印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883501

作品紹介・あらすじ

十九世紀後半のフランスに起こった絵画運動で、現代日本でも絶大な人気を誇る「印象派」。"光"を駆使した斬新な描法が映し出したのは、未だ克服せざる「貧富差」による"闇"であった。マネ、モネ、ドガからゴッホまで、美術の革命家たちが描いた"近代"とは-。

感想・レビュー・書評

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  • 印象派の絵は大体が明るい色彩の風景画だと思っていたが、実際は風景に留まらない近代欧州の姿が正負双方の側面から映されているということが新鮮だった。また、印象派絵画の名作の内容だけでなく、当時の歴史的背景にも触れられていて興味深かった。また、この本を読み終わった後印象派以前の古典的作品を調べてみたが、逆説的だが3次元の世界を絵に落とし込もうとした先人の努力に印象派絵画とは異なる凄さを垣間見ることができた。

    絵画のことは全然分からないという自負があったが、それらが描かれた時代や作者に関係する背景を知っていると興味を持てるし、楽しむこともできるということを知った。最後の章で矛盾した現実に対してメッセージ性を介在させずにその瞬間の美しさだけを切り取った印象派絵画に対して、背景知識がないと現代人の目で偏見を持ってみてしまうという指摘に身の引き締まる思いがした。

  • 印象派が現代人、日本人に受け入れられやすいこと、それが何故なのかということが分かりやすく書かれていて面白かった。
    時代背景もセットで面白いから学生の時知れてたら賢くなったかもな〜〜
    美術が何もわからなくても浅く理解できたのですごくいい本だなと思う。もっとわかる人はもっと面白いかも知れない。
    綺麗な絵のことを知りたい人はぜひ

  • 記録。

  • 作品の背景を知ることは、審美眼の障害になりうるか、って問題にも触れてまして、本作の出発点からして大事なポイントをもとにしてらっしゃる。ちょうど日本が開国した時期でもあり、浮世絵なんてのが向こうでは重宝されてたんですね。ゴッホもその辺について興味あったそうですし、密室の印象が強い印象派ですが、歴史的なダイナミックというのが何気にある、のは意外です。カラーで多数の作品をチェックできるのもよろしですし。

  • 絵画のことについて知りたいけれど詳しくなので手始めに読みはじめた本。印象派が幅広い年代、身分に好かれる理由がわかった気がする

    見るだけでなく読めるようになりたいし、もっと勉強したいなと思わされた

  • 印象派絵画を、時代背景をもとに解説していく。社会や政体の変遷であったり、工業化と貧富の格差であったり、男女間の事情や社会的立場であったり、確かにその背景を理解すると、絵画の鑑賞に深みが増してくる。取り上げられるのは、有名な絵画ばかり。26作品はカラーで、1000円でこの内容なら納得だ。非常に楽しく読めた。ただ背景にやや重きを置く分、美術的価値に関する叙述が物足りない印象だった。最後の一文、にもかかわらず美しい、という言葉はすっと腹に入ってくる言葉だ。紹介された絵画と、またどこかの美術展で出会うことを楽しみにしたい。

  • 講演をもとに書き下ろされただけあって、堅苦しさがなく読みやすい。
    説明の近くに図が入っており(カラーのものもある)、絵を見るためにかなり先や前を見る必要がないのも読者に優しい作りであると思う。

    オペラ座の役割や、バレリーナの扱いも知らなかったので驚いた。

  • 印象派の背景を知ることができて興味深い。印象派画家自体はあまり好きになれそうにないが、絵の価値は変わらない、「にもかかわらず美しい」という中野さんの指摘は、おっしゃるとおりと感じました

  • 印象派についてざっと知れて読みやすかった

  • 面白かった。今まで自分が知っていた印象派のイメージがガラッと変わった。
    印象派は既存の芸術(というか美?)を破壊して、新たな美を創造した芸術の革命家だと思っていたのと、大衆から支持されていたとの知識しかなかったから、ゴッホのような貧しいけど夢を追う芸術家ばかりだと誤解していた。

    印象派の人の多くが富裕層であり、明るい色彩と美しく描かれた光は、そのキャンバスの外で濃く深い歴史的影を作っていたことを知って驚いた(しかも当人たちには自覚がない!)

    背景を知ると残酷な絵やそれを描いた画家を、少し批判的に捉える意思も感じたけど、個々人がどういう人生を歩んで、どういう思想を持っていたかは分からないし、良い悪いは見る方個性によるから難しいなと思った。でも、ざっくり一括りにすることで、印象派を取り巻く歴史的背景を知れたのでよかった。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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