ダメ情報の見分けかた メディアと幸福につきあうために (生活人新書)

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883341

感想・レビュー・書評

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  • 三人の識者による、メディアリテラシーに関する一冊。「数多くの情報が氾濫している昨今、何が正しい情報なのか見極めるのが難しくなっている。そのような状況に対して一人一人がメディアリテラシーを高めるべきである」といった通説を聞くと疑うべくもない。ただし本書は、その類の通説をも疑うところからスタートしており、非常に奥が深かった。

    ◆本書における新しい視点
    ・これまでのメディアリテラシー論は、被害者にならないということを第一の目的にしていた。しかし、今や情報の受信者は同時に発信者でもあり、本書においては、加害者にならないためにということに重点を置いていてる。
    ・これまでのメディアリテラシー論は、リテラシーがない人を対象に語られてきた。しかし、昨今の情報環境の変化は誰しも経験したことのないものであり、本書においては、全ての人を対象に、必要なリテラシーが変化してきているという視点にたって為されている。
    ・これまでのメディアリテラシー論は、中立であるということを目標とされてきた。しかし、人やメディアが偏ってしまうことは不可避なことでもあり、本書では偏りや多様性を前提としたうえで議論が為されている。

    ◆本書で紹介されている処方箋
    1.リンクの不在を怪しむ、情報元を確認する、文章を最後まで読む
    今年一年、Twitter上で何件のデマで出回ったのだろうか?MIXI破産、みのもんたの駒野選手のお母さんインタビュー、鳩山由紀夫偽アカウント、小沢一郎偽アカウント、福山雅治結婚・・・全てがネット上に要因があったわけではないが、情報発信の簡易さが火に油を注いだのは事実である。これらの共通の特徴は「それらしいこと」にある。与えられた情報に対する、内在的なチェックを行いながら、安易な行動をおこさないことが肝要である。

    2.無内容な話を見抜く、定義が明確でない話を見抜く、データで簡単に否定される話を捨てる。
    上記のような捨てる技術を都度行うのではなく、ソーシャルグラフを定期的にメンテナンスをしながら、フィルタリングの精度をあげていくことが重要なことだと思う。一度でも2010年はソーシャルグラフの拡大が顕著であったと思うが、2011年は断捨離が一つのテーマになるのではないだろうか。

    3.マイノリティの視点に立つ、その存在を承認する。
    そもそも、”メディアリテラシーを高める”という考え方自体が、思想的に偏ったものであるらしい。言われてみれば、利用者に全ての責任を負わせているわけで、システム提供者の社会的責任などは、なかなか議論にあがってこない。このように、議論をしている前提条件がどのようなモノの上で成り立っているのかを考え、さまざまな視点でモノを考えるということは大切なことである。

    このようなメディアリテラシー論の本を読むと、この本自体もあるメディアなわけだから、鵜呑みにするのはどうかなどという、天邪鬼な気持ちも芽生えてくる。しかし、このような状態を、心理学的に「ダブル・バインド」と呼び、受け手に強いストレスを与えるため推奨しないという話が、本書で紹介されていた。完全に先回りされてしまっている・・・

  • 信頼できる著者たちの論考。基本的なことだけど、案外できていないことが多いんじゃないかな。

  • 駒澤大学経済学部のシンポジウム講演を下敷きに加筆・修正したもの。3氏それぞれがメディアが移り変わっても使える考え方を、事例を使って論じている。


    第1章 荻上チキ 「騙されないぞ」から「騙させないぞ」へ ― ウェブ時代の流言リテラシー

    ウェブ流言も昔からの流言と本質は同じ。流言やデマを放置せずに検証し、拡散というアクションを安易に行わないように注意する。

    第2章 飯田泰之 情報を捨てる技術 ― データ検証から確率論まで

    とんでもなくダメな情報を振り落とす3つの方法。
    ・無内容な話を見抜く
    ・定義が明確でない話を見抜く
    ・データで簡単に否定される話を捨てる

    第3章 鈴木謙介 メディアリテラシーの政治的意味 ― 「偏った情報」とどう付き合うか?

    インターネットの普及によって自分自身の偏りを自覚したうえで、他者の「偏った」意見にも目を配る必要性が高まっている。

  • メディアリテラシーを多面的に解いた内容は、すべてがすぐに納得できるものではないものの、現代人が考えなければならない内容ばかりである。時間をかけてゆっくりと考えながら読むのが良いと思う。
    個人的には最終章が一番興味深く読めた。

  • データ不在の無根拠情報、ネットに広がるデマ…。メディア論・経済学・社会学の気鋭の論客が、情報を的確に仕分ける技術を伝授する。情報社会を生き延びるためのメディア・リテラシー論。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40162263

  • メディアは透明な道具ではない。
    つまり常に歪みなく届けられるものではないということを知っておく。
    メディアリテラシーを身に付け、内在的チェック(自己判断)と外在的チェック(外部の別の情報に当たる)だけでなく、時に判断保留をし、より確からしい情報が出てくるのを待つのも一つの手段である。
    無内容な話さえ、常套句やテンプレートとちょっとした飾りでそれなりに仕上がってしまうのがメディア情報の怖いところ。
    その場合、日常用語に落とし込むことで本当に言いたいことが見えてくる。
    言葉の定義を明確にすること。
    そしてその検証可能性も明らかにする。
    著書では構造改革という言葉の定義が不明確であることを指摘していた。
    ある疾病に対しある薬が効くかどうかの判断は投薬したデータだけでは不十分で投薬しなかった場合のデータも少なくとも必要である。
    大切なのは正しい情報の見分け方だけでなく、偏った情報に対してカウンターとなる情報を影響力ある形で流通させるスキル。つまり現在は発信する力も求められるということ。
    時折専門的な内容もあり難解な部分もあった。
    本書を参考に情報を受け取るようにする。

  • ○メディアリテラシーをテーマに、3人の著者がそれぞれの観点(「ウェブにおけるリテラシー」「データの読み方」「政治との関係」)から、解説を行っているもの。
    ○内容がそれぞれ独立しており、相関性は見られないが、「情報」に対してどのような考え・立場で望むかという視点の持ち方について、参考になった。
    ○個人的には、荻上チキさんの章が一番面白い。

  • 情報の取捨選択を自分の軸を持ってしましょう、という話。

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著者プロフィール

1981年生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事。ラジオ番組『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)メインパーソナリティー。同番組にて2015年度、2016年度ギャラクシー賞を受賞(DJパーソナリティー賞およびラジオ部門大賞)。

「2019年 『ネットと差別扇動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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