今こそルソーを読み直す (生活人新書)

著者 :
  • NHK出版
3.68
  • (6)
  • (14)
  • (12)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 168
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883334

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者:仲正昌樹
    校閲:大河原晶子
    DTP組版:岸本つよし


    【目次】
    目次 [003-006]

    序章 今、なぜルソーなのか? 007
    ルソーの定番的説明  民主主義と自由主義の矛盾  「みんなの意志」は可能か?  社会契約論の再評価  ネット民主主義とルソー  人間本性をめぐる捻れ  「幸福な自然人」という矛盾  ルソーをいかに読み直すか  本書の構成

    第1章 なぜ「不平等」が生まれるのか?――ルソーの格差論 029
    フランス啓蒙主義の特徴  ルソーの二面性  「進歩」がもたらすもの  外観が内面を汚染する  『学問芸術論』の限界  自然状態論の本格的展開  「自然」と「欠如」  コンディヤックの言語起源論  言語が先か? 観念が先か?  パロールとエクリチュール  音声中心主義の罠  デリダの批判  「代補」の問題  社会が自然を「代補」する  善悪の起源  労働から所有へ  不平等へ至るプロセス  「所有」と「自由」  近代人はなぜ野生人に憧れるのか  「自然回帰」に懸かれた人たち

    第2章 「公正な社会」をいかに作るか?――ルソーの国家論 091
    「理想の社会」にいかに到達するか  自由と鎖のジレンマ  自然的自由から市民的自由へ  「私」と「私たち」をどう結合するか  「権利」とは何か  奴隷との契約は成立するか  「人民」になる  人民をめぐる無限連鎖  「私の意志」と「私たちの意志」を一致させる方法  「共同的自我」の誕生  一般意志論は全体主義か?  「団体の意志」のメリット  公的生活と私的生活  一般意志と全体意志はどう違うのか  共通の利益=正義の原理  ルソーとロールズ  一般意志論の現実的側面  法の一般性  「法のエクリチュール化」をめぐる難問  「立法者」の条件  「社会的精神」はいつ生まれるのか  神々という権威?  「神々」の正体  政治と宗教の融合  「近代」という神話

    第3章 「自然」と「理性」のバランスをどうとるか?――ルソーの教育論 171
    多数者の専制  「古代人の自由」と「近代人の自由」  ルソー=全体主義?  タルモンの批判は正当か?  アーレントとルソー複数性の喪失  自由の一弓の系譜合意と意志一般意志から「徳のテロル」へ  「偽善の仮面」を破壊せよ!  「同情=共感」の負の効果  アーレントの批判の難点  二つの理想的人間像  階級闘争史観への影響  「人間」を作るか「市民」を作るか  都市に生きる自然人、エミール  国制教育  「見せかけの法」の効用  エミールをめぐる矛盾  「理性的自然」で全ては解決するか  ルソーの矛盾とどう付き合うか

    終章 なぜ「透明なコミュニケーション」に惹かれるのか? 231
    言語の両義性  「法の絶対視」が悲劇を生む  自然的記号への憧憬  矛盾の本質  「透明なコミュニケーション」に取り懸かれた人たち

    ジャン=ジャック・ルソー年譜 [243-245]
    あとがき(二〇一〇年七月三十一日 金沢大学角間キャンパスにて 仲正昌樹) [247-251]

  • 再読。
    でも、やっぱりよく分からない。「一般意志」がどうしても、しっくりこないんだな。
    なかでアーレントの「リバティ」と「フリーダム」の2つの自由に対する概念の違いはおもしろかったかも。前者がフランス革命で、後者はアメリカ独立戦争戦争ってわけだ。
    なんとなく雰囲気は伝わるんだけど、ルソーからは離れていっちゃうんだな。

  • わかりやすいです。お薦めします。
    なぜかデリダとアレントがよく出てくるルソー入門本。終章が示唆的。

  • ルソーって今はやってるのかしらん?
    厳密な哲学ではないし、いっていることが矛盾していたりして、アカデミックにはどうかと思われますけど、この著者もそのあたりをとらえてページをさいています。
    人間関係やコミュニケーションのかたちが変わってきた現在に、ルソーを読む面白さがちょっとわかった気がします。

  • ルソーを学校レベルの知識でしか把握していなかったので手に取ってみた。
     おそらく、この著者(仲正氏)はルソーと同じ高さで物事を見ることが可能な人物なのだと思う。不平等論を基にして、エミールや社会契約論までもアイロニーとしてとらえるべきだと彼は語る。そもそも自己矛盾の塊ではないかと。
     しかし、ルソーを語る人々は、それを受け入れられずにそれぞれに関して素直に解釈し、全体を結びつけるときに根底にある矛盾の処理が行えなくなるというのだ。

     そういうことを私たちにわかるように説明しようとしているのだけれど、富士山頂からの景色が登った人のみが真に感じられるように、どれだけ言葉を重ねても実感として感じられることはない。
     氏の文章からはそのあたりの表現に苦悩している姿もみられる。ルソーを読むのであれば、その中に彼の言う景色が見えるのかもしれない。
    ルソーを読むよというひとにはオススメしたい。

  • いま、ルソーが来ているのかどうか、よくわかりませんが、確かにあたしの勤務先でもこのところルソー絡みの本を二冊刊行しましたね。通り一遍のルソー理解ということであれば、本書はやや歯応えもあり。必ずしもルソーの全体像を描き出しているものではありませんが、現代社会との関わりからルソーを見るという意味では面白く読めます。

著者プロフィール

哲学者、金沢大学法学類教授。
1963年、広島県呉市に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化専攻研究博士課程修了(学術博士)。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。難解な哲学害を分かりやすく読み解くことに定評がある。
著書に、『危機の詩学─へルダリン、存在と言語』(作品社)、『歴史と正義』(御 茶の水書房)、『今こそア ーレントを読み直す』(講談社現代新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(N‌H‌K出版)、『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(講談社現代新書)など多数。
訳書に、ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』(明月堂書店)など多数。

「2021年 『哲学JAM[白版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

仲正昌樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×