新・観光立国論 モノづくり国家を超えて

  • NHK出版
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816783

作品紹介・あらすじ

地方創生の切り札となるか-訪日観光客3000万人時代に向けた、真の統合型リゾート(IR)戦略とは!

感想・レビュー・書評

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  • 人口減と高齢化へ向けて異次元のように進行する日本は、モノづくり国家を超えてサービス産業の高度化を図らねばならない。その中核は観光産業の隆盛である。これがこの本の主旨である。
    資料編の充実も特徴である。この本は「観光」を巡る発想のヒント集でもある。

    ここでは、世界と日本を巡る事実や数字ではなく、観光を「思想」としてとらえるキーワードをを抜き出してみたい。

    移動と交流という思想。人類は移動によって進化してきた。グレートジャーニー。適者生存。移動は人間を賢くする。刺激を受けて知恵がついていく。移動と交流によって自分を磨き、眼を開き、世界観を進化させる。移動は消費を促す。
    創造的観光。変化とドイドキ感。聖地巡礼。宗教的寛容さ。古今東西の文化の混合。安全と治安。クールジャパン。歴史意識を広げる旅。インダストリアルツーリズム。幸福探究ツーリズム。創造的な物語。体系。
    4つの課題:国際収支の天井(脱工業化社会。リーディング産業。食とエネルギーの外部依存の低下。工業生産力モデルの限界。日本の貧困(中間層の没落。行動と学びの欠如。)、異次元の少子高齢化の進行(人口減少化のビジネスモデル。コンパクト・ネットワーク。)
    グローバル化の中で移動と交流によってネットワークを形成し豊かになっていく。移動は活力をもたらし、人間を賢くする。進化の鍵は驚きを覚える力。気づき。二地域居住。非日常生活の体験と追及。解放感の中で驚きの発見による進化。驚きとはつながりを理解する知性。歴史と空間と物事のつながり。時間軸と空間軸。相関関係と相互依存関係。外は広く、内は広い。
    立体的な相関。ダイナミックで立体的なクラスター。統合と総合。ビッグデータ時代。サービス・エンターテイメント産業。異なる地域を結び、歴史を掘り下げていく。付加価値。
    移動と交流という思想(移動と交流は人間を賢くし活力をもたらす)。驚きを覚える力。旅の遺伝子。移動と交流(観光)による経済の活性化。二地域居住などの多様なライフスタイル。観光と定住の中間形態。

  • シンクタンクの出す本としてはトップレベルのものであろうが、結局何をすべきかという理論と実践の乖離が大きいのは否めない。

  • アジアダイナミズムへの対応
    工業生産力モデルからの脱却
    統合型リゾート

  • 「2015年上半期に読んだ本の中で、ベストの1冊は?」と聞かれれば、木下斉氏の「稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則」(NHK出版)と本書、どちらを選ぶか正直、迷ってしまう。

    なぜ、日本は、観光立国を目指すようになったのか。その理由として、産業構造の変化(モノづくりからサービス業への転換)や少子高齢化など、我が国が抱える様々な課題を解決する「切り札」として、注目されているからである。

    この「観光立国」という考え方は、「サービス産業の高度化」を目指している。
    著者が言うとおり、日本には、クラシックなものとモダンなものが混在している。それは、何も都心部や古都京都に限ったものではない。
    地方には、数多くの魅力ある資源があり、それを発掘し、創生していく。
    これにより、地方雇用者の給与も上昇し、モノづくり全盛期の給与水準まで持っていくことが可能となる。これが「サービス産業の高度化」だ。

    私たちは、自分たちの住む地域に値する魅力をはっきり示し、創造力と統合力を結集し、真のIR(統合型リゾート)戦略を立てなければならないことを、本書は教えてくれた。

    主として本書は、行政職員やまちづくり関係者をはじめ、地域を愛する住民すべての皆さんにおすすめしたい。

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著者プロフィール

1947年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究課程修了後、三井物産入社。調査部、業務部を経て、ブルッキングス研究所に出向。その後三井物産ワシントン事務所所長、三井物産常務執行役員等を歴任。現在は日本総合研究所会長、多摩大学学長。著書に『人間と宗教』『日本再生の基軸』(岩波書店)、『ユニオンジャックの矢~大英帝国のネットワーク戦略』『大中華圏~ネットワーク型世界観から中国の本質に迫る』(NHK出版)、『若き日本の肖像』『20世紀と格闘した先人たち』(新潮社)他多数。

「2022年 『ダビデの星を見つめて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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