植物は〈知性〉をもっている 20の感覚で思考する生命システム

  • NHK出版
3.86
  • (33)
  • (36)
  • (28)
  • (10)
  • (0)
本棚登録 : 871
感想 : 55
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816912

作品紹介・あらすじ

「植物に知性はあるのか?」この問いをめぐって、はるか昔から論争がくり広げられてきた。トマトは虫に襲われると、化学物質を放出して周囲の仲間に危険を知らせる。マメ科の植物は細菌と共生し、それぞれにとって必要な栄養分を交換しあう。動けないからこそ、植物は植物独自の"社会"を築き、ここまで地球上に繁栄してきた。その知略に富んだ生き方を、植物学の世界的第一人者が長年にわたり科学的に分析し、はじめて明らかにした刺激的な一冊。本書を一読すれば、畑の野菜も観葉植物も、もう今までと同じ目では見られなくなるだろう。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 私ら人間は、植物に操り動かされているんじゃないか?という気にさせられる本。

    奴らは、生き残るためにあらゆる手を使う。
    植物を あなどってはいけない。

    マンクーゾさんというイタリア人に この本を書かせたのもまた植物なのだから!?

    http://zazamusi.blog103.fc2.com/blog-entry-1201.html

  • 植物の世界も「不思議な世界」満載。
    いかに人間が「思い込み」や「偏見」で、
    人間以外のものを見ているか、ということをこの本でも思った。
    植物と日々暮らしている僕は、「不思議さ」も感じさせてもらっている。
    しばらくは「植物」関係の本を読んでいきたい。


    〈本から〉
    植物は固着性(移動できないということ)をもつ生物であり、動物とは違う方法で進化し、モジュール構造(たくさんの構成要素が機能的にまとまった構造で、各部分は交換可能)でできた体をもつようになった。

    植物は、いわゆる「群知能」〔集団の個々の構成員の総合作用によって全体の協調性が生み出され、高度な集団的振る舞いを可能にする知性〕も持っているという。

    光をめざして動くこのような性質は、「屈光性」と呼ばれている。

    「日陰からの逃走(被陰反応)」

    光を求めるこの性質は「正の屈光性」、正反対の振る舞いは「負の屈光性」

    ゴットリープ・ハーベルラント(オーストリアの偉大な植物学者 1854〜1945)によれば、私たちが角膜と水晶体を使って外界のイメージを再構築しているように、植物も表皮細胞を使って同じことを行っているのである。

    植物は「におい」によって、もっと正確に言えばBVOC(Biogenic Volatile Organic Compounds=生物由来揮発性有機物)の微粒子によって、周囲の環境から情報を得たり、植物どうしや昆虫とのコミュニケーションをはかったりしているのだ。これはたえず行われている。植物は自分でもにおいを作り出す。例えばローズマリー、バジル、レモン、カンゾウなどのにおいは、明確な意味を持つメッセージだ。においは植物の「言葉」なのだ!

    植物の成長に影響を及ぼしているのは音楽のジャンルではく、音楽を構成する音の周波数なのだ。ある一定の周波数、特に底周波(100〜500ヘルツの音)が、種子の発芽、植物の成長、根の伸長にいい影響を与える。逆に高周波は成長を抑える効果がある。

    植物はうまい解決法を見つけた。短い距離の場合、電気信号は細胞壁に開いた微小な穴を通って、一つの細胞から別の細胞へと伝えられる。この現象を「原形質連絡」という。長い距離なら(たとえば根から葉への伝達)、主に「繊維管束系」〔植物の茎の中を縦に走る柱状の組織の集まり〕が使用される。

    昆虫に「訪花の一定性」を求めて、それを守らせているのは植物の方だとわかるだろう。ただ、どうやってそれを行っていうのか、まだ何も分かってない。

    動物の並外れた擬態能力でさえ、ランの一種であるオフリス・アピフェラには、到底かなわない。(略)この植物は三重の擬態を行っていると言える。雌の体の色と形(資格をだます)、毛で覆われた体表面(触覚を騙す)、独特のにおい(嗅覚を騙す)である。(略)そして、雄バチが雌バチだと思い込んでいるものと夢中で後尾しているとき、突然、花の仕掛けが作動して、雄バチは頭から花粉をかぶせられる。(略)雄バチは自分の体ごと花粉を次の花に運ぶことになる(そして受粉させる)。この関係を見れば、植物と昆虫とではどちらが立場が上なのか、全く明らかだろう。

    サクラは受粉の時、とてもきれいな白い花を咲かせる。(略)ミツバチは白い色がよく見えるので、楽々と花にたどり着くことができる。でも、赤色は見えない。サクラの果実(サクランボ)が赤い色をしているのはミツバチのためではなく、別の動物を呼び寄せるため、つまり鳥のためだ。赤色は、葉の間でもよく目立ち、遠くからでもよく見える。そのため、飛んでいる鳥でも簡単に見つけることができる。(略)とは言え、サクランボが赤いのは、種子が熟しているときだけである。熟すまでは緑色なので、葉の色に紛れて、鳥には中々見つからない。

