建築に夢をみた (NHKライブラリー)

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140841495

感想・レビュー・書評

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  • 【建築の原点】
    建築の原点は住まいにあると私は考えています。人間の最も根源的な欲求から生まれる住まいとは、そこに住む人々の生活や気候風土の違いがそのままに表れる土着のものでした。世界各地にある土着の住まいを眺めてみると、ときに驚くような表現のものもあり、改めて人間の生活の多様な在り方に気付かされます。

    【旅について】
    旅は人間をつくります。建築を学ぶ上においても、建築とは実際に現地を訪れ、自らの五感を通じてその空間を体感して初めて理解できるものですから、建築家はとにかく歩かねばならないと思います。

    【日本の住まいについて】
    便利ではあるけれども、ヴァナキュラーな住まいの持つような、地域につちかわれてきた経験に基づく差異は失われつつあります。そこには、多様性という豊かさも、住まうことへの思いも、夢も感じられません。

    【集合住宅に関して】
    都心のマンションの廊下、階段といった共有部分が魅力のない貧しい空間となっているのも、個が確立しないままプライバシーを重視するばかりに、そこで集まって住むという意味が考慮されていないからです。

  • 安藤さんの建築を見て素敵と思うことはあまりなかったけど、思想の断片として素直に理解できるところは結構あったし、切り口も初心者向けでおもしろかった。

  • 安藤建築、地中美術館がその自然に対する謙虚なコンセプトすき。
    今回慰霊碑をつくられると知り読む。
    諦めない、建築になにができるか、それは、説明や弁明なしに、出来たものが良いには決まっているが、建築家にはそこまで、大きなことはできない、というより、責任を持って取り組んでおられるかんじで好感を持てる文章でした。

  • 平易な文章、自分のような一般読者に向けられたわかりやすい文章ではあったが、やはり建築の専門用語に詳しくないと、本当に筆者が言いたかったことを理解できているのだろうか・・・と不安になってしまう。建築界は本当に敷居が高い。やはり、建築物は実際に見て感じて、そして立ててみないとなかなか理解できないものなのか。

    住居として、人が集う場所として、都市の一部として、歴史の一部としての建築を筆者はとき、これから筆者が設計したいろいろな建築を目にすることがあろうが、ぜひ参考にしたい。

    建築を巡る旅をいつかしてみたいと思う。

  • 住まい、広場、都市といった章ごとに、そこに存在する建築の背景と基礎情報から筆者の考えがうかがえる。コラボレーションの商では、筆者の建築に対する熱い思いも書かれている。

  •  言わずと知れた建築家、安藤忠雄が書いた、建築の機能や都市の在り方についての話。もとはNHKの教養番組「人間講座」のテキストだったらしい。
     安藤忠雄の建築というと、なんか無機質で観念的な現代美術みたいな感じ、という漠然したイメージしかなかったが(おれが見たことある石川県の西田幾多郎記念館とか)、それらはただただ安藤忠雄の感性で作ったものという訳ではなく、安藤自身が世界中の建築を見て回り、古今東西の様々な建築家について勉強し、その都市の歴史や地形、人々の生活を考察したというバックグラウンドに裏打ちされた、安藤自身の思想なり哲学があって、その上でああいう建築が建つ、ということが分かった。なんとなく岡本太郎とかぶるイメージがあったけど、って岡本太郎についてもおれは知らないから何とも言えないけど、岡本太郎とは違うようだ。
     この本の中で何度か出てくるテーマは「経済性や合理性だけを追求する、日本人の都市に対する意識の軽薄さ」というのがあった。例えば戦後、日当たりを条件にして極めて画一的な住宅が作られていき、「固有性や地域性といったものが無視され、徹底的に画一的な住環境が作り出され」(p.43)、「非人間的スケールで街路空間を欠くといったような問題」(pp.43-4)ということ。面白いと思ったのは「そこには、経済の論理が最優先されてきたことともう一つ、持ち家一戸建てにこだわれ、特に南面に固執し続ける日本人の住宅観の問題が要因としてある」(p.44)ということだった。「日本では南向き崇拝とでもいうほどに、個人住宅、集合住宅に限らず、部屋はすべて南向きを良しとする傾向があります。」(同)ということで、確かに、アパート探しなんかやっても必ず「南向き」というのは、その物件の価値を高める分かりやすい指標になっている気がする。ちなみにこれは、書院造の庭があって成立した思想だそうなので、庭がなければこういう思想が貧困である、ということだそうだ。
    同じように思想面の貧困さという点で批判されているのはブラジリアやキャンベラだそうで、「これらも機能主義に基づく理想的な都市としてつくられはしたものの、その都市空間の画一性、それによる疎外感などから現在では批判の対象となっています。何故上手くいかなかったのか。それは、年が都市であるために必要な固有の論理と言うものを、それらの計画が考慮していなかったから」(p.100)だそうだ。もう一つ、日本人の特性めいた内容としては、「日本人というのは、よほど破壊好きの民族なのか、何かつくろうとすると、とにかくまず、白紙に戻して考えたがります。(中略)長い間を街ととともに生き続けた歴史的建造物が、ためらう間もなく取り壊されてしまうのも、官だけでなく市民の側にも街に対する愛情が、また都市に生きるという公的意識が欠如していたあからではないでしょうか。」(p.214)ということで、阪神大震災後にいくつか取り壊された歴史的な建造物についての話も印象的だった。確かに、今だったら原宿駅の駅舎、とかもその例なのか。
     ということで、これを一冊読めば、建築家という人たちは、単にその建物一つだけを考えればよいのではなく、「コスト、法規、工期、そして施主の要望といった諸条件」(p.244)の中で、いかにその建築が都市に影響を与え、人々の記憶を構成するものになるのか、という複数のことを高い次元で考えてこその建築家、ということが分かった。(19/07/27)

