービスセクターのもっとも大きな部分を占める小売業はものを作り、運び、売る活動にほかならない。

    ・このモデルが強力なのは、それがすでに僕らの周りに存在する「隠れたエネルギー」(作家のクレイ・シャーキーは、これを「知力の余剰」と呼んでいる)を利用しているからだ。

クリス・アンダーソンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ビジャイ・ゴビン...
リチャード P....
デールカーネギ...
ジャレド・ダイア...
エリック・リース
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×