    地球上のバイオマス(生物の総重量)のうち、多細胞生物の99.7%(実際は99.5〜99.9の間で変動し、その平均値が99.7%ということ)は、人間ではなく、植物が占めている。人類と全ての動物を合わせてもわずか0.3%に過ぎない。この事実からすれば、間違いなく地球は「緑の星」だと定義できる。

    私たちは「脳の偏見」(脳がなければ知的ではありえないという偏見)によって、植物もこれらの生物も、知能を全く持っていないと思い込んでしまっている。そうした私たちの態度に科学的根拠はない。

    二十世紀初頭に、現代インドの優れた科学者で、インド現代史に偉大な足跡を残した人物でもあるジャガディッシュ・チャンドラ・ボース(1858〜1937)は、植物と動物は根本的に同じであると主張した。彼は次のように記している。「これらの樹木は、われわれと同じ生命を持っており、食事をし貧困に喘ぎ、苦しみ、傷つく。盗みを働くこともあれば、助け合うこともできる。友情を育むこともできれば、自分の命を子どもたちのために犠牲にすることもできる」

  • なかなか刺激的なタイトルで、ちょっと疑似科学的な内容を期待したのだが(それはそれで好物なので)、いたって真面目?な本だった。
    要は、「知性」をどう捉えるか、という話なんだと思う。ぼくらの文脈で知性というと、ある事象をどう解釈するかとか、それに基づいてどう判断を下すかとか、比較的短い時間軸での知的能力を示すと思うのだが、本書で扱われる植物の「知性」は、植物が進化する過程で手に入れた各種の適応能力を示しているようだ。動物でいえば、たとえば免疫反応みたいなものを「知性」としているようで、確かにそれを「知性」とするなら、植物は明らかに知性を持っている。

    その辺の違和感を別にすれば、なかなかおもしろかった。
    基本的に動くことのできない植物は、体をユニット構造、つまり代替の効く部品から作り上げた、という見方はたしかにそうだ、と思う。動物は頭がもげたら生きていけないし、腕が取れたら(普通は)生えてこないので不便だ。しかし植物はそうではなく、草食動物に葉っぱを少し食べられたくらいでは枯れたりしない。そういう植物がいるから我々動物も生きていける、というのも全くその通りだ。
    本書の頭の方で、そういう植物の研究が、動物の研究に比較して冷遇される傾向がある、という愚痴が出てくる。なるほどそうかもしれない。

  • 図書館本。
    植物に知性がある事を様々な視点から考察している。
    著書によると我々動物は5感だが、植物は20もの感覚があると言う。
    特に興味深かったのが視覚だろうか。朝顔などの例で言えば、つるが支柱を探し伸びていくのは、明らかに周りが見えていないとできない事。動物のように光の反射から像を結びのではなく、電磁波などの音波で感じているのかも知れないが、これは我々動物で言う視覚と言っていい事だと思う。
    他には根っこの先、根端は情報センターであり、進む方向を決めるべく水分の有無や障害物など、沢山の情報を処理している。

  •  植物が、人間や動物と同じように動き、感じ、眠り、コミュニケーションを取るなど、知性と定義されるものを持っていることを提言した本。
     植物が地球上の生物の総重量のうち、多細胞生物の99パーセントを占めながらも、思い上がった人間が「我々こそが地球の支配者である」と思うようになった原因を探るところから始まるのは痛快だった。そして植物が動物と同じような知性を持っている点とともに、人間が「我々こそが地球の支配者である」と考える上での矛盾点を挙げていく。「人間は、自分と異なるタイプの知性を認識することができない」から植物に知性を認めることが出来ないという説から、「植物の知性を研究すれば、私たち人間にとって、自分たちと異なる方法で思考する生命システムを理解するのが、どれほど難しいことかがわかる」と言い切ってしまう。
     そもそもこの本は、自分自身の「植物も、動物と同じように地球上に生きる生き物だから、動物と区別するのはおかしいのではないか?」という疑問に、ある意味での正しさを求めて読んだのだが、やっぱり読んで良かったと思えた。文章も大変読みやすく、説明も分かりやすかった。

  • 読み終えたあと
    思わず植物に話しかけたくなる
    そんな1冊

  • いろいろびっくり

  • 地球上の全生命の99.9%を占めるといわれる植物の複雑な生命システムにいて分かりやすく説明する本。動物よりも軽んじられている植物の凄さを啓蒙する本、という側面が強く、今までこのような視点を持っていなかった私にとって、目から鱗な話題が多くとても面白かった。

  • よく言えば、「知性」の概念を変える本。著者の主張は概ね分からないでもないが、少々くどいし、ハナに着く点もある。

    年を重ねるとともに緑の素晴らしさに感動を覚えるが、植物が生きていく上で、こんなに合理的に生きているとは驚いた。まだまだ、解明できてない部分も多ようだが、個人的には、植物の場合は「知性」とは別の呼び方をしたほうがいいと思う。

    もう一点気になるのは、著者がよく、生き物の優劣や高等生物下等生物と云う区分けをして、それにこだわっていること。これって何か意味があるのだろうか。私には、そのような区分けは意味があるものとは思えない。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1243180

全55件中 1 - 10件を表示

ステファノ・マンクーゾの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
エラ・フランシス...
リンダ グラット...
ピエール ルメー...
トマ・ピケティ
スティーヴン・ワ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×