  • 住まい
    集まって住む
    広場
    都市1(二〇世紀の夢;都市に生きる;都市の記憶)
    コラボレーション
    場をつくる
    人を育てる場
    復興から
    庭園
    つくりながら考える

    著者:安藤忠雄(1941-、大阪市港区、建築家)

  • なるほど、と思った部分もあったし、そうでない部分もあった。
    掲載されている写真が少なく、白黒なので、視覚的イメージがとらえられなかったことも理由だと思う。

    8章『場をつくる』では、均質化が進む現代においての「ここでしかできない建築」の価値について書かれていた。その通りだと思う。均質化が進んでいるのは建築だけでない。「ここでしか体験できない」「リアルの」「ライブの」価値については考え直す必要があろう。そうでないと、現実世界に生きる意味がよくわからなくなってしまい、味気ない。
    11章『庭』では、日本庭園についての記述が印象に残った。庭園とは、そこに住むひとびとの「楽園」を現実世界に再現したものだという。日本では、自然とともに、自然に合わせて生きることが当然の感覚であり、その精神から生まれた日本庭園のなかにはすばらしいものが多い。現代日本の都市では、そのような精神から生まれた建築は少ない。もし、その精神を具現化できていたら、それはそれはすばらしい都市ができていたかもしれないな。
    6章『都市Ⅱ』について。自分が住んでいる都市の、歴史的・文化的積み重ねというものは、目には見えないけれどとても大きな資産だと思う。どこに住んでいるか、によって、目に飛び込んでくる景色は違うし、そうしたら興味をもつ対象も変わってくるはずだからだ。ウィーンの中心部に積み重ねられた「空気」、味わってみたい(ただ、住まないとその積み重ねの享受には到らないと思う)。

    写真が少ないのもあるだろうが、安藤さんの建築のよさはわからないものもあった。実際に行ってみないと。それから、現代アートを賛美する箇所がよくわからなかった。現代アートって、そんなにいいかな?好き勝手やってる、って印象。リートフェルトのシュレーダー邸も、そんなにいいと思わない(写真で見る限り)。(リートフェルトだと、Sonsbeek pavilionが好き。)地中美術館のコンセプトはすばらしいな、と思った。

  • 伊勢BF

  • 天才の書いた本は、面白くて読みやすい。

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著者プロフィール

建築家。1941年生まれ。独学で建築を学ぶ。1969年安藤忠雄建築研究所設立。1997年東京大学教授。2003年同名誉教授。2005年同特別栄誉教授。2010年文化勲章を受章。日本建築学会賞、アルヴァ・アアルト賞、日本芸術院賞、プリツカー賞、高松宮殿下記念世界文化賞、アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル、国際建築家連合(UIA)ゴールドメダル、イサム・ノグチ賞など受賞多数。

「2022年 『安藤忠雄の建築5